[P1-A-0290] 訪問リハビリで訪問中にスタッフが遭遇する異常所見
Keywords:訪問リハビリテーション, リスク管理, 異常所見
【はじめに,目的】
訪問リハビリテーションは訪問中に異常所見に遭遇し,その対応を一人で行う。今回,訪問中の異常所見はどのようなものがあるか,多い疾患は何か,医療機関受診後の診断結果は何であったかを調査したので報告する。
【方法】
平成22年4月~平成26年8月までの診療録52,537件(535名)を対象とした。
以下の①~⑤の項目を調査した。
①訪問中に異常所見に遭遇し主治医に連絡した件数とその内容。
②医師に連絡した際に受けた指示内容とその後の利用者の経過。
③異常所見の無かった群を対照群,異常所見のあった群を異常所見群の2群に分け,主疾患,年齢,要介護度,生活状況(独居,日中独居,高齢者2人暮らし,家族と同居)の割合をx2検定クロス集計表の残差分析を用いて比較。また,異常所見群の既往歴を調査。
④異常所見のうち医療機関を受診後の診断名がついた件数と内容。また,主疾患別の診断名の内訳。
⑤診断名と主疾患,既往歴との関係。
【結果】
①訪問中に異常所見に遭遇した件数は296件(146名)あり,異常所見の内訳は血圧の異常,疼痛(16%),皮膚の変化(10%),熱発(8%),気分不良・嘔吐(5%)の順で多かった。
②医師の指示内容は経過観察(44%),外来受診(24%),定期の外来受診(10%),薬の調整(9%)であった。その後の治療経過は,特に必要なし(53%),入院(15%),自宅で治療(12%)であった。
③年齢は対照群に比べ異常所見群の60歳代の割合が高かった(p>0.01)。主疾患では異常所見群の脳血管疾患,進行性難病の割合が高く(p>0.05),整形疾患の割合が低かった(p>0.01)。要介護度,生活状況で差は認められなかった。
④異常所見296件のうち医療機関を受診し診断名がついたものは118件であった。内訳は高血圧,自律神経系障害(10%),低酸素血症や高炭酸ガス血症などの呼吸障害(6%),痙攣発作,褥瘡(5%)の順に多かった。主疾患は脳血管疾患(51%),進行性難病(29%)が多く,脳血管疾患では高血圧(16%),痙攣発作(10%),下肢の循環障害,切傷,打撲,脱水,肺炎,便秘(5%),進行性難病では自律神経系障害(17%),呼吸障害(13%),骨折(10%),褥瘡,尿路感染(6%)の順に多かった。
⑤主疾患に起因41%,既往歴に起因13%,主疾患・既往歴に関連なし46%であった。
【考察】
結果①より訪問で遭遇する異常所見は多種多様であることがわかった。結果②より医師に連絡した際に56%は医療機関受診や薬の調整,対応を指示されており,その後の経過で入院,通院などの医療的処置が必要なケースが約半数あることから,セラピストが訪問中に異常所見に気づき,確実に対応することの重要性が伺える。結果③より脳血管疾患や進行性難病が異常所見の割合が高く,訪問中に遭遇しやすいことが考えられる。60歳代の割合が多いことから比較的若い年齢でも注意が必要なことが示唆された。また日中の家族介護者の有無により異常所見の数に差がないことから,家族が異常所見を発見できるよう普段の状態やリスクについて情報提供を行うことも重要である。
結果④より主疾患別にみると脳血管疾患では高血圧,痙攣発作,転倒による骨折や打撲,切傷などが多くみられた。高血圧は発症からの期間に関わらず多く,特に複数回連絡している事例は在宅生活早期の利用者に多かった。痙攣発作では過去に痙攣発作を経験していることが多く,事前に発作時の状況や対応の確認が必要である。進行性難病の内訳はパーキンソン病66%,脊髄小脳変性症21%,多系統萎縮症7%である。これらの疾患では自律神経系障害による異常所見が多くみられた。また活動性が保たれているうちは転倒による異常所見も多く,病気の進行とともに活動性が低下し褥瘡や尿路感染,呼吸障害などの異常所見が多くなると考える。
結果⑤より約半数は主疾患,既往歴と関連があり,それらにより起こり得る症状をある程度予測しておくことで早い発見や対応ができると考える。主疾患・既往歴に関連のない46%の内容は骨折や感冒,肺炎,脱水など様々であり幅広い知識が求められることがわかった。また,リハビリ中の転倒や姿勢変換による起立性低血圧が原因と考えられる異常所見が5件あり,リハビリ中のリスク管理も重要である。
以上より,疾患の理解やバイタルサインなどの基礎知識を深め,既往歴を把握しておくことや,日頃から主治医と連携をとり,緊急時の対応などを主治医,家族と確認しておくことが重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
