[P1-A-0171] 当院スポーツ医学センターにおける保存的リハビリテーション患者の疫学的調査
Keywords:スポーツ傷害, 疫学的調査, 予防
【はじめに,目的】
当院では2012年4月よりスポーツ医学センターを開設し,スポーツ外傷・障害の診療にあたっている。van Mechelenらはスポーツ外傷・障害予防に対する取り組みとして4ステップモデルを提唱しており,その第1ステップとして疫学的調査が重要であると述べている。先行研究では一般的な疫学調査は存在するものの,理学療法の実施状況・帰結を含めた検討は少ない。そこで,当院スポーツ医学センター受診患者の疫学的データに理学療法の実施状況を加えて分析し,今後のスポーツ外傷・障害予防の一助とする目的で本研究を行った。
【方法】
当院スポーツ医学センターにてスポーツ整形外来を受診後,リハビリテーション(以下:リハビリ)目的で理学療法処方となった患者943名のうち,術前・術後の者,短期のリハビリ実施後にチームトレーナーのフォローとなった者などを除いた555名を対象とした。
調査期間は2012年4月~2014年3月の2年間とし,対象患者のカルテを後方視的に調査した。調査項目は性別・年齢・学年・受傷部位・競技種目・外傷と障害の比率などの疫学的情報と,リハ実施期間・回数・帰結・同一部位での再診率などのリハビリ実施状況を収集した。
帰結は以下の7群に分類した。
1)痛みや機能制限が無く元の競技レベルに復帰できた者:優
2)痛みや機能制限は多少残るが元の競技レベルに復帰できた者:良
3)競技復帰はしたがプレーに制限があった者(時間的制限やポジション変更):可
4)競技復帰できなかった者:不可
5)別の疾患名でのフォローへ変更となった者:C(チェンジ)
6)手術となった者:OPE
7)帰結不明:FO(フェードアウト)
【結果】
性差は男性:69.5%,女性:30.5%と男性で多かった。傷害発生は16歳で最も多く,学年では高校1年生で最も多かった。受傷部位は膝関節・腰背部・肩関節・足関節の順に多かった。競技種目は野球で最も多く,サッカー・陸上・バスケットボールの順であった。外傷・障害の比率は,外傷:29.5%,障害:70.5%と障害発生の比率が高い結果となっていた。
リハビリ実施状況は,リハビリ実施期間は平均74.1±82.4日,リハビリ実施回数は平均10.9±10.3回であった。帰結は,競技復帰した者(優・良・可)が418名(75.3%),不可が2名(0.4%),OPEが25名(4.5%),FOが102名(18.6%),Cが8名(1.4%)であった。同一部位での再診率は16名(5.9%)であった。
リハビリ期間が150日を超えた者は71名(12.8%)おり,外傷患者よりも障害患者に多く見られた。年代別で見ると小学生で15.7%,中学生で16.1%と高校生・大学生と比較し長期化する傾向が見られた。また,腰部疾患患者で長期化する傾向が見られ,その中でも腰椎分離症が55%を占めていた。
【考察】
当院スポーツ医学センターを受診したスポーツ選手における疫学的調査結果においても,好発年齢や好発部位,好発競技などは先行研究と同様の結果となっていた。このことから,当院がカバーする地域における各スポーツ毎の競技人口や部活動への参加状況は先行研究で述べられた特徴と類似していると考えられた。
リハ実施状況の調査では競技復帰率は高く,同一部位での再診率は低いことから,当院スポーツ医学センターの理念として掲げる「安全で確実なスポーツ復帰をサポートする」という役割を果たせていると考えられた。
一方で,競技復帰状況を確認出来ずにフェードアウトする患者が多いことは課題であり,今後はスポーツ現場の指導者と連携した調査が必要であると考えられた。
また,小・中学生の腰椎分離症患者でリハビリ実施期間が長期化している要因として,安静固定期間の影響が示唆される。成長期の外傷・障害の特徴として,骨端線損傷など安静期間を強いられる疾患が多いことや,運動方法の理解に時間を要し,体力レベルの向上や運動学習に時間を要することが多いと考えられる。これに対し,外傷・障害発生後からの関わりだけでなく,スポーツ現場と連携し正しいトレーニングやコンディショニングの方法を指導し,外傷・障害の発生を未然に防ぐ取り組みが重要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ外傷・障害予防に対する取り組みの第1段階として,疫学的調査や臨床成績から明確な課題を抽出し,的確な予防策の立案,具体的な取り組みに繋げることが本研究における意義であると考える。
