[P1-A-0308] 高齢者の身体機能評価における介護度要因分析
Keywords:身体機能評価, 介護度要因分析, 身体柔軟性
【はじめに,目的】我が国では急速な高齢化が進んでおり,2013年の65歳以上の高齢者人口は,総人口の25.1%で過去最高となっており,それに伴い,要支援・要介護認定を受けた高齢者は2000年の256万人から2010年は506万人となり,10年間で倍増している。要介護認定を受けている者であっても,介護度の悪化を防ぎ予防することは重要である。そのため,身体機能評価は重要視されており,身体的虚弱理学療法診断ガイドラインにおいて,筋力・歩行スピード・バランス・柔軟性(共に推奨グレードA~B)等の評価を推奨している。身体機能とADL能力は密接に関係しており,要介護認定調査においても身体機能の項目が含まれている。しかし,身体機能と介護度との関連性は明確でなく研究報告等も少ない。そこで本研究は,身体機能に着目し,介護度の要因を分析することを目的とした。
【方法】対象は当苑デイサービス利用中で,FIMの歩行項目が6点以上の46名(要支援1:12名,要支援2:12名,要介護1:12名,要介護2:10名,男性10名,女性36名,平均年齢86±5歳)である。このうち,要支援(1,2)を要支援群,要介護(1,2)を要介護群として分類した。なお,脳卒中や神経疾患,骨関節疾患,認知症等により計測が困難な者は対象から除外した。身体機能評価として長座体前屈,Functional Reach Test(以下FR),10m歩行度,Timed up and go test(以下TUG)を計測した。長座体前屈は文部科学省の推奨する「新体力テスト」の計測方法を採用した。統計学的分析は要支援群と要介護群の各評価項目の比較にMann WhitneyのU検定を用い,各指標の相関分析にSpearmanの順位相関係数を行った。その後ロジスティック回帰分析を行い要介護度に関連する要因を検討した。またカットオフ値を算出するためROC曲線を用い検証した。統計処理には統計ソフトR-2.8.1を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】要支援群と要介護群との比較において,長座体前屈では,要支援群27.9±5.6cm,介護群21.9±4.8cm(P<0.001),FRでは,要支援群18.94±4.15cm,要介護群15.75±3.87cm(P<0.01),TUGでは,要支援群14.99±4.59秒,要介護群19.35±5.75秒(P<0.01),10m歩行速度では,要支援群13.64±3.87秒,要介護群17.84±6.31秒(P<0.01)であり,要支援群において有意に高値を示した。Spearmanの順位相関係数の結果から,長座体前屈とFRの結果は有意な正の相関を認め,長座体前屈と10m歩行速度・TUGの結果は有意な負の相関を認めた。また,ロジスティック回帰分析の結果として長座体前屈が採用された。オッズ比は1.24(95%信頼区間1.08-1.42,P<0.01)であり判定的中率は69.6%であった。ROC曲線により長座体前屈のカットオフ値を算出した結果26cmであり,感度は0.67特異度は0.76であった。
【考察】ロジスティック回帰分析の結果から,要介護度に関連する因子として抽出されたのは長座体前屈であった。また,ROC曲線から26cmというカットオフ値を抽出した。先行研究より長座体前屈は股関節のみならず体幹腰背部の柔軟性を示し,柔軟性はバランス能力や歩行能力との関連性が高いとの報告がある。今回の結果も同様の結果となった。長座体前屈は多くの骨関節系や靭帯構造と関連しているとの報告もあるため,これらの機能を必要とするADL動作に影響が出ることが考えられる。長座体前屈は,比較的安全に実施できる評価として,推奨グレードが高いだけでなく要支援群と要介護群を分ける一つの指標となることが示唆された。今回は身体機能に着目し,要支援と要介護に関連する要因を検討したが,今後は,疾患,認知機能,活動評価,ADL,IADL,世帯構成等の要因も踏まえ調査していくことが必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】要支援群と要介護群の要因分析をした結果,長座体前屈が重要であることが示唆された。長座体前屈は高齢者においても簡易的かつ安全に実施することが可能であり,介護予防や介護度判定の一助になり得る可能性がある。
【方法】対象は当苑デイサービス利用中で,FIMの歩行項目が6点以上の46名(要支援1:12名,要支援2:12名,要介護1:12名,要介護2:10名,男性10名,女性36名,平均年齢86±5歳)である。このうち,要支援(1,2)を要支援群,要介護(1,2)を要介護群として分類した。なお,脳卒中や神経疾患,骨関節疾患,認知症等により計測が困難な者は対象から除外した。身体機能評価として長座体前屈,Functional Reach Test(以下FR),10m歩行度,Timed up and go test(以下TUG)を計測した。長座体前屈は文部科学省の推奨する「新体力テスト」の計測方法を採用した。統計学的分析は要支援群と要介護群の各評価項目の比較にMann WhitneyのU検定を用い,各指標の相関分析にSpearmanの順位相関係数を行った。その後ロジスティック回帰分析を行い要介護度に関連する要因を検討した。またカットオフ値を算出するためROC曲線を用い検証した。統計処理には統計ソフトR-2.8.1を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】要支援群と要介護群との比較において,長座体前屈では,要支援群27.9±5.6cm,介護群21.9±4.8cm(P<0.001),FRでは,要支援群18.94±4.15cm,要介護群15.75±3.87cm(P<0.01),TUGでは,要支援群14.99±4.59秒,要介護群19.35±5.75秒(P<0.01),10m歩行速度では,要支援群13.64±3.87秒,要介護群17.84±6.31秒(P<0.01)であり,要支援群において有意に高値を示した。Spearmanの順位相関係数の結果から,長座体前屈とFRの結果は有意な正の相関を認め,長座体前屈と10m歩行速度・TUGの結果は有意な負の相関を認めた。また,ロジスティック回帰分析の結果として長座体前屈が採用された。オッズ比は1.24(95%信頼区間1.08-1.42,P<0.01)であり判定的中率は69.6%であった。ROC曲線により長座体前屈のカットオフ値を算出した結果26cmであり,感度は0.67特異度は0.76であった。
【考察】ロジスティック回帰分析の結果から,要介護度に関連する因子として抽出されたのは長座体前屈であった。また,ROC曲線から26cmというカットオフ値を抽出した。先行研究より長座体前屈は股関節のみならず体幹腰背部の柔軟性を示し,柔軟性はバランス能力や歩行能力との関連性が高いとの報告がある。今回の結果も同様の結果となった。長座体前屈は多くの骨関節系や靭帯構造と関連しているとの報告もあるため,これらの機能を必要とするADL動作に影響が出ることが考えられる。長座体前屈は,比較的安全に実施できる評価として,推奨グレードが高いだけでなく要支援群と要介護群を分ける一つの指標となることが示唆された。今回は身体機能に着目し,要支援と要介護に関連する要因を検討したが,今後は,疾患,認知機能,活動評価,ADL,IADL,世帯構成等の要因も踏まえ調査していくことが必要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】要支援群と要介護群の要因分析をした結果,長座体前屈が重要であることが示唆された。長座体前屈は高齢者においても簡易的かつ安全に実施することが可能であり,介護予防や介護度判定の一助になり得る可能性がある。