[P1-A-0305] 介護老人保健施設での包括的褥瘡ケアシステムの導入
システム導入1年経過時のフロア別問題点の検討
キーワード:介護老人保健施設, 褥瘡, 包括的ケアシステム
【はじめに】当施設では平成24年9月に包括的褥瘡ケアシステム(以下システム)を導入し,昨年の本学術大会で褥瘡の早期発見早期治癒の効果を報告した。課題として褥瘡予防が挙げられ,システム導入1年経過時に施設職員に対してシステムに関しアンケート調査を実施し,フロア別に課題が異なることが示唆され,第32回神奈川県理学療法士学会で報告予定である。今回は,フロア別の課題・対策を検討すべくフロア別の褥瘡経過・システムに関わる職員人事の検討を行った。
【方法】当施設は4フロアで,一般棟3フロア(以下2A32床・2B50床・3B28床),認知棟1フロア(以下3A40床)である。以下の項目につきフロア別に調査した。①褥瘡経過:対象は平成23年9月からの2年間の入所者491名(男性164名・女性327名,年齢83.1歳,介護度3.1)でシステム導入前1年間238名とシステム導入後1年間253名に分類し,年間褥瘡新規発生率(以下発生率:延べ入所者数に対する新規褥瘡発生者の割合),年間褥瘡治療数割合(以下治療者数:延べ入所者に対する治療者数の割合),年間繰り越し治療者数割合(以下繰り越し治療者数:総治療者数に対する治療が2ヶ月以上を要した治療者数の割合),これらは1年間を上半期と下半期に分けた。年間再発率(以下再発率:新規褥瘡発生者に対する治癒後に再発した者の割合),年間平均介護度(以下介護度),OHスケール重症度(以下重症度)を調査した。②システムに関わる職員の検討:職員80名を対象に,勉強会参加率,新入職員配置率を調査した。データは単純集計を行い百分率で示した。
【結果】発生率は2A導入前2.0%(上半期0.5%→下半期1.5%)・導入後4.4%(上半期0.7%→下半期3.6%)同様に2B導入前1.6%(0.8%→0.8%)・導入後2.0%(1.2%→0.8%)3B導入前1.4%(0.8%→0.5%)・導入後2.3%(0.5%→1.7%)3A導入前0.4%(0%→0.4%)・導入後3.9%(2.5%→1.4%),治療者数は2A導入前4.6%(1.8%→2.8%)・導入後7.0%(1.8%→5.2%)2B導入前5.6%(2.5%→3.1%)・導入後2.8%(2.0%→0.8%)3B導入前3.8%(2.3%→1.5%)・導入後2.6%(0.8%→1.7%)3A導入前0.8%(0%→0.8%)・導入後6.6%(4.5%→2.1%),繰り越し治療数は2A導入前2.6%(1.3%→1.3%)・導入後2.3%(1.0%→1.3%)2B導入前4.1%(1.6%→2.5%)・導入後0.8%(0.8%→0%)3B導入前2.0%(1.1%→0.9%)・導入後0.5%(0.5%→0%),3A導入前0.4%(0%→0.4%)・導入後2.7%(2.1%→0.6%),再発率は2A:35.2%,2B:33.3%,3B:12.5%,3A:15.7%,介護度は2A:2.6,2B:3.0,3B:3.1,3A:3.1,重症度は2A:3.4,2B:3.6,3B:3.2,3A:2.7,勉強会参加率は2A:33.3%,2B:34.7%,3B:50%,3A:28.5%,新入職員配置率は2A:22.2%,2B:17.3%,3B:5.5%,3A:9.5%であった。
【考察】3Bでは導入前・導入後,導入後上半期・下半期で発生率,治療者数,繰り越し治療者数が減少する結果となり,早期発見早期治癒の効果が得られている。さらに勉強会参加率は高く新入職員配置率が低いため,他フロアに比べ予防に対する知識技術が高く再発率は低く,システム導入効果が最も高かったと考えられる。2Aも早期発見報告の効果は得られたが,治療者数が増加,繰り越し治療者数はシステム導入前に比べ変化が無く再発率も高い結果であった。他の一般棟フロアと介護度・重症度は変わらないが,勉強会参加率は低く新入職員配置率が高い為,知識技術不足となり治療効果を遅らせ早期治癒に繋がっていないと考えられる。さらに,予防に対する知識・技術が不足し再発が多くなったと考えられる。2Bも早期発見早期治癒の効果が得られている。しかし再発率が高かった。勉強会参加率は低く新入職員配置率が高く,予防に対する知識・技術が不足し再発を引き起こしていると考えられる。認知棟である3Aも早期発見早期治癒の効果が得られており,再発率も抑える事ができている。勉強会参加率は最も低いが,新入職員配置率が低くフロア内でシステム内容の教育が円滑に行えていると考えられる。しかし,勉強会参加率は低く予防に対する知識・技術が十分ではないことから,再発を引き起こすリスクがあると考えられる。今後は,職員の知識・技術の向上,人事配置の検討等を行う必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】高齢者を対象とする理学療法分野である,介護老人保健施設全体で褥瘡に対する包括的な取り組みで成果をあげることは意義が大きい。
