[P1-A-0218] 変形性股関節症患者における改訂版Franchay Activities Indexの妥当性の検討
キーワード:SR-FAI, 変形性股関節症, 妥当性
【はじめに,目的】
変形性股関節症(以下;変股症)患者に対して行われる人工股関節全置換術(以下;THA)は,数カ月間の手術待機期間を余儀なくされる場合がある。この手術待機時期に日常生活関連動作(以下;APDL)を保つことは患者のQOLにとって重要であり,先行研究では術前のAPDLが術後機能回復に影響することが示されている。また,股関節を含む下肢関節に変形性関節症を呈する患者は,運動習慣が少なく,生活習慣病をはじめとする多くの合併症を抱えているとされている。そのため,変股症患者の地域での自立度を把握するためにAPDLを評価することは重要であると言える。変股症患者に特異的な評価尺度として日本整形外科学会股関節機能評価(以下;JOA hip score),日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下;JHEQ),Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexが広く活用されているが,変股症患者に特異的なAPDLの評価尺度は存在していない。APDLの評価尺度として改訂版Frenchay Activitise Index(以下;SR-FAI)は再現性と妥当性の一部が検証されており,地域在住の脳卒中患者や高齢者のライフスタイル評価として幅広く使用されている。しかし,変股症患者におけるSR-FAIの妥当性を検討した報告は見当たらない。そこで,本研究では,女性変股症患者におけるSR-FAIの臨床的有用性を検証することを目的とした。
【方法】
本研究は後ろ向きの観察研究である。対象は,当院で初回片側THAを目的として入院した変股症患者37名(男性2名,女性35名)のうち,女性変股症患者35名とした。男性は少数であり,先行研究でSR-FAIは男性よりも女性で有意に得点が高いことが示されていることから,男性を除外して分析を行った。年齢70.6±10.2歳(80歳代8名,70歳代12名,60歳代9名,50歳代6名),BMI23.6±3.6kg/m2,JOA hip score32.4±12.9点,X線像評価(進行期27名,末期8名)であった。全例に対して術前にSR-FAIを用いてAPDLの評価を行った。SR-FAIは設問数15問で,設問ごとに0点から3点の配点が与えられる自己記入式アンケートである。合計点は0点~45点で,点数が高いほどAPDLが良いことを示す。検討項目は,1)SR-FAIの合計点と下位項目を調査し,女性変股症患者でのAPDLの特徴を分析した。2)妥当性を検討するために,SR-FAI合計点とJHEQ合計点および下位尺度(痛み,動作,メンタル),JOA hip score,10m快適歩行速度(以下;10mWS),歩行時股関節疼痛,年齢,BMIとの相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。統計解析はSPSSを用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
SR-FAI合計点は25.4±8.0点であった(最小値2点,最大値37点,Shapilo-Wilk検定p=0.057)。下位尺度の特徴として,家事動作で高値を示す傾向にあり,余暇活動で低値を示す傾向にあった。Spearmanの順位相関係数を求めた結果,SR-FAI合計点と有意な相関を認めたのはJOA hip score(r=0.515)と10mWS(r=0.514)であった。一方,SR-FAI合計点と年齢に有意な相関を認めなかった。
【考察】
SR-FAIの下位項目には家事動作や移動能力の要素を含むものが多く,先行研究でSR-FAIはBarthel indexとの間に相関関係を認めることから,JOA hip scoreや10mWSと有意な相関関係を示したと推察され,収束的妥当性を有していることが示唆された。また,SR-FAIはJHEQ下位項目であるメンタルと有意な相関を示さなかったことから,一定の弁別的妥当性を有していると考える。SR-FAIはJOA hip scoreと類似した構成概念を有するが,SR-FAIは屋内外のより広い範囲の身体活動や社会での自立度を評価できると考える。これらのことから,SR-FAIは妥当性を備えた女性変股症患者のAPDLを評価する尺度として,臨床的に有用である可能性が示唆された。今後は,対象に男性を加えて妥当性を検討する必要がある。また,変股症患者における特異的なSR-FAI下位項目の分析や,術後運動機能回復の予測的妥当性を分析したい。
【理学療法研究としての意義】
