[P1-A-0353] 臨床実習の段階的経験に伴っておこる意欲の低下について
キーワード:臨床実習, 意欲低下, 段階的経験
【はじめに,目的】
臨床実習(以下,実習)は,理学療法士に必要な臨床的知識・技術・態度について学ぶ機会として大変重要である。しかしながら,学生の意欲が低下していくことが実習進行の妨げとなり,実習が円滑に進行しない事例もある。それゆえに,常に意欲を持って臨むことが,実習の成果を左右する要因に成り得ると考えられる。そこで,今回我々は実習中の学生がどのような要因によって意欲が低下するのかについて,実習終了後のアンケートで調査した。特に,実習が段階的に進行するに従って,要因がどのように変化するのかについて結果を分析し考察したので報告する。
【方法】
本校理学療法学科(3年制課程・夜間部)の過去2年間の学生66名(平均年齢29.5±5.5歳)を対象とした。調査には独自に作成したアンケート用紙を用いた。調査内容は,実習中の不安(11項目)や意欲の変化(意欲低下12項目,意欲向上12項目)に関する全35項目に対し,「強く思う」,「思う」,「そう思わない」,「強く思わない」の4件法で回答を得た。その中で意欲が低下する場面を想定した12項目(症例数が多くなる,課題が多くなる,叱責される,認めてもらえない,指導内容が理解できない,見学ばかりの時,課題が重なった時,治療が上手くいかなかったとき,指導者とのコミュニケーションが取りにくい時,指導やフィードバックが少ない時,指導者の患者に対する態度が悪い時,患者と上手く関わりが持てない時)について,「強く思う」,「思う」を「思う群」とし,「そう思わない」,「強く思わない」を「思わない群」の2群化し,分析した。調査時期は2年次の最終学年実習前に1回,最終学年の3年次は3週間の短期実習後に1回,8週間の長期実習後に2回の合計4回とした。また3年次最終期の実習後では,総括として実習全体を通じて意欲の変化について自由記載を行った。
【結果】
各実習時期において「思う群」で割合の高かった上位3項目は,2年次では,「指導者の患者に対する態度が悪い時」90.9%,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」87.9%,「患者と上手く関わりが持てない時」72.7%であった。
短期実習後では,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」93.9%,「指導者の患者に対する態度が悪い時」92.4%,「指導内容が理解できない」86.4%であった。
1回目の長期実習では,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」93.9%,「指導内容が理解できない」90.9%,「指導者の患者に対する態度が悪い時」89.4%であった。
2回目の長期実習では,「指導者の患者に対する態度が悪い時」98.5%,「指導内容が理解できない」93.9%,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」90.9%であった。
また,実習時期の段階的経験に伴う変化について,Kruskal-wallis検定を利用して比較した結果,「叱責される」,「認めてもらえない」,「指導内容が理解できない」「患者とうまく関わりが持てない時」の項目で有意な増加がみられた。(P<0.05)
自由記載では,質問に答えられない時,治療効果が出ない時に意欲が低下する回答もあったが,指導者と話すタイミングが分からない,コミュニケーションが取れない等,指導者との対人的要因に関した回答が多くみられた。
【考察】
今回の結果から,実習に臨む学生の意欲を低下させる因子として,指導者との関係性が重要であることが明らかとなった。また,患者との関係性も含めた対人的要因が複数挙げられ,学生の内発的意欲を抑制する一因と考えられる。これらの要因は,実習の経験値が増大するにつれて,不安要素としても増大していることが特徴的であった。自由記載の結果からも,指導者や患者との関係性で生じた課題に対して,自己での解決策が見出せず内発的意欲を抑制している現状がみられた。また,「指導者の患者に対する態度が悪い時」が常に上位項目であったことは興味深い結果であった。
学生にとっては,毎回の実習環境は未知であり,それまでの経験を活かす事よりも,新たな環境に順応し,関係性を構築することに多くの労力を費やしていることが窺われ,養成校を含めた実習施設間,指導者間での十分な情報交換の必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
実習の段階的経験に伴う意欲の低下について調査した結果,対人的要因が大きく影響を及ぼす因子であることが示唆され,養成校を含めた実習施設間,指導者間の情報交換によって,より円滑に学生指導を行う一助となると考えられる。
