第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター1

神経/脳損傷1

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0036] 左延髄梗塞により病巣側側方ならびに前方への身体偏倚を呈した症例

澤田明彦 (七沢リハビリテーション病院脳血管センター)

キーワード:身体定位, 筋緊張, 体性感覚

【目的】延髄梗塞にみられる側方突進に代表される身体定位の混乱は,立位の回復を妨げる。症例は側方のみならず前方にも身体偏倚を示し立位保持不能であったが,50病日を経て監視下での開脚立位保持やプラットホームマットからの起立着座が可能となった。
【症例提示】66歳男性。浮動性めまいで発症。救急入院後,左顔面神経麻痺と左失調症状が出現・増悪した。2病日のMRIにて左延髄外側梗塞を指摘。保存的に加療されるとともに4病日から理学療法を受けた。29病日に当院に入院した。

高次脳機能障害所見なし。コミュニケーション良好。顔面麻痺の構音への影響はない。吃逆あり。左Horner徴候・肢節失調・体幹を含む筋緊張低下を認めた。感覚障害は右温痛覚(顔面軽度鈍麻・頸部上下肢脱失),左触覚(上下肢軽度鈍麻),左深部覚(上下肢重度鈍麻),左下腿温痛覚(脱失)にみられた。深部反射亢進はなく,筋伸展性亢進は左肩甲-胸廓間・腹部・股関節屈筋でみられた。背臥位で左下肢は他動的屈曲に対して抵抗を示した。筋力は右5・左4の水準。座位・立位では左足に浮遊感がみられた。

座位で体幹は左へ傾き,左肩は挙上していた。上肢支持への依存が強かった。起立着座では左側前方に傾くため介助による修正を要した。介助立位で右荷重を誘導すると正中を越えなくとも「すごく右に傾いている」と感じることから,自覚的垂直位は病巣側に傾斜しているものと考えられた。
【経過と考察】変動はあるもののプラットホームマットからの起立着座が監視下で行えるようになった。立位で体幹の傾きは減少し,右下肢が床面に対して概ね垂直となった。筋緊張や左下肢の浮遊感にも改善がみられた。

身体定位の問題は視覚系・体性感覚系・前庭系の情報の誤りやそれらの間に齟齬によって起こる。症例の場合には,筋緊張の改善を含めて体性感覚情報が変化し,身体図式の誤認が減ることで身体定位の改善につながったのではないかと考える。