過去の事例より訪問中に起こりうる異常所見や原因となる疾患を把握することで,訪問中の異常所見の早期発見や対応などリスク管理に役立てることができる。
訪問リハビリテーションは訪問中に異常所見に遭遇し,その対応を一人で行う。今回,訪問中の異常所見はどのようなものがあるか,多い疾患は何か,医療機関受診後の診断結果は何であったかを調査したので報告する。
【方法】
平成22年4月~平成26年8月までの診療録52,537件(535名)を対象とした。
以下の①~⑤の項目を調査した。
①訪問中に異常所見に遭遇し主治医に連絡した件数とその内容。
②医師に連絡した際に受けた指示内容とその後の利用者の経過。
③異常所見の無かった群を対照群,異常所見のあった群を異常所見群の2群に分け,主疾患,年齢,要介護度,生活状況(独居,日中独居,高齢者2人暮らし,家族と同居)の割合をx2検定クロス集計表の残差分析を用いて比較。また,異常所見群の既往歴を調査。
④異常所見のうち医療機関を受診後の診断名がついた件数と内容。また,主疾患別の診断名の内訳。
⑤診断名と主疾患,既往歴との関係。
【結果】
①訪問中に異常所見に遭遇した件数は296件(146名)あり,異常所見の内訳は血圧の異常,疼痛(16%),皮膚の変化(10%),熱発(8%),気分不良・嘔吐(5%)の順で多かった。
②医師の指示内容は経過観察(44%),外来受診(24%),定期の外来受診(10%),薬の調整(9%)であった。その後の治療経過は,特に必要なし(53%),入院(15%),自宅で治療(12%)であった。
③年齢は対照群に比べ異常所見群の60歳代の割合が高かった(p>0.01)。主疾患では異常所見群の脳血管疾患,進行性難病の割合が高く(p>0.05),整形疾患の割合が低かった(p>0.01)。要介護度,生活状況で差は認められなかった。
④異常所見296件のうち医療機関を受診し診断名がついたものは118件であった。内訳は高血圧,自律神経系障害(10%),低酸素血症や高炭酸ガス血症などの呼吸障害(6%),痙攣発作,褥瘡(5%)の順に多かった。主疾患は脳血管疾患(51%),進行性難病(29%)が多く,脳血管疾患では高血圧(16%),痙攣発作(10%),下肢の循環障害,切傷,打撲,脱水,肺炎,便秘(5%),進行性難病では自律神経系障害(17%),呼吸障害(13%),骨折(10%),褥瘡,尿路感染(6%)の順に多かった。
⑤主疾患に起因41%,既往歴に起因13%,主疾患・既往歴に関連なし46%であった。
【考察】
結果①より訪問で遭遇する異常所見は多種多様であることがわかった。結果②より医師に連絡した際に56%は医療機関受診や薬の調整,対応を指示されており,その後の経過で入院,通院などの医療的処置が必要なケースが約半数あることから,セラピストが訪問中に異常所見に気づき,確実に対応することの重要性が伺える。結果③より脳血管疾患や進行性難病が異常所見の割合が高く,訪問中に遭遇しやすいことが考えられる。60歳代の割合が多いことから比較的若い年齢でも注意が必要なことが示唆された。また日中の家族介護者の有無により異常所見の数に差がないことから,家族が異常所見を発見できるよう普段の状態やリスクについて情報提供を行うことも重要である。
結果④より主疾患別にみると脳血管疾患では高血圧,痙攣発作,転倒による骨折や打撲,切傷などが多くみられた。高血圧は発症からの期間に関わらず多く,特に複数回連絡している事例は在宅生活早期の利用者に多かった。痙攣発作では過去に痙攣発作を経験していることが多く,事前に発作時の状況や対応の確認が必要である。進行性難病の内訳はパーキンソン病66%,脊髄小脳変性症21%,多系統萎縮症7%である。これらの疾患では自律神経系障害による異常所見が多くみられた。また活動性が保たれているうちは転倒による異常所見も多く,病気の進行とともに活動性が低下し褥瘡や尿路感染,呼吸障害などの異常所見が多くなると考える。
結果⑤より約半数は主疾患,既往歴と関連があり,それらにより起こり得る症状をある程度予測しておくことで早い発見や対応ができると考える。主疾患・既往歴に関連のない46%の内容は骨折や感冒,肺炎,脱水など様々であり幅広い知識が求められることがわかった。また,リハビリ中の転倒や姿勢変換による起立性低血圧が原因と考えられる異常所見が5件あり,リハビリ中のリスク管理も重要である。
以上より,疾患の理解やバイタルサインなどの基礎知識を深め,既往歴を把握しておくことや,日頃から主治医と連携をとり,緊急時の対応などを主治医,家族と確認しておくことが重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
過去の事例より訪問中に起こりうる異常所見や原因となる疾患を把握することで,訪問中の異常所見の早期発見や対応などリスク管理に役立てることができる。