[P1-A-0157] 片脚スクワット時の骨盤の側方傾斜角度が下肢の関節アライメント及び関節モーメントに与える影響
Keywords:片脚スクワット, 骨盤側方傾斜, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
片脚スクワットで下肢の関節運動を評価することは,臨床業務で多く行われる。先行研究において,片脚スクワット時の下肢関節運動はACL損傷や膝蓋大腿関節症などの障害発生と関連があるとされている。その中で,膝関節有疾患者において非支持脚へ骨盤の側方傾斜が増大するという報告がある。しかし,骨盤の側方傾斜角度の変化が下肢の運動に与える影響は不明瞭である。本研究の目的は,健常者において片脚スクワット時の骨盤の側方傾斜角度が下肢の関節アライメント及び関節モーメントに与える影響を明らかにすることである。
【方法】
対象者は健常男性11名,年齢23.6±3.6歳,身長173.4±6.0cm,体重62.5±6.1kgであった。測定課題は片脚スクワットとした。支持脚は整形外科疾患のない下肢(右脚9名,左脚2名)とした。骨盤側方傾斜の条件は,支持脚の対側最大拳上位(以下,拳上位)と対側最大下制位(以下,下制位)の2条件とした。体幹は出来るだけ直立位を保ち,膝関節は45°以上屈曲するよう指示した。また,メトロノームに合わせて2秒で膝を曲げ,2秒で膝を伸ばすよう指示した。試行回数は2条件とも連続5回行った。動作の計測には三次元動作解析装置(VICON社製MXカメラ8台),床反力計1枚(Kistler社製)を使用した。マーカーセットは,VICON Plug-in-gait Full bodyを採用した。解析には,VICON社製ソフトウェアVICON NEXUSを使用した。解析したデータから,支持脚の膝関節最大屈曲時の骨盤および胸郭の側方傾斜角度,股関節の内外転角度および回旋角度,膝関節の内外反角度および回旋角度,股関節および膝関節の内外転モーメントを抽出し,5試行分の平均値を算出した。関節角度は支持脚の対側骨盤下制,対側胸郭傾斜,屈曲,内転,内反,内旋を正の値として示した。関節モーメントは外的モーメントであり,内転,内反モーメントを正の値として示した。関節モーメントは各対象者の体重で正規化した。それぞれのパラメータについて,骨盤の拳上位,下制位の2条件間で差があるか調べた。差の検定には,対応のあるt検定を用いた。有意水準はp=0.05とした。
【結果】
骨盤の側方傾斜角度は,拳上位-12.8±4.3°,下制位6.5±5.9°であり,条件間の有意差があった(p<0.01)。胸郭の側方傾斜角度は,拳上位-3.8±5.8°,下制位1.8±8.0°であり,条件間の有意差はなく(p>0.05),体幹は直立位を保持できていた。股関節の内外転角度は,拳上位-1.6±8.2°,下制位20.7±7.4°であり,下制位にて有意に内転角度が大きかった(p<0.01)。股関節の回旋角度は,拳上位-5.9±12.3°,下制位1.2±9.2°であり,下制位にて有意に内旋角度が大きかった(p<0.01)。膝関節の内外反角度は,拳上位-11.5±14.4°,下制位3.8±11.8°であり,下制位にて有意に内反角度が大きかった(p<0.01)。膝関節の回旋角度は,拳上位17.4±8.0°,下制位13.0±7.3°であり,下制位にて有意に内旋角度が小かった(p<0.01)。股関節の内外転モーメントは,拳上位0.56±0.16Nm/kg,下制位0.78±0.15Nm/kgであり,下制位にて有意に外的内転モーメントが大きかった(p<0.01)。膝関節の内外反モーメントは,拳上位0.65±0.24Nm/kg,下制位0.82±0.26Nm/kgであり,下制位にて有意に外的内反モーメントが大きかった(p<0.01)。
【考察】
本研究では,体幹直立位を保ったまま骨盤の側方傾斜角度のみを変化させて片脚スクワットを行った。結果,骨盤の拳上位と比較して下制位では,支持脚の股関節は内転内旋角度が増大し,膝関節は内反外旋角度が増大した。また,股関節の外的内転モーメントと膝関節の外的内反モーメントが下制位において高値となった。ACL損傷時には膝外反や下腿内旋が生じているとの報告がある。本計測の骨盤下制位での膝関節のアライメントは,ACL損傷リスクの高いアライメントとは一致しなかった。しかし,股関節の外的内転モーメントは増大することから,下制位を保つためには股関節外転筋力がより必要であると考えられる。また,体幹直立位を維持できれば膝関節の外的外反モーメントは生じず,骨盤拳上位と比べ下制位において膝関節の外的内反モーメントが増大することが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,片脚スクワット時の骨盤の側方傾斜角度の違いが下肢の運動学,運動力学に及ぼす影響についての基礎的な知見を提供した。臨床場面において,片脚スクワットを観察する際の骨盤,下肢アライメント評価および治療方法立案に生かすことができると考える。
