第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター1

神経/脳損傷1

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0039] 急性大動脈解離Stanford Aで脳梗塞を合併し,保存的加療となったが,その後血栓開存となった症例に対する理学療法

井出篤嗣1, 石田由佳1, 前野里恵1, 高橋素彦2 (1.横浜市立市民病院リハビリテーション部, 2.横浜市立市民病院リハビリテーション科)

Keywords:急性大動脈解離Stanford A, 脳梗塞, 理学療法

【目的】
急性大動脈解離Stanford Aで脳梗塞を合併し,保存的加療となった症例に対して理学療法(PT)を実施した。経過中にULP(Ulcer like Projection)が出現し,その後血栓開存となった。動脈破裂のリスクが高い状況下で,PTは全介助での車椅子乗車を目標にすすめたが,そのPT内容について検討したい。
【症例提示】
70歳代後半の女性。BMI28.3。高血圧の既往あり。入院前生活は独歩でADL自立。X日意識消失で当院入院。急性大動脈解離StanfordAと脳梗塞合併と診断。血栓閉塞型で右腕頭動脈と左総頚動脈まで解離。大動脈弓部径38mm,偽腔径15mm。D-ダイマー9.43μg/dl,CRP0.1 mg/dl。軽度の大動脈弁閉鎖不全症あり。脳梗塞は右中大脳動脈領域で広範囲。
PT介入時は脳浮腫,無気肺あり。CRP5.0 mg/dl。尿量20~60ml/h。KT38.0℃,末梢冷感あり。JCSI桁,簡単な会話可能,左半側空間無視,非麻痺側での過活動あり。軽度四肢浮腫。左Br.StageI-I-II。表在・深部感覚とも左上下肢ほぼ脱失。薬剤は抗血小板薬,脳保護薬,鎮痛薬,降圧薬,利尿薬等。
【経過と考察】
X+4:一過性脳虚血症状。X+5:PT開始。X+6:上行大動脈径軽度拡大,心嚢水貯留あり。X+7:全介助での腰掛け座位練習開始,血圧安定。X+11:リクライニング型車椅子乗車開始。X+19:上行大動脈にULP確認。X+26:Tilt Tableでの立位練習開始。X+32:ULP開存を確認・大動脈径52mm。全介助での普通型車椅子乗車継続。X+58:他院転院。
急性大動脈解離を伴わない脳梗塞後のPTであれば,装具装着下での立位・歩行練習を視野に入れるところ,経過中のULPの確認で,致命的となりうるリスクが高い状態であると判断した。そのため,非麻痺側での過活動による血圧上昇を考慮して,Tilt Tableを使用した立位練習までに留めた。結果として全介助での車椅子乗車が目標となったが,実施できうるPT内容とリスク管理の判断に難渋した症例であった。