臨床実習(以下,実習)は,理学療法士に必要な臨床的知識・技術・態度について学ぶ機会として大変重要である。しかしながら,学生の意欲が低下していくことが実習進行の妨げとなり,実習が円滑に進行しない事例もある。それゆえに,常に意欲を持って臨むことが,実習の成果を左右する要因に成り得ると考えられる。そこで,今回我々は実習中の学生がどのような要因によって意欲が低下するのかについて,実習終了後のアンケートで調査した。特に,実習が段階的に進行するに従って,要因がどのように変化するのかについて結果を分析し考察したので報告する。
【方法】
本校理学療法学科(3年制課程・夜間部)の過去2年間の学生66名(平均年齢29.5±5.5歳)を対象とした。調査には独自に作成したアンケート用紙を用いた。調査内容は,実習中の不安(11項目)や意欲の変化(意欲低下12項目,意欲向上12項目)に関する全35項目に対し,「強く思う」,「思う」,「そう思わない」,「強く思わない」の4件法で回答を得た。その中で意欲が低下する場面を想定した12項目(症例数が多くなる,課題が多くなる,叱責される,認めてもらえない,指導内容が理解できない,見学ばかりの時,課題が重なった時,治療が上手くいかなかったとき,指導者とのコミュニケーションが取りにくい時,指導やフィードバックが少ない時,指導者の患者に対する態度が悪い時,患者と上手く関わりが持てない時)について,「強く思う」,「思う」を「思う群」とし,「そう思わない」,「強く思わない」を「思わない群」の2群化し,分析した。調査時期は2年次の最終学年実習前に1回,最終学年の3年次は3週間の短期実習後に1回,8週間の長期実習後に2回の合計4回とした。また3年次最終期の実習後では,総括として実習全体を通じて意欲の変化について自由記載を行った。
【結果】
各実習時期において「思う群」で割合の高かった上位3項目は,2年次では,「指導者の患者に対する態度が悪い時」90.9%,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」87.9%,「患者と上手く関わりが持てない時」72.7%であった。
短期実習後では,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」93.9%,「指導者の患者に対する態度が悪い時」92.4%,「指導内容が理解できない」86.4%であった。
1回目の長期実習では,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」93.9%,「指導内容が理解できない」90.9%,「指導者の患者に対する態度が悪い時」89.4%であった。
2回目の長期実習では,「指導者の患者に対する態度が悪い時」98.5%,「指導内容が理解できない」93.9%,「指導者とのコミュニケーションが取りにくい時」90.9%であった。
また,実習時期の段階的経験に伴う変化について,Kruskal-wallis検定を利用して比較した結果,「叱責される」,「認めてもらえない」,「指導内容が理解できない」「患者とうまく関わりが持てない時」の項目で有意な増加がみられた。(P<0.05)
自由記載では,質問に答えられない時,治療効果が出ない時に意欲が低下する回答もあったが,指導者と話すタイミングが分からない,コミュニケーションが取れない等,指導者との対人的要因に関した回答が多くみられた。
【考察】
今回の結果から,実習に臨む学生の意欲を低下させる因子として,指導者との関係性が重要であることが明らかとなった。また,患者との関係性も含めた対人的要因が複数挙げられ,学生の内発的意欲を抑制する一因と考えられる。これらの要因は,実習の経験値が増大するにつれて,不安要素としても増大していることが特徴的であった。自由記載の結果からも,指導者や患者との関係性で生じた課題に対して,自己での解決策が見出せず内発的意欲を抑制している現状がみられた。また,「指導者の患者に対する態度が悪い時」が常に上位項目であったことは興味深い結果であった。
学生にとっては,毎回の実習環境は未知であり,それまでの経験を活かす事よりも,新たな環境に順応し,関係性を構築することに多くの労力を費やしていることが窺われ,養成校を含めた実習施設間,指導者間での十分な情報交換の必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
実習の段階的経験に伴う意欲の低下について調査した結果,対人的要因が大きく影響を及ぼす因子であることが示唆され,養成校を含めた実習施設間,指導者間の情報交換によって,より円滑に学生指導を行う一助となると考えられる。