女性変股症患者のAPDLを評価するための評価尺度として,SR-FAIは臨床的に有用である可能性が示唆された。
変形性股関節症(以下;変股症)患者に対して行われる人工股関節全置換術(以下;THA)は,数カ月間の手術待機期間を余儀なくされる場合がある。この手術待機時期に日常生活関連動作(以下;APDL)を保つことは患者のQOLにとって重要であり,先行研究では術前のAPDLが術後機能回復に影響することが示されている。また,股関節を含む下肢関節に変形性関節症を呈する患者は,運動習慣が少なく,生活習慣病をはじめとする多くの合併症を抱えているとされている。そのため,変股症患者の地域での自立度を把握するためにAPDLを評価することは重要であると言える。変股症患者に特異的な評価尺度として日本整形外科学会股関節機能評価(以下;JOA hip score),日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下;JHEQ),Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexが広く活用されているが,変股症患者に特異的なAPDLの評価尺度は存在していない。APDLの評価尺度として改訂版Frenchay Activitise Index(以下;SR-FAI)は再現性と妥当性の一部が検証されており,地域在住の脳卒中患者や高齢者のライフスタイル評価として幅広く使用されている。しかし,変股症患者におけるSR-FAIの妥当性を検討した報告は見当たらない。そこで,本研究では,女性変股症患者におけるSR-FAIの臨床的有用性を検証することを目的とした。
【方法】
本研究は後ろ向きの観察研究である。対象は,当院で初回片側THAを目的として入院した変股症患者37名(男性2名,女性35名)のうち,女性変股症患者35名とした。男性は少数であり,先行研究でSR-FAIは男性よりも女性で有意に得点が高いことが示されていることから,男性を除外して分析を行った。年齢70.6±10.2歳(80歳代8名,70歳代12名,60歳代9名,50歳代6名),BMI23.6±3.6kg/m2,JOA hip score32.4±12.9点,X線像評価(進行期27名,末期8名)であった。全例に対して術前にSR-FAIを用いてAPDLの評価を行った。SR-FAIは設問数15問で,設問ごとに0点から3点の配点が与えられる自己記入式アンケートである。合計点は0点~45点で,点数が高いほどAPDLが良いことを示す。検討項目は,1)SR-FAIの合計点と下位項目を調査し,女性変股症患者でのAPDLの特徴を分析した。2)妥当性を検討するために,SR-FAI合計点とJHEQ合計点および下位尺度(痛み,動作,メンタル),JOA hip score,10m快適歩行速度(以下;10mWS),歩行時股関節疼痛,年齢,BMIとの相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。統計解析はSPSSを用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
SR-FAI合計点は25.4±8.0点であった(最小値2点,最大値37点,Shapilo-Wilk検定p=0.057)。下位尺度の特徴として,家事動作で高値を示す傾向にあり,余暇活動で低値を示す傾向にあった。Spearmanの順位相関係数を求めた結果,SR-FAI合計点と有意な相関を認めたのはJOA hip score(r=0.515)と10mWS(r=0.514)であった。一方,SR-FAI合計点と年齢に有意な相関を認めなかった。
【考察】
SR-FAIの下位項目には家事動作や移動能力の要素を含むものが多く,先行研究でSR-FAIはBarthel indexとの間に相関関係を認めることから,JOA hip scoreや10mWSと有意な相関関係を示したと推察され,収束的妥当性を有していることが示唆された。また,SR-FAIはJHEQ下位項目であるメンタルと有意な相関を示さなかったことから,一定の弁別的妥当性を有していると考える。SR-FAIはJOA hip scoreと類似した構成概念を有するが,SR-FAIは屋内外のより広い範囲の身体活動や社会での自立度を評価できると考える。これらのことから,SR-FAIは妥当性を備えた女性変股症患者のAPDLを評価する尺度として,臨床的に有用である可能性が示唆された。今後は,対象に男性を加えて妥当性を検討する必要がある。また,変股症患者における特異的なSR-FAI下位項目の分析や,術後運動機能回復の予測的妥当性を分析したい。
【理学療法研究としての意義】
女性変股症患者のAPDLを評価するための評価尺度として,SR-FAIは臨床的に有用である可能性が示唆された。