当院では2012年4月よりスポーツ医学センターを開設し,スポーツ外傷・障害の診療にあたっている。van Mechelenらはスポーツ外傷・障害予防に対する取り組みとして4ステップモデルを提唱しており,その第1ステップとして疫学的調査が重要であると述べている。先行研究では一般的な疫学調査は存在するものの,理学療法の実施状況・帰結を含めた検討は少ない。そこで,当院スポーツ医学センター受診患者の疫学的データに理学療法の実施状況を加えて分析し,今後のスポーツ外傷・障害予防の一助とする目的で本研究を行った。
【方法】
当院スポーツ医学センターにてスポーツ整形外来を受診後,リハビリテーション(以下:リハビリ)目的で理学療法処方となった患者943名のうち,術前・術後の者,短期のリハビリ実施後にチームトレーナーのフォローとなった者などを除いた555名を対象とした。
調査期間は2012年4月~2014年3月の2年間とし,対象患者のカルテを後方視的に調査した。調査項目は性別・年齢・学年・受傷部位・競技種目・外傷と障害の比率などの疫学的情報と,リハ実施期間・回数・帰結・同一部位での再診率などのリハビリ実施状況を収集した。
帰結は以下の7群に分類した。
1)痛みや機能制限が無く元の競技レベルに復帰できた者:優
2)痛みや機能制限は多少残るが元の競技レベルに復帰できた者:良
3)競技復帰はしたがプレーに制限があった者(時間的制限やポジション変更):可
4)競技復帰できなかった者:不可
5)別の疾患名でのフォローへ変更となった者:C(チェンジ)
6)手術となった者:OPE
7)帰結不明:FO(フェードアウト)
【結果】
性差は男性:69.5%,女性:30.5%と男性で多かった。傷害発生は16歳で最も多く,学年では高校1年生で最も多かった。受傷部位は膝関節・腰背部・肩関節・足関節の順に多かった。競技種目は野球で最も多く,サッカー・陸上・バスケットボールの順であった。外傷・障害の比率は,外傷:29.5%,障害:70.5%と障害発生の比率が高い結果となっていた。
リハビリ実施状況は,リハビリ実施期間は平均74.1±82.4日,リハビリ実施回数は平均10.9±10.3回であった。帰結は,競技復帰した者(優・良・可)が418名(75.3%),不可が2名(0.4%),OPEが25名(4.5%),FOが102名(18.6%),Cが8名(1.4%)であった。同一部位での再診率は16名(5.9%)であった。
リハビリ期間が150日を超えた者は71名(12.8%)おり,外傷患者よりも障害患者に多く見られた。年代別で見ると小学生で15.7%,中学生で16.1%と高校生・大学生と比較し長期化する傾向が見られた。また,腰部疾患患者で長期化する傾向が見られ,その中でも腰椎分離症が55%を占めていた。
【考察】
当院スポーツ医学センターを受診したスポーツ選手における疫学的調査結果においても,好発年齢や好発部位,好発競技などは先行研究と同様の結果となっていた。このことから,当院がカバーする地域における各スポーツ毎の競技人口や部活動への参加状況は先行研究で述べられた特徴と類似していると考えられた。
リハ実施状況の調査では競技復帰率は高く,同一部位での再診率は低いことから,当院スポーツ医学センターの理念として掲げる「安全で確実なスポーツ復帰をサポートする」という役割を果たせていると考えられた。
一方で,競技復帰状況を確認出来ずにフェードアウトする患者が多いことは課題であり,今後はスポーツ現場の指導者と連携した調査が必要であると考えられた。
また,小・中学生の腰椎分離症患者でリハビリ実施期間が長期化している要因として,安静固定期間の影響が示唆される。成長期の外傷・障害の特徴として,骨端線損傷など安静期間を強いられる疾患が多いことや,運動方法の理解に時間を要し,体力レベルの向上や運動学習に時間を要することが多いと考えられる。これに対し,外傷・障害発生後からの関わりだけでなく,スポーツ現場と連携し正しいトレーニングやコンディショニングの方法を指導し,外傷・障害の発生を未然に防ぐ取り組みが重要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ外傷・障害予防に対する取り組みの第1段階として,疫学的調査や臨床成績から明確な課題を抽出し,的確な予防策の立案,具体的な取り組みに繋げることが本研究における意義であると考える。