[P1-B-0112] 階段降段動作における中殿筋・大内転筋の筋活動について
キーワード:階段降段動作, 中殿筋, 大内転筋
【はじめに,目的】
第25回大阪府理学療法学術大会にて階段降段動作と片脚スクワットの制御降下における各筋の筋活動の比較についての発表をする機会を得た。階段降段動作の制御降下において支持側大内転筋の筋活動が有意に増大し,制御降下での骨盤下制に対して骨盤の前額面上の安定に寄与していることへ示唆が与えられたことを報告した。臨床において階段降段動作では片脚支持へ移行するため骨盤下制の制動に支持側中殿筋の活動が必要となるが,位相のどのタイミングで支持側大内転筋の筋活動が生じるかは明確ではない。そこで,本研究では階段降段動作の1周期間での支持側中殿筋・大内転筋の筋活動が必要となる位相を明確にするため,また支持側中殿筋・大内転筋の筋活動のパターン分類についての検討を行った。その結果,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は健常男性10名(24.9±1.3歳)とし,課題は2足1段の階段降段動作を実施した。階段降段動作の段差は蹴上げ20cm,踏み面25cmのものを用いた。測定機器はテレメトリー筋電計(キッセイコムテック社製),ビデオカメラを用い,導出筋は支持側の中殿筋,大内転筋としサンプリング周波数を1000Hzで各対象者3回ずつの測定を行った。得られた課題の波形から筋電図積分値を算出し比較を行った。
【結果】
階段降段動作での支持側中殿筋の筋活動は支持脚への体重移動を行い,対側下肢を前方へ振り出している際に生じるのに対して,支持側大内転筋の筋活動は支持側中殿筋の活動が生じた後,支持脚膝関節屈曲が生じる時点から支持脚の足尖が段上段より離れるまでの間で筋活動が生じた。波形のパターンでは30例とも共通して上述した位相での支持側中殿筋,内転筋それぞれの筋活動を認めた。また,30例中,18例では支持側中殿筋・大内転筋の筋活動量が同等だったのに対して12例では支持側大内転筋の筋活動が支持側中殿筋よりも大きく生じていた。
【考察】
中殿筋の筋活動については,対側下肢の振り出しのために支持側下肢への体重移動,片脚支持を保持するために筋活動が生じたと考えられる。大内転筋の筋活動について,解剖学的に大内転筋の起始は,深層では恥骨下枝・坐骨枝から,表層は坐骨結節から起始する。停止は深層では大腿骨後面の粗線,表層では内転筋結節に付着する。この解剖学的な筋の走行から大内転筋は股関節伸展・内転作用を有しており,階段降段動作制御降下の股関節屈曲・外転制御を担ったのではないかと考えられる。また,広筋内転筋腱板には内側広筋が付着し,膝関節屈曲制動に対して内側広筋の出力発揮のための起始部の安定性の増大にも寄与したことが考えられる。波形のパターンでは30例中,18例では支持側中殿筋・大内転筋の筋活動量が同等であり,筋の適切な出力の切り替えが必要になることが考えられる。12例においては支持側大内転筋の筋活動が支持側中殿筋よりも大きく生じており,階段降段動作制御降下での膝屈曲に要する時間の延長を認めた。階段降段動作の動作特性として,重力に従った中で自己身体の制御を行う必要がある。重力に従うことで必然的に加速度が付与され,その加速度の制動のため大内転筋の筋活動が増大したことが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において,階段降段動作の支持側下肢での膝屈曲が生じる以前に骨盤下制による不安定性があるのであれば支持側中殿筋を,膝屈曲以降に不安定性が生じるのであれば支持側大内転筋の筋活動が影響を及ぼしている可能性があるとして問題点として疑える。また,階段降段動作の動作特性として,重力に従った中で自己身体の制御を行う必要があり対側下肢の下段接地のためのフィードバック機構の破綻や恐怖心がより支持側大内転筋の筋活動を増大させる要因であることを留意する必要がある。
