第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

症例研究 ポスター4

神経/脳損傷4

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0058] 抗NMDA受容体脳炎患者に対するリハビリテーション介入

理学療法経過及び運動機能評価

松丸純佳1, 遠原まりえ1, 軽部敦子1, 岡部早苗1, 辺土名隆1, 福田倫也1, 金子淳太郎2, 西山和利2 (1.北里大学病院リハビリテーション部, 2.北里大学医学部神経内科学)

Keywords:抗NMDA受容体脳炎, 運動機能, 認知機能

【目的】
自己免疫性脳炎の一群である抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎の理学療法経過及び経時的運動機能評価を報告することを目的とする。

【症例提示】
20歳代,男性。会社で倒れているところを発見され他院へ入院。7病日より精神症状出現,12病日より不随意運動などが増悪,16病日より無反応・無動となった。46病日に当院へ転院,ステロイドパルス療法などの免疫治療を施行。当院でのリハビリテーション(リハ)は48病日より介入した。

【経過と考察】
リハ開始時GCSはE3V1M6であり自発的な運動は乏しいが簡単な運動従命は可能。上下肢とも筋萎縮著明。日常生活動作(ADL)はベッド上全介助。51病日より離床開始。65病日より立位練習,78病日より歩行練習開始。123病日に独歩獲得しADL自立となった。運動機能評価として115病日にハンドヘルドダイナモメーターを用いた大腿四頭筋筋力測定と10m歩行テストを施行した。大腿四頭筋筋力体重比(%BW)が右35.4%,左29.1%であり(20歳代平均値は約70%),10m歩行テストは快適10.9秒,最大8.3秒であった。転院前評価(165病日)における同%BWは右44.1%,左40.6%,10m歩行テストは快適8.6秒,最大5.9秒であった。筋力は改善傾向だが同年代平均よりは低値であった。転院時のウエクスラー記憶検査は言語性記憶50以下,動作性記憶84であり記憶障害も残存した。168病日にリハ継続目的にて転院となった。抗NMDA受容体脳炎は若年に多く発症する希少疾患であり治療法は十分には確立されていない。約6割が完全回復または軽度認知障害を残すのみまで回復すると報告されている。理学療法の介入報告は本邦では極めて少なく理学療法の経過や運動機能について不明な点が多い。本症例ではADL自立後も筋力低下及び認知障害が残存した。理学療法の関わりとして,臥床期間を最小限にし,病期に即した運動療法を実施,また社会復帰に繋げるため他職種との連携が必要だと考えられる。