[P1-A-0250] Nintendo Wii Balance Boardを利用した座位姿勢変換時重心動揺の解析
―健常者と片麻痺患者の比較―
キーワード:重心動揺, Wii Balance Board, 座位バランス
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺(以下CVA)患者のリハビリテーションにおいて,座位姿勢の評価は立ち上がりや歩行といった次の動作へ移行するために必要な動作である。そのため座位姿勢の客観的評価は患者のADLを予測する上で重要である。座位姿勢を評価する方法として重心動揺計を用いた測定がある。近年,Nintendo Wii Balance Board(以下Wii)が重心動揺計として使用できることが報告されている。今回,Wiiを使用した座位姿勢変換時の支持面と重心動揺の変化について健常者とCVA患者で比較検討した。
【方法】
対象はCVA患者14名(男性10名,女性4名,平均年齢71±7.8歳)を対象とした。CVA患者の内訳として,右片麻痺3名,左片麻痺10名で口頭指示に対する理解や動作は可能であった。なお,自立した座位保持及びBrunnstrom recovery stagesIII以下で下肢の拳上が困難な症例は除外した。また,コントロール群として健常成人20名(男性10名,女性10名,平均年齢24.8±2.6歳)とした。計測にはWiiを使用し,Bluetooth接続によりノートパソコンに2軸方向(X軸Y軸)を同時に,サンプリング周波数100Hzで取り込み,ハードディスクに保存した。ソフトウェアは,富家千葉病院で簡易解析システムとして構築されたものを使用した。これらのデータをもとに,Matlab(Version7.3.0267)を用いて,X軸(右側が+,左側が-),Y軸(前方が+,後方が-)のふたつの座標軸を持つグラフにて動揺のパターンを観察した。計測時の環境設定は,Wiiの中心に殿部が位置するように設定し,両上肢は胸部の前で固定し,股関節・膝関節・足関節が90°となるよう高さの調節を行い,ビデオカメラで動作を撮影した。動的動作課題として,Wii上にて端坐位となり,10秒間の静的座位保持後に一側下肢を拳上した状態を5秒間保持する動作を左右の下肢で各3試行実施した。重心の軌跡(以下 軌跡),総軌跡長,動作開始から安定するまでの時間(以下 安定時間)を測定し,総軌跡長と安定時間に関しては3試行の平均値を算出した。
【結果】
右下肢拳上における総軌跡長は,健常者6.38±1.45cm,右CVA患者13.42±4.98cm,左CVA患者10.38±4.97cmであり,安定時間は,健常者1.73±0.28sec,右CVA患者2.93±0.62 sec,左CVA患者2.44±0.48 secであった。左下肢拳上における総軌跡長は,健常者6.84±1.59 cm,右CVA患者13.39±3.4 cm,左CVA患者11.67±6.10 cmであり,安定時間は,健常者1.86±0.35 sec,右CVA患者2.89±0.09 sec,左CVA患者2.41±0.3 sec 5であった。健常者では,動的動作課題において重心の軌跡パターンは中心部から下肢拳上側前方に移動した後,拳上側後方に円を描くように移動する傾向が認められた。CVA患者では,健常者と比較すると動揺データは個人差が大きく,集団で定量的に比較しても一定の傾向は認められなかった。
【考察】
健常者の動的動作課題においては,ある一定の重心移動のパターンを客観的に記録できた。また,総軌跡長においては健常成人ではCVA患者と比較しても小さく,安定時間では,健常者の方が時間が短い傾向にあった。これは,CVA患者の場合,端坐位での下肢拳上時の下肢・体幹の安定性が低く,麻痺側の支持面となる骨盤の動きを調整できず動揺が大きくなること,主として錘体路の障害,感覚系の障害により入出力の障害をきたし立ち直り反応に支障を生じ座位の体幹制御能力が低下していることが考えられる。それによって健常者と比べて動揺が大きく安定性するまでに時間を要していると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
Wiiは重心動揺計と比べて安価であり,パソコンへの取り込みが可能となったことで簡便に使用することができる。ゲーム機器であるということで,使用する側にとっても比較的受け入れやすいと考える。また,数値的な部分だけでなく,重心動揺の波形全体を表示して動揺のパターンを客観的に観察することが可能であり,患者の障害の客観的評価とリハビリテーション効果の判定に応用できると考える。
