第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

調査研究 ポスター1

調査研究

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0081] 理学療法診療ガイドラインに関する調査研究

評価用チェックリストAGREE IIを用いたガイドラインの質の評価

木内隆裕1, 大寺祥佑2, 金澤星慶3,4, 法田奈津子5, 中山健夫5 (1.森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科, 2.医療法人鉄蕉会亀田総合病院医療管理本部品質管理部, 3.東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻, 4.日本学術振興会特別研究員, 5.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)

キーワード:EBM, ガイドライン, AGREE

【目的】
日本理学療法士協会は2011年に「理学療法診療ガイドライン第1版」(以下,PTガイドライン)を発表した。このガイドラインは,16の疾患・領域に分かれており,「理学療法の標準化」,「理学療法を提供する会員および医療関係者に有益な情報源」,「患者への還元」等を期待して作成されている。これらはガイドラインの一般的な存在意義と合致しており,科学的根拠に基づく理学療法の実践の礎となるであろう。しかし,現時点で,PTガイドラインの「質」について第三者による評価が報告されておらず,臨床現場や教育現場における利用,あるいは患者自身の知識向上のために要求される事項をどの程度満たしているかは明確でない。本研究の目的は,PTガイドラインの質を評価し,今後の改訂における改善点を提案することである。
【方法】
診療ガイドラインの質の評価には,国際標準であるAGREE II(Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation instrument version II)を用いた。PTガイドラインについて,4人の評価者が独立してAGREE IIによる評価を行い,領域別スコア(6項目)を算出した。
【結果と考察】
16件の診療ガイドラインの領域別スコアの中央値は,対象と目的:42%,利害関係者の参加:34%,作成の厳密さ:31%,提示の明確さ:24%,適用可能性:7%,編集の独立性:19%であった。また,総合的には16件すべてが「推奨するが,修正が必要」と評価され,推奨されないガイドラインは存在しなかった。本結果は,PTガイドラインが他領域のガイドラインと比較しても特に劣ってはいないことを示している。現時点で,PTガイドラインは臨床に携わる理学療法士にとって重要な情報源であり,十分に価値があるものと考えられる。その一方で,改善可能な点も多く,今後のさらなる質向上による活用の拡大を期待したい。