第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0164] 膝関節障害予防に対する足趾開閉運動の即時効果

松田祐弥, 岡本龍児, 和田朋子, 森元幹也 (国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科)

キーワード:膝関節障害予防, 膝外反角度, 足趾開閉運動

【はじめに,目的】
リハビリテーションの領域では足趾エクササイズとして,タオルギャザーや足趾開排運動等が神経筋強調性トレーニングの一環として行われている。また,競技復帰に向けたアスレティックリハビリテーションやトレーニングにおいても同様のエクササイズが行われている。足趾把持筋力は性別,年齢の影響を受け姿勢制御,歩行速度との関連が強いと報告されている。そのため足趾エクササイズによって若年健常者では身体運動機能の向上,姿勢制御機能の改善が得られることが報告されている。
しかし,ウォーミングアップ時に足部のエクササイズを行っている様子をほとんど見たことがない。そこで今回は足趾開閉運動の即時効果により膝の動揺が減少しニュートラルポジションに近づくと仮説をたて,検証したため報告する。
【方法】
対象者は本研究に同意が得られた健常成人女性19名とした(平均年齢:19.1±1.1歳 平均身長:158.0±0.02cm 平均体重49.8±2.5kg)。除外基準は整形外科疾患がなく偏平足を有しているものとした。扁平足の基準となる足部縦アーチは(アーチ高率)武田らの簡易測定法に従い,舟状骨高mm/足長mmで算出し11%以上を健常足とし11%未満を偏平足とした。アーチ高率の測定は自然立位にて足長,舟状骨高を測定し舟状骨高を足長で除してアーチ高率(%)を算出した。
動作中の関節座標位置の測定には,3次元解析装置(VICON-MX)と床反力計(ATMI)を用いて測定を行った。反射マーカーは合計36点(頭部4,胸郭5,肩甲骨1,骨盤4,上肢5×2,下肢6×2)のマーカーを貼り付けた。被験者は運動あり(以下T群),運動なし(以下C群)に分け測定した。課題動作として20cm台からの片脚着地動作を実施した。片脚着地動作に使用する脚は利き脚とし,本実験の利き脚の定義としてはボールを蹴る側の下肢とした。20cm台の上に片脚で立ち,反対側の足の位置は立脚側よりも後ろになるようにした。いずれの着地動作も台上にある身体の位置がそれ以上高くさせないために,天板より上方へ飛び上がらないように注意し前方へ落下させた。また両上肢は腰に当てた。測定回数は3回の練習を行った後に3回の成功動作を測定した。上記の内容を足趾運動の前後で行った。足趾運動として,メトロノーム音に合わせて足趾開閉運動を10回×5セット行った。
飛び降りた後,つま先が床に接地した時点をイニシャルコンタクト(以下IC),上前腸骨棘が最も下方に位置した時点をランディングポジション(以下LD),床反力が最も高値を示した時点(以下MGRF)を抜き出し,質量重心(以下COM)と股関節・膝関節・足関節の角度とモーメントを算出した(関節角度・モーメントともにX・Y・Z成分を分析した)。これらの項目に対して,介入前後の変化量を求め,T群とC群間にて比較検討した。
統計処理は統計ソフトSPSSを用いて対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし,それ未満を優位とした。
【結果】
ICでの介入前後の股関節角度の回旋方向(Z方向)への変化量はC群では0.7±2.3°外旋角度が減少し,T群では1.2±1.1°外旋角度が増加した(P<0.05)。MGRFで膝関節角度の左右方向(Y成分)はC群では1.2±1.6°内反角度が増加し,T群では0.8±2.4°外反角度が減少した(P<0.05°)。
その他の項目では有意差は認められなかった。
【考察】
T群において,足趾開閉運動後,IC時の股関節外旋角度が増加し,MGRF時の膝関節外反角度の減少が認められた。足趾開閉運動により,上行性の動的姿勢制御に対する即時効果が認められた。足趾開閉運動を行うことで,足趾屈筋や足部内在筋の筋機能が向上し,膝関節・股関節の動的アライメントが改善されたと考える。よって,ウォーミングアップ時の足趾開閉運動は膝関節障害予防に対して有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ分野における膝関節障害の予防に役立てる。