片脚スクワットで下肢の関節運動を評価することは,臨床業務で多く行われる。先行研究において,片脚スクワット時の下肢関節運動はACL損傷や膝蓋大腿関節症などの障害発生と関連があるとされている。その中で,膝関節有疾患者において非支持脚へ骨盤の側方傾斜が増大するという報告がある。しかし,骨盤の側方傾斜角度の変化が下肢の運動に与える影響は不明瞭である。本研究の目的は,健常者において片脚スクワット時の骨盤の側方傾斜角度が下肢の関節アライメント及び関節モーメントに与える影響を明らかにすることである。
【方法】
対象者は健常男性11名,年齢23.6±3.6歳,身長173.4±6.0cm,体重62.5±6.1kgであった。測定課題は片脚スクワットとした。支持脚は整形外科疾患のない下肢(右脚9名,左脚2名)とした。骨盤側方傾斜の条件は,支持脚の対側最大拳上位(以下,拳上位)と対側最大下制位(以下,下制位)の2条件とした。体幹は出来るだけ直立位を保ち,膝関節は45°以上屈曲するよう指示した。また,メトロノームに合わせて2秒で膝を曲げ,2秒で膝を伸ばすよう指示した。試行回数は2条件とも連続5回行った。動作の計測には三次元動作解析装置(VICON社製MXカメラ8台),床反力計1枚(Kistler社製)を使用した。マーカーセットは,VICON Plug-in-gait Full bodyを採用した。解析には,VICON社製ソフトウェアVICON NEXUSを使用した。解析したデータから,支持脚の膝関節最大屈曲時の骨盤および胸郭の側方傾斜角度,股関節の内外転角度および回旋角度,膝関節の内外反角度および回旋角度,股関節および膝関節の内外転モーメントを抽出し,5試行分の平均値を算出した。関節角度は支持脚の対側骨盤下制,対側胸郭傾斜,屈曲,内転,内反,内旋を正の値として示した。関節モーメントは外的モーメントであり,内転,内反モーメントを正の値として示した。関節モーメントは各対象者の体重で正規化した。それぞれのパラメータについて,骨盤の拳上位,下制位の2条件間で差があるか調べた。差の検定には,対応のあるt検定を用いた。有意水準はp=0.05とした。
【結果】
骨盤の側方傾斜角度は,拳上位-12.8±4.3°,下制位6.5±5.9°であり,条件間の有意差があった(p<0.01)。胸郭の側方傾斜角度は,拳上位-3.8±5.8°,下制位1.8±8.0°であり,条件間の有意差はなく(p>0.05),体幹は直立位を保持できていた。股関節の内外転角度は,拳上位-1.6±8.2°,下制位20.7±7.4°であり,下制位にて有意に内転角度が大きかった(p<0.01)。股関節の回旋角度は,拳上位-5.9±12.3°,下制位1.2±9.2°であり,下制位にて有意に内旋角度が大きかった(p<0.01)。膝関節の内外反角度は,拳上位-11.5±14.4°,下制位3.8±11.8°であり,下制位にて有意に内反角度が大きかった(p<0.01)。膝関節の回旋角度は,拳上位17.4±8.0°,下制位13.0±7.3°であり,下制位にて有意に内旋角度が小かった(p<0.01)。股関節の内外転モーメントは,拳上位0.56±0.16Nm/kg,下制位0.78±0.15Nm/kgであり,下制位にて有意に外的内転モーメントが大きかった(p<0.01)。膝関節の内外反モーメントは,拳上位0.65±0.24Nm/kg,下制位0.82±0.26Nm/kgであり,下制位にて有意に外的内反モーメントが大きかった(p<0.01)。
【考察】
本研究では,体幹直立位を保ったまま骨盤の側方傾斜角度のみを変化させて片脚スクワットを行った。結果,骨盤の拳上位と比較して下制位では,支持脚の股関節は内転内旋角度が増大し,膝関節は内反外旋角度が増大した。また,股関節の外的内転モーメントと膝関節の外的内反モーメントが下制位において高値となった。ACL損傷時には膝外反や下腿内旋が生じているとの報告がある。本計測の骨盤下制位での膝関節のアライメントは,ACL損傷リスクの高いアライメントとは一致しなかった。しかし,股関節の外的内転モーメントは増大することから,下制位を保つためには股関節外転筋力がより必要であると考えられる。また,体幹直立位を維持できれば膝関節の外的外反モーメントは生じず,骨盤拳上位と比べ下制位において膝関節の外的内反モーメントが増大することが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,片脚スクワット時の骨盤の側方傾斜角度の違いが下肢の運動学,運動力学に及ぼす影響についての基礎的な知見を提供した。臨床場面において,片脚スクワットを観察する際の骨盤,下肢アライメント評価および治療方法立案に生かすことができると考える。