脳卒中片麻痺(以下CVA)患者のリハビリテーションにおいて,座位姿勢の評価は立ち上がりや歩行といった次の動作へ移行するために必要な動作である。そのため座位姿勢の客観的評価は患者のADLを予測する上で重要である。座位姿勢を評価する方法として重心動揺計を用いた測定がある。近年,Nintendo Wii Balance Board(以下Wii)が重心動揺計として使用できることが報告されている。今回,Wiiを使用した座位姿勢変換時の支持面と重心動揺の変化について健常者とCVA患者で比較検討した。
【方法】
対象はCVA患者14名(男性10名,女性4名,平均年齢71±7.8歳)を対象とした。CVA患者の内訳として,右片麻痺3名,左片麻痺10名で口頭指示に対する理解や動作は可能であった。なお,自立した座位保持及びBrunnstrom recovery stagesIII以下で下肢の拳上が困難な症例は除外した。また,コントロール群として健常成人20名(男性10名,女性10名,平均年齢24.8±2.6歳)とした。計測にはWiiを使用し,Bluetooth接続によりノートパソコンに2軸方向(X軸Y軸)を同時に,サンプリング周波数100Hzで取り込み,ハードディスクに保存した。ソフトウェアは,富家千葉病院で簡易解析システムとして構築されたものを使用した。これらのデータをもとに,Matlab(Version7.3.0267)を用いて,X軸(右側が+,左側が-),Y軸(前方が+,後方が-)のふたつの座標軸を持つグラフにて動揺のパターンを観察した。計測時の環境設定は,Wiiの中心に殿部が位置するように設定し,両上肢は胸部の前で固定し,股関節・膝関節・足関節が90°となるよう高さの調節を行い,ビデオカメラで動作を撮影した。動的動作課題として,Wii上にて端坐位となり,10秒間の静的座位保持後に一側下肢を拳上した状態を5秒間保持する動作を左右の下肢で各3試行実施した。重心の軌跡(以下 軌跡),総軌跡長,動作開始から安定するまでの時間(以下 安定時間)を測定し,総軌跡長と安定時間に関しては3試行の平均値を算出した。
【結果】
右下肢拳上における総軌跡長は,健常者6.38±1.45cm,右CVA患者13.42±4.98cm,左CVA患者10.38±4.97cmであり,安定時間は,健常者1.73±0.28sec,右CVA患者2.93±0.62 sec,左CVA患者2.44±0.48 secであった。左下肢拳上における総軌跡長は,健常者6.84±1.59 cm,右CVA患者13.39±3.4 cm,左CVA患者11.67±6.10 cmであり,安定時間は,健常者1.86±0.35 sec,右CVA患者2.89±0.09 sec,左CVA患者2.41±0.3 sec 5であった。健常者では,動的動作課題において重心の軌跡パターンは中心部から下肢拳上側前方に移動した後,拳上側後方に円を描くように移動する傾向が認められた。CVA患者では,健常者と比較すると動揺データは個人差が大きく,集団で定量的に比較しても一定の傾向は認められなかった。
【考察】
健常者の動的動作課題においては,ある一定の重心移動のパターンを客観的に記録できた。また,総軌跡長においては健常成人ではCVA患者と比較しても小さく,安定時間では,健常者の方が時間が短い傾向にあった。これは,CVA患者の場合,端坐位での下肢拳上時の下肢・体幹の安定性が低く,麻痺側の支持面となる骨盤の動きを調整できず動揺が大きくなること,主として錘体路の障害,感覚系の障害により入出力の障害をきたし立ち直り反応に支障を生じ座位の体幹制御能力が低下していることが考えられる。それによって健常者と比べて動揺が大きく安定性するまでに時間を要していると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
Wiiは重心動揺計と比べて安価であり,パソコンへの取り込みが可能となったことで簡便に使用することができる。ゲーム機器であるということで,使用する側にとっても比較的受け入れやすいと考える。また,数値的な部分だけでなく,重心動揺の波形全体を表示して動揺のパターンを客観的に観察することが可能であり,患者の障害の客観的評価とリハビリテーション効果の判定に応用できると考える。