【方法】当施設は4フロアで,一般棟3フロア(以下2A32床・2B50床・3B28床),認知棟1フロア(以下3A40床)である。以下の項目につきフロア別に調査した。①褥瘡経過:対象は平成23年9月からの2年間の入所者491名(男性164名・女性327名,年齢83.1歳,介護度3.1)でシステム導入前1年間238名とシステム導入後1年間253名に分類し,年間褥瘡新規発生率(以下発生率:延べ入所者数に対する新規褥瘡発生者の割合),年間褥瘡治療数割合(以下治療者数:延べ入所者に対する治療者数の割合),年間繰り越し治療者数割合(以下繰り越し治療者数:総治療者数に対する治療が2ヶ月以上を要した治療者数の割合),これらは1年間を上半期と下半期に分けた。年間再発率(以下再発率:新規褥瘡発生者に対する治癒後に再発した者の割合),年間平均介護度(以下介護度),OHスケール重症度(以下重症度)を調査した。②システムに関わる職員の検討:職員80名を対象に,勉強会参加率,新入職員配置率を調査した。データは単純集計を行い百分率で示した。
【結果】発生率は2A導入前2.0%(上半期0.5%→下半期1.5%)・導入後4.4%(上半期0.7%→下半期3.6%)同様に2B導入前1.6%(0.8%→0.8%)・導入後2.0%(1.2%→0.8%)3B導入前1.4%(0.8%→0.5%)・導入後2.3%(0.5%→1.7%)3A導入前0.4%(0%→0.4%)・導入後3.9%(2.5%→1.4%),治療者数は2A導入前4.6%(1.8%→2.8%)・導入後7.0%(1.8%→5.2%)2B導入前5.6%(2.5%→3.1%)・導入後2.8%(2.0%→0.8%)3B導入前3.8%(2.3%→1.5%)・導入後2.6%(0.8%→1.7%)3A導入前0.8%(0%→0.8%)・導入後6.6%(4.5%→2.1%),繰り越し治療数は2A導入前2.6%(1.3%→1.3%)・導入後2.3%(1.0%→1.3%)2B導入前4.1%(1.6%→2.5%)・導入後0.8%(0.8%→0%)3B導入前2.0%(1.1%→0.9%)・導入後0.5%(0.5%→0%),3A導入前0.4%(0%→0.4%)・導入後2.7%(2.1%→0.6%),再発率は2A:35.2%,2B:33.3%,3B:12.5%,3A:15.7%,介護度は2A:2.6,2B:3.0,3B:3.1,3A:3.1,重症度は2A:3.4,2B:3.6,3B:3.2,3A:2.7,勉強会参加率は2A:33.3%,2B:34.7%,3B:50%,3A:28.5%,新入職員配置率は2A:22.2%,2B:17.3%,3B:5.5%,3A:9.5%であった。
【考察】3Bでは導入前・導入後,導入後上半期・下半期で発生率,治療者数,繰り越し治療者数が減少する結果となり,早期発見早期治癒の効果が得られている。さらに勉強会参加率は高く新入職員配置率が低いため,他フロアに比べ予防に対する知識技術が高く再発率は低く,システム導入効果が最も高かったと考えられる。2Aも早期発見報告の効果は得られたが,治療者数が増加,繰り越し治療者数はシステム導入前に比べ変化が無く再発率も高い結果であった。他の一般棟フロアと介護度・重症度は変わらないが,勉強会参加率は低く新入職員配置率が高い為,知識技術不足となり治療効果を遅らせ早期治癒に繋がっていないと考えられる。さらに,予防に対する知識・技術が不足し再発が多くなったと考えられる。2Bも早期発見早期治癒の効果が得られている。しかし再発率が高かった。勉強会参加率は低く新入職員配置率が高く,予防に対する知識・技術が不足し再発を引き起こしていると考えられる。認知棟である3Aも早期発見早期治癒の効果が得られており,再発率も抑える事ができている。勉強会参加率は最も低いが,新入職員配置率が低くフロア内でシステム内容の教育が円滑に行えていると考えられる。しかし,勉強会参加率は低く予防に対する知識・技術が十分ではないことから,再発を引き起こすリスクがあると考えられる。今後は,職員の知識・技術の向上,人事配置の検討等を行う必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】高齢者を対象とする理学療法分野である,介護老人保健施設全体で褥瘡に対する包括的な取り組みで成果をあげることは意義が大きい。