[P1-A-0161] ACL再建術後における復帰時期の膝筋力の目標値の検討
―男女サッカー・フットサルのレベル別の筋力比較―
キーワード:膝前十字靭帯, 膝筋力, 目標値
【目的】
我々は近年,膝前十字靭帯(ACL)再建術後の筋力評価は,健患比に加えて健側,患側各々のピークトルク体重比(体重比)での評価が重要であることを述べてきた。そして,性別,スポーツレベル別に復帰時期の体重比の目標値を設定することができた。一方膝筋力は,健常者においてスポーツ種目によって異なることが報告されている。そこで今回,スポーツ種目別に復帰時期の目標値を設定する目的として,近年競技人口を増加させているサッカーとフットサルに着目して膝筋力の調査,検討を行った。
【方法】
対象は2010年1月から2013年12月までの間に,当院スポーツ整形外科で半腱様筋・薄筋腱による解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行し,受傷時のスポーツがサッカー,フットサルであった症例である。症例数は,男性167例(27.4±7.9歳,体重98.2±8.4kg),女性:39例(25.1±7.7歳,体重56.6±8.4kg)であった。
スポーツレベルは,カテゴリー1(C1:運動しない,趣味レベル下級),カテゴリー2(C2:趣味レベル上級,地方大会レベル),カテゴリー3(C3:全国大会レベル,プロ)の3群に分類した。内訳は,男性:C1,79名,C2,71名,C3,17名,女性:C1,9名,C2,20名,C3,10名であった。
筋力測定はBiodex System3を用い,膝伸展筋力(Q),膝屈曲筋力(H)の健側および患側における60deg/sec(60d/s)と180deg/sec(180d/s)の体重比(Nm/kg)を計測した。以上の項目において,男女別に各カテゴリー間で当院復帰時期である術後8カ月の,1)60d/sの健側,患側Q,Hの体重比の平均値,2)180d/sの健側,患側Q,Hの体重比の平均値を比較した。統計にはANOVAと多重比較法(Tukey)を用い,平均値の差の検定を行った。データ解析は,統計ソフトDr.SPSS IIを使用し,有意水準はP<0.05とした。
【結果:男性】
1)60d/s
健側Qは,C1:2.83,C2:3.11,C3:3.45。
患側Qは,C1:2.33,C2:2.70,C3:3.11。
健側Hは,C1:1.41,C2:1.52,C3:1.87。
患側Hは,C1:1.28,C2:1.42,C3:1.76。
全ての項目で有意差は,C1とC2,C1とC3,C2とC3間にみられた。
2)180d/s
健側Qは,C1:1.92,C2:2.04,C3:2.21。有意差は,C1とC3間にみられた。
患側Qは,C1:1.63,C2:1.80,C3:2.01。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
健側Hは,C1:1.08,C2:1.19,C3:1.32。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
患側Hは,C1:0.99,C2:1.08,C3:1.21。有意差は,C1とC3間にみられた。
【結果:女性】
1)60d/s
健側Qは,C1:2.25,C2:2.35,C3:2.65。
患側Qは,C1:1.69,C2:2.20,C3:2.29。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
健側Hは,C1:0.99,C2:1.22,C3:1.36。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
患側Hは,C1:0.86,C2:1.09,C3:1.28。有意差は,C1とC3間にみられた。
2)180d/s
健側Qは,C1:1.43,C2:1.68,C3:1.97。
患側Qは,C1:1.15,C2:1.48,C3:1.76。
健側Hは,C1:0.78,C2:0.95,C3:1.15。
患側Hは,C1:0.69,C2:0.85,C3:1.09。
全ての項目で有意差は,C1とC3間にみられた。
【考察】
男女共に,スポーツレベルに比例して筋力は高くなる傾向であった。男性サッカーの膝伸展筋力の体重比は,舌らは健常者で60d/sで3.12,180d/sで2.07,吉田らは再建者で60d/sで3.7と述べているが,いずれもレベルが高かった。しかし,当院での術後症例のレベルは様々であり,レベルに合った復帰基準を設ける必要性を我々は感じていた。また,女性に関しては近年サッカー人口が増加しているにも関わらず,復帰時の体重比に関する報告はあまりみられない。今回の結果は,今後のサッカーの各レベルにおける復帰の参考基準になればと考えている。
サッカーでは,瞬発力,持久力が必要な競技であると共に,膝の屈伸動作が測定方法と類似していることから,他の競技よりも高い数値を示す種目特性があるとされている。今回の結果からも,以前我々が報告した全スポーツ種目のレベル別体重比の値よりも高値を示していることがわかり,復帰時には種目特性を考慮する必要があることが確認できた。今後も,他スポーツ種目の復帰時における筋力目標値の提示が必要であると考えている。
