[P1-A-0206] 高位脛骨骨切り術後足関節痛をきたす患者の歩行中足関節前額面運動学的変化の特徴
Keywords:高位脛骨骨切り術, 足関節前額面運動学的変化, 足関節痛
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)は高齢者に高い割合で生じる慢性的疾患であり,主に疼痛や日常生活障害をもたらす。膝OAに対する手術療法には種々あるが,高位脛骨骨切り術(HTO)は確立された治療法の一つである。HTOは内反変形した膝関節を外反位に修正し,内側コンパートメントへの荷重を外側へ分散化させることにより疼痛を緩和する効果がある。膝関節のアライメント修正は隣接関節へ少なからず影響を及ぼし,足関節においては静止立位時前額面におけるX線学的検討で,術後に内側関節面に関節症性変化と共に疼痛が出現するとの報告があるが,歩行中の足関節前額面の運動学的変化については明らかにされていない。
そこで本研究の目的は,HTO後に足関節痛が生じた患者において,術前後における歩行中前額面の運動学的変化の特徴を明らかにすることとした。
【方法】
対象は当院整形外科にて内側型膝OAと診断され,HTOを施行された患者とし,外傷性,リウマチ性膝関節症患者は除外した。
測定は術前,術後1年に実施した。術後1年の時点で足関節に疼痛が生じた群を疼痛群,生じなかった群を疼痛なし群として分けた。
歩行動作解析には,3次元動作解析装置Vicon612(Vicon Motion Systems社,Oxford,英国)7カメラシステムと4枚の床反力計(AMTI社製,Watertown,米国)を用いてサンプリング周波数120Hzにて計測した。赤外線反射マーカーはVicon標準ソフトであるPlug-In-Gaitモデルに即し全身の39点に貼付した。運動課題は歩行速度を規定しない自由歩行とし,測定環境は裸足による8mの歩行路とした。
得られたデータより検討項目として,立脚期中の平均膝関節内反角,平均足関節内がえし角を採用し,各データについて群間で比較検討した。
なお,症例数の不足により統計学的検討は不可能であった。
【結果】
対象は10名10膝,男性3名,女性7名,平均年齢は58.8±6.0歳であった。疼痛群は2名,疼痛なし群は8名であった。
歩行立脚期中の平均膝関節内反角は疼痛群では術前24.0±3.2°,術後9.6±5.2°で平均15°外反方向に変化し,疼痛なし群では術前6.2±4.4°,術後-0.8±4.8°と7.0°外反方向に変化した。平均足関節内がえし角は疼痛群で術前-3.6±2.7°,術後-1.0±0.6°で2.0°内がえし方向に変化したのに対して,疼痛無し群では術前0.2±2.0°,術後-0.8±1.0°で1.0°外がえし方向に変化した。
【考察】
本研究より,HTO後1年で足関節に疼痛が生じた群は術前膝関節内反角が大きく,手術による修正角度が大きい。さらに足関節が内がえし方向へ変化することで,足関節内側に荷重部が移動し,疼痛を誘発する可能性が示唆された。疼痛の有無により足関節代償方向が逆方向になる要因は明らかにできなかった。
【理学療法学研究としての意義】
HTO後の理学療法を実施する上で,術後の足関節痛を管理する目的で,術前の内反角度,手術による修正角度,歩行中の足関節内がえし方向の角度増大を考慮する必要性が示唆された。
変形性膝関節症(膝OA)は高齢者に高い割合で生じる慢性的疾患であり,主に疼痛や日常生活障害をもたらす。膝OAに対する手術療法には種々あるが,高位脛骨骨切り術(HTO)は確立された治療法の一つである。HTOは内反変形した膝関節を外反位に修正し,内側コンパートメントへの荷重を外側へ分散化させることにより疼痛を緩和する効果がある。膝関節のアライメント修正は隣接関節へ少なからず影響を及ぼし,足関節においては静止立位時前額面におけるX線学的検討で,術後に内側関節面に関節症性変化と共に疼痛が出現するとの報告があるが,歩行中の足関節前額面の運動学的変化については明らかにされていない。
そこで本研究の目的は,HTO後に足関節痛が生じた患者において,術前後における歩行中前額面の運動学的変化の特徴を明らかにすることとした。
【方法】
対象は当院整形外科にて内側型膝OAと診断され,HTOを施行された患者とし,外傷性,リウマチ性膝関節症患者は除外した。
測定は術前,術後1年に実施した。術後1年の時点で足関節に疼痛が生じた群を疼痛群,生じなかった群を疼痛なし群として分けた。
歩行動作解析には,3次元動作解析装置Vicon612(Vicon Motion Systems社,Oxford,英国)7カメラシステムと4枚の床反力計(AMTI社製,Watertown,米国)を用いてサンプリング周波数120Hzにて計測した。赤外線反射マーカーはVicon標準ソフトであるPlug-In-Gaitモデルに即し全身の39点に貼付した。運動課題は歩行速度を規定しない自由歩行とし,測定環境は裸足による8mの歩行路とした。
得られたデータより検討項目として,立脚期中の平均膝関節内反角,平均足関節内がえし角を採用し,各データについて群間で比較検討した。
なお,症例数の不足により統計学的検討は不可能であった。
【結果】
対象は10名10膝,男性3名,女性7名,平均年齢は58.8±6.0歳であった。疼痛群は2名,疼痛なし群は8名であった。
歩行立脚期中の平均膝関節内反角は疼痛群では術前24.0±3.2°,術後9.6±5.2°で平均15°外反方向に変化し,疼痛なし群では術前6.2±4.4°,術後-0.8±4.8°と7.0°外反方向に変化した。平均足関節内がえし角は疼痛群で術前-3.6±2.7°,術後-1.0±0.6°で2.0°内がえし方向に変化したのに対して,疼痛無し群では術前0.2±2.0°,術後-0.8±1.0°で1.0°外がえし方向に変化した。
【考察】
本研究より,HTO後1年で足関節に疼痛が生じた群は術前膝関節内反角が大きく,手術による修正角度が大きい。さらに足関節が内がえし方向へ変化することで,足関節内側に荷重部が移動し,疼痛を誘発する可能性が示唆された。疼痛の有無により足関節代償方向が逆方向になる要因は明らかにできなかった。
【理学療法学研究としての意義】
HTO後の理学療法を実施する上で,術後の足関節痛を管理する目的で,術前の内反角度,手術による修正角度,歩行中の足関節内がえし方向の角度増大を考慮する必要性が示唆された。