第25回大阪府理学療法学術大会にて階段降段動作と片脚スクワットの制御降下における各筋の筋活動の比較についての発表をする機会を得た。階段降段動作の制御降下において支持側大内転筋の筋活動が有意に増大し,制御降下での骨盤下制に対して骨盤の前額面上の安定に寄与していることへ示唆が与えられたことを報告した。臨床において階段降段動作では片脚支持へ移行するため骨盤下制の制動に支持側中殿筋の活動が必要となるが,位相のどのタイミングで支持側大内転筋の筋活動が生じるかは明確ではない。そこで,本研究では階段降段動作の1周期間での支持側中殿筋・大内転筋の筋活動が必要となる位相を明確にするため,また支持側中殿筋・大内転筋の筋活動のパターン分類についての検討を行った。その結果,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は健常男性10名(24.9±1.3歳)とし,課題は2足1段の階段降段動作を実施した。階段降段動作の段差は蹴上げ20cm,踏み面25cmのものを用いた。測定機器はテレメトリー筋電計(キッセイコムテック社製),ビデオカメラを用い,導出筋は支持側の中殿筋,大内転筋としサンプリング周波数を1000Hzで各対象者3回ずつの測定を行った。得られた課題の波形から筋電図積分値を算出し比較を行った。
【結果】
階段降段動作での支持側中殿筋の筋活動は支持脚への体重移動を行い,対側下肢を前方へ振り出している際に生じるのに対して,支持側大内転筋の筋活動は支持側中殿筋の活動が生じた後,支持脚膝関節屈曲が生じる時点から支持脚の足尖が段上段より離れるまでの間で筋活動が生じた。波形のパターンでは30例とも共通して上述した位相での支持側中殿筋,内転筋それぞれの筋活動を認めた。また,30例中,18例では支持側中殿筋・大内転筋の筋活動量が同等だったのに対して12例では支持側大内転筋の筋活動が支持側中殿筋よりも大きく生じていた。
【考察】
中殿筋の筋活動については,対側下肢の振り出しのために支持側下肢への体重移動,片脚支持を保持するために筋活動が生じたと考えられる。大内転筋の筋活動について,解剖学的に大内転筋の起始は,深層では恥骨下枝・坐骨枝から,表層は坐骨結節から起始する。停止は深層では大腿骨後面の粗線,表層では内転筋結節に付着する。この解剖学的な筋の走行から大内転筋は股関節伸展・内転作用を有しており,階段降段動作制御降下の股関節屈曲・外転制御を担ったのではないかと考えられる。また,広筋内転筋腱板には内側広筋が付着し,膝関節屈曲制動に対して内側広筋の出力発揮のための起始部の安定性の増大にも寄与したことが考えられる。波形のパターンでは30例中,18例では支持側中殿筋・大内転筋の筋活動量が同等であり,筋の適切な出力の切り替えが必要になることが考えられる。12例においては支持側大内転筋の筋活動が支持側中殿筋よりも大きく生じており,階段降段動作制御降下での膝屈曲に要する時間の延長を認めた。階段降段動作の動作特性として,重力に従った中で自己身体の制御を行う必要がある。重力に従うことで必然的に加速度が付与され,その加速度の制動のため大内転筋の筋活動が増大したことが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において,階段降段動作の支持側下肢での膝屈曲が生じる以前に骨盤下制による不安定性があるのであれば支持側中殿筋を,膝屈曲以降に不安定性が生じるのであれば支持側大内転筋の筋活動が影響を及ぼしている可能性があるとして問題点として疑える。また,階段降段動作の動作特性として,重力に従った中で自己身体の制御を行う必要があり対側下肢の下段接地のためのフィードバック機構の破綻や恐怖心がより支持側大内転筋の筋活動を増大させる要因であることを留意する必要がある。