第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター5

神経/脊髄損傷・その他

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0065] 慢性的な痺れ,冷感に対する視野偏位プリズム順応療法の効果

高橋幸司, 強瀬敏正, 赤塚友理, 鈴木英二 (一成会さいたま記念病院リハビリテーションセンター)

Keywords:プリズム順応療法, 身体帰属感, 皮膚温

【目的】慢性的な痺れと冷感に対し,視野偏位プリズム順応療法を施行した。結果,手部皮膚温に著効を示した症例に関し,経過,考察を加え以下に報告する。
【症例提示】80歳代女性。3年前より,両手部に痺れ,冷感が出現。頸髄症の診断で頸椎拡大固定術を施行したが,痺れは術前と同じ程度残存。物理療法,運動療法,感覚識別課題を実施したが変化なく,術後2ケ月時点で,主訴の痺れ,冷感に対しプリズムレンズ(視野を18°右に偏位)を使用したプリズム順応療法を2週間実施した。
【経過と考察】プリズム順応療法施行前,痺れは右NRS5/10,左NRS7/10,neglect like symptoms(NLS)右186/500(motor neglect:MN 133/300,cognitive neglect:CN 53/200),左270/500(MN 155/300,CN 115/200),2点識別覚(右/左mm)は手背70/68,右手掌15/21,線分2等分試験は18.3mm右に偏位,皮膚温(右/左℃)は手背30.8/30.2,手掌31.1/30.6,第3指腹27.8/25.4であった。
2週後,痺れは右NRS5/10,左NRS6/10,NLS右142/500(MN 133/300,CN 9/200),左144/500(MN 100/300,CN 44/200),2点識別覚(右/左mm)は手背15/24,手掌9/15,線分2等分試験は5.7mm右に偏位,皮膚温(右/左℃)は手背30.67/31.0,手掌32.07/31.93,第3指腹30.73/30.27となり,痺れと冷感の訴えはなくなった。
プリズム順応療法で皮膚温が著明に改善した。自己身体の帰属感の喪失により,身体部位の皮膚温が低下すると報告されており(Moseley2008),本症例では,NLS,2点識別覚の結果から自己身体の帰属感の低下,皮膚温が低下していたと考えられる。住谷らはCRPS患者に対するプリズム順応の効果を報告しており,本症例でも視覚情報と体性感覚情報が再統合され,身体帰属感の向上から自律神経系が回復し,皮膚温が上昇したと考えられる。本症例を通じ,慢性的な疼痛や痺れから知覚-運動ループが破綻している症例に対し,プリズム順応療法の適応を考慮することは臨床上有意義であると考えられる。