【理学療法学研究としての意義】
健患比の他に,レベル毎での筋力目標値を提供し,サッカーやフットサルの復帰時期の指標にできると考える。
我々は近年,膝前十字靭帯(ACL)再建術後の筋力評価は,健患比に加えて健側,患側各々のピークトルク体重比(体重比)での評価が重要であることを述べてきた。そして,性別,スポーツレベル別に復帰時期の体重比の目標値を設定することができた。一方膝筋力は,健常者においてスポーツ種目によって異なることが報告されている。そこで今回,スポーツ種目別に復帰時期の目標値を設定する目的として,近年競技人口を増加させているサッカーとフットサルに着目して膝筋力の調査,検討を行った。
【方法】
対象は2010年1月から2013年12月までの間に,当院スポーツ整形外科で半腱様筋・薄筋腱による解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行し,受傷時のスポーツがサッカー,フットサルであった症例である。症例数は,男性167例(27.4±7.9歳,体重98.2±8.4kg),女性:39例(25.1±7.7歳,体重56.6±8.4kg)であった。
スポーツレベルは,カテゴリー1(C1:運動しない,趣味レベル下級),カテゴリー2(C2:趣味レベル上級,地方大会レベル),カテゴリー3(C3:全国大会レベル,プロ)の3群に分類した。内訳は,男性:C1,79名,C2,71名,C3,17名,女性:C1,9名,C2,20名,C3,10名であった。
筋力測定はBiodex System3を用い,膝伸展筋力(Q),膝屈曲筋力(H)の健側および患側における60deg/sec(60d/s)と180deg/sec(180d/s)の体重比(Nm/kg)を計測した。以上の項目において,男女別に各カテゴリー間で当院復帰時期である術後8カ月の,1)60d/sの健側,患側Q,Hの体重比の平均値,2)180d/sの健側,患側Q,Hの体重比の平均値を比較した。統計にはANOVAと多重比較法(Tukey)を用い,平均値の差の検定を行った。データ解析は,統計ソフトDr.SPSS IIを使用し,有意水準はP<0.05とした。
【結果:男性】
1)60d/s
健側Qは,C1:2.83,C2:3.11,C3:3.45。
患側Qは,C1:2.33,C2:2.70,C3:3.11。
健側Hは,C1:1.41,C2:1.52,C3:1.87。
患側Hは,C1:1.28,C2:1.42,C3:1.76。
全ての項目で有意差は,C1とC2,C1とC3,C2とC3間にみられた。
2)180d/s
健側Qは,C1:1.92,C2:2.04,C3:2.21。有意差は,C1とC3間にみられた。
患側Qは,C1:1.63,C2:1.80,C3:2.01。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
健側Hは,C1:1.08,C2:1.19,C3:1.32。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
患側Hは,C1:0.99,C2:1.08,C3:1.21。有意差は,C1とC3間にみられた。
【結果:女性】
1)60d/s
健側Qは,C1:2.25,C2:2.35,C3:2.65。
患側Qは,C1:1.69,C2:2.20,C3:2.29。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
健側Hは,C1:0.99,C2:1.22,C3:1.36。有意差は,C1とC2,C1とC3間にみられた。
患側Hは,C1:0.86,C2:1.09,C3:1.28。有意差は,C1とC3間にみられた。
2)180d/s
健側Qは,C1:1.43,C2:1.68,C3:1.97。
患側Qは,C1:1.15,C2:1.48,C3:1.76。
健側Hは,C1:0.78,C2:0.95,C3:1.15。
患側Hは,C1:0.69,C2:0.85,C3:1.09。
全ての項目で有意差は,C1とC3間にみられた。
【考察】
男女共に,スポーツレベルに比例して筋力は高くなる傾向であった。男性サッカーの膝伸展筋力の体重比は,舌らは健常者で60d/sで3.12,180d/sで2.07,吉田らは再建者で60d/sで3.7と述べているが,いずれもレベルが高かった。しかし,当院での術後症例のレベルは様々であり,レベルに合った復帰基準を設ける必要性を我々は感じていた。また,女性に関しては近年サッカー人口が増加しているにも関わらず,復帰時の体重比に関する報告はあまりみられない。今回の結果は,今後のサッカーの各レベルにおける復帰の参考基準になればと考えている。
サッカーでは,瞬発力,持久力が必要な競技であると共に,膝の屈伸動作が測定方法と類似していることから,他の競技よりも高い数値を示す種目特性があるとされている。今回の結果からも,以前我々が報告した全スポーツ種目のレベル別体重比の値よりも高値を示していることがわかり,復帰時には種目特性を考慮する必要があることが確認できた。今後も,他スポーツ種目の復帰時における筋力目標値の提示が必要であると考えている。
【理学療法学研究としての意義】
健患比の他に,レベル毎での筋力目標値を提供し,サッカーやフットサルの復帰時期の指標にできると考える。