第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター1

地域理学療法3

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0299] 脳卒中患者における回復期リハビリテーション病棟入棟までの期間がADLに及ぼす影響

FIM・在院日数を用いての検討

與儀哲弘, 村井直人, 新崎直和, 伊禮里子 (医療法人ちゅうざん会ちゅうざん病院)

Keywords:発症後期間, FIM, 在院日数

【はじめに,目的】
近年,包括的な医療が進み急性期・回復期とも在院日数の短縮が求められ,当院回復期リハ病棟においても発症から入棟までの期間(以下,発症後期間)が短縮している傾向にある。発症後期間が短い対象者ほど機能的自立度評価法(以下,FIM)の向上や在院日数の短縮につながる印象を受ける。そこで,今回は脳卒中患者を対象に発症後期間がADLや在院日数に及ぼす影響を明らかすることを目的に後方視的に調査した。
【方法】
対象は2013年4月1日から2014年7月31日までの期間に当院回復期リハ病棟を退院した脳卒中患者263名を対象とした(急性増悪にて急性期病院へ転院となった患者を除く)。対象者の内訳は,男性193名,女性70名,平均年齢は73.4±47.2歳である。対象者データは当院データベースより在院日数,FIM利得(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点),FIM効率(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点/在院日数)を後方視的に調査した。その後,対象者を発症後期間をもとに31日未満107名(A群)と,31日以上61日未満156名(B群)の2群に分類し,上記の調査項目について群間比較を行った。その後,稲川らの先行研究に従い,入院時FIM運動項目総得点(以下,FIM-M)より3群(重度群<39点,中等度群<78点,軽度群)に重症度分類しさらに重度群(78名),中等度群(167名),軽度群(18名)それぞれの群を発症後期間31日未満群と,31日以上61日未満群の2群に分類し群間比較を行った。各調査項目における群間比較は2標本t検定及びマンホイットニーのU検定を用い検定を行った。有意水準は1%及び5%未満とし統計解析にはR2.8.1を使用した。
【結果】
A群のFIM利得:19.7±12.7点,FIM効率:0.4±0.3点,在院日数:74.4±43.7点,B群においてはFIM利得:16.4±11.7点,FIM効率:0.2±0.1点,在院日数:93.8±50.8点であった。在院日数・FIM効率においてB群に比べA群の成績が高く有意差を認めた(P<0.01)。FIM利得においては,B群に比べA群の利得が僅かに高いもの有意差は認めなかった。FIM-Mにおける重症度分類については,31日未満群におけるFIM利得(重度群23.4±17.1,中等度群20.7±10.8,軽度群6.9±4.4),FIM効率(重度群0.2±0.2,中等度群0.4±0.3,軽度群0.2±0.2),在院日数(重度群108.2±36.4,中等度群67.9±41.2,軽度群55.3±43.3)。31日以上61日未満群におけるFIM利得(重度群11.8±10.8,中等度群19.7±10.7,軽度群5.8±3.6),FIM効率(重度群0.1±0.1,中等度群0.3±0.3,軽度群0.2±0.2),在院日数(重度群113.8±51.6,中等度群87.5±50.0,軽度群42.3±29.8)。重度群においては,FIM効率,FIM利得において有意差を認めた(P<0.01)。中等度群においては,FIM効率,在院日数において有意差を認めた(P<0.01)。軽度群においてはすべての項目において有意差を認めなかった。
【考察】
発症後期間が短いA群においてFIM効率の向上・在院日数の短縮が図れる可能性が高いことが示唆された。また,重症度別分類より軽度群においては,発症後期間がFIM利得・効率や在院日数に及ぼす影響はほとんどみられなかった。しかし,中等度群・重度群においては,発症後期間がFIM利得・効率,在院日数に影響を及ぼすことが明らかとなった。その要因としては,酒向らの報告にもあるように急性期脳卒中47,768例のうち,リハビリ未施行は脳梗塞26.0%,脳出血25.1%,くも膜下出血49.0%であり,31%を占める中等症・重症例へのリハビリ介入が不十分であると報告されている。そのことからも,今回の結果においても急性期病院における中等度群・重度群へのリハ介入の不十分さが影響したものと推察される。つまり,中等度群・重度群においてはある程度全身状態管理が整えれば可及的早期に回復期病棟への転棟を図る連携の構築と,回復期病棟においても中等度・重度群に対して全身管理を踏まえた上での適切なリハビリテーションを提供できる体制の構築が必要と考えられる。今回の研究課題としては,意識障害や高次脳機能障害の程度を考慮しておらず,今後はその点も踏まえ検討していきたい
【理学療法学研究としての意義】
中等度・重度の脳卒中患者において発症後期間がFIM・在院日数に影響を及ぼすことが分かった。早期に中等度・重度の脳卒中患者を急性期病院より受け入れる体制の構築が必要と考えられる。