第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習3

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0363] 臨床実習時のスレトス反応とストレスコーピングとの関係について

鈴木学1, 細木一成2, 北村達夫2 (1.群馬パース大学保健科学部理学療法学科, 2.千葉柏リハビリテーション学院理学療法学科)

Keywords:臨床実習, ストレス反応, ストレスコーピング

【はじめに,目的】近年,理学療法士養成校では臨床実習中の心理的ストレス反応による情動的,認知的,行動的変化によって実習遂行に支障をきたす学生が増加している。これらのストレスがコーピングによって如何に対処できるか否かが臨床実習の継続に重要である。先行研究で加藤は,ネガティブ関係のコーピングの使用によりストレス反応は増加する,といい,上地らは看護学生では接近型の効果的なコーピングより回避型の消極的なコーピングを行う傾向にあり,効果的なコーピングを行う必要性が示唆された,と報告している。しかし,理学療法学生の臨床実習でのストレスの程度とコーピングとの関連に関する報告は少ない。本研究では理学療法学生が臨床実習で体験するストレスの程度とストレスコーピングのタイプの程度との関連を明らかにし,臨床実習における教員の指導の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は8週間の総合臨床実習を遂行した理学療法士養成校2校の4年生88名(男性56名,女性32名),年齢22.5±3.5歳とし,実習終了後に心理的ストレス反応測定尺度(Stress Response Scale-18=SRS-18)およびラザルス式ストレス コーピング インベントリー(Stress Coping Inventory=SCI)を実施した。SRS-18は実習期間中の最大ストレス体感時期での心理的状態を回想し,マニュアルに沿って18項目の質問に対して0(否定)~3(肯定)の4段階評価とした。質問内容から3タイプのストレス反応(抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力)の得点(MAX=18点)を算出し,それらの合計点数を総合的ストレス反応の得点とした。そして最大得点を呈した反応を当該学生の主たるストレス反応に設定した。SCIは実習中での最大のストレス時期での行動を回想し,マニュアルに沿って64項目の質問に対する回答を0点(否定)~2点(肯定)の3段階評価とした。質問内容から8タイプ(計画型,対決型,社会支援模索型,責任受容型,自己コントロール型,逃避型,離隔型,肯定評価型)のストレスコーピングの得点を算出した。統計処理は1元配置分散分析にて主たるストレス反応での各ストレスコーピングの得点の差異を検討した。さらにPeasonの積率相関分析にて心理的ストレス反応の程度とストレスコーピングタイプの程度との関係を検討した。統計ソフトはSPSS statistictis20を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】検査には88名全員が回答した。実習中での最大ストレス体感時期は3.31±2.28週であった。ストレス反応は抑うつ反応9.97±5.20点,不機嫌・怒り反応8.20±4.41点,無気力反応10.18±4.47点,総合ストレス反応は28.35±12.55点であった。主たるストレス反応は抑うつ・不安24.5%,不機嫌・怒り14.3%,無気力34.78%,その他26.5%であった。使用されていたストレスコーピングは計画型8.23±3.17点,対決型5.68±2.51点,社会的支援模索型4.92±2.63点,責任受容型9.82±3.19点,自己コントロール型8.45±2.86点,逃避型5.73±2.45点,離隔型5.58±3.08点,肯定評価型9.59±3.48点であった。主たるストレス反応によるコーピングの使用に有意な差異はみられなかった。ストレス反応とコーピングとの関係では対決型と逃避型は全ストレス反応および総合ストレス反応との間に有意な正の相関がみられ,計画型は抑うつ反応,無気力反応,総合ストレス反応との間,肯定評価型は無気力反応,総合ストレス反応との間に有意な負の相関がみられた(p<0.05)。社会支援模索型,自己コントロール型,離隔型は各ストレス反応および総合ストレス反応との間に有意な相関はみられなかった。
【考察】実習によるストレス反応の程度で逃避型や責任受容型のようなネガティブなコーピングの使用に正の関係があり,計画型や肯定評価型のようなポジティブなコーピングには負の関係が生じやすいことが示唆された。特に無気力反応では他の反応よりもネガティブ反応と強い正の関係,およびポジティブ反応と強い負の関係が生じやすい傾向にあり,ストレスの増加が臨床実習の継続に対してマイナスに作用する可能性があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】実習期間に発生するストレスのタイプとコーピングの関係を把握することは実習中での教員や実習指導員のサポート方法を考慮する一助になるものと考えられた。