[P1-B-0118] ハイヒールが歩行に及ぼす影響
―3軸ジャイロセンサを用いた分析―
キーワード:ハイヒール, 歩行, 角速度
【はじめに,目的】
ハイヒールを着用した歩行では足関節底屈位が強制されることから,下肢関節への悪影響が懸念される。この影響について,これまで重心動揺や姿勢との関連を検討した報告が散見される。しかし,裸足とハイヒール着用での歩行における角速度の相異については不明な点が多い。そこで今回,裸足とハイヒール着用での歩行について,膝関節の角速度の変化を明らかにすることを目的に本研究を実施した。
【方法】
対象は下肢に整形外科的な既往のない健常女性8名(平均年齢21±2.1歳,平均身長158.8±6.7cm,平均体重49.2±5.3kg)とした。すべての被験者は,日常生活にてハイヒールを愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。また,ハイヒールは被験者が履きなれたものとし,足長に対して40~45%のヒール高を本研究で用いた。角速度の測定は,3軸ジャイロセンサ(MP-G3-01B,MicroStone社製)を用いた。センサの装着部位は右下腿の脛骨粗面下1横指に貼付し,動作中の筋収縮によってセンサが動かないことを確認した。X軸上の運動は膝の屈曲(+)・伸展(-),Y軸上の運動は下腿の内旋(+)・外旋(-),Z軸上の運動は膝の内反(+)・外反(-)に一致するように設置した。センサは疼痛のない範囲でビニールテープを用いて強固に固定した。サンプリング周波数は10msにて導出した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(dynabook T350,TOSHIBA社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。歩行の測定は,初めに裸足歩行,次にハイヒール歩行を実施した。歩行速度は被験者の快適スピードとし,加速と減速の影響を排除するため最初の4歩行周期を除外した5,6,7歩行周期の立脚期を抽出してデータ解析に使用した。1歩行周期の時間が被験者により異なるため,各被験者の歩行周期を時間で正規化した。なお,被験者は測定中のセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。また,測定中にバランスを崩した際には再度測定を行った。各方向への角速度からピーク値を算出し,それぞれ裸足歩行と比較した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用いピーク値の群間比較に対応のあるt検定を行った。危険率5%未満で有意差の判定を行った。
【結果】
膝の屈曲・伸展および内反・外反における角速度の変化については,裸足歩行とハイヒール歩行は概ね同様の波形を示した。しかし膝の内旋・外旋角速度は裸足歩行に比してハイヒール歩行の方が内旋角速度が減少しピーク値は有意に低値であった(p<0.05)。その他については有意差は認められなかったものの,いずれにおいても裸足歩行に比してハイヒール歩行は低値を示す傾向が認められた。
【考察】
ハイヒールを着用した歩行では,動作中に足関節底屈位を強制されることから,膝関節の伸展可動域が減少すると考えられている。本研究の結果で得られた膝内旋角速度の減少は,膝関節の伸展可動域減少に追随する終末強制回旋運動の不足が生じ,結果として角速度が減少したものと考えられる。すなわち,ハイヒールによる不安定さを可動域を減少させることにより担保しているものと推察される。
【理学療法学研究としての意義】
履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については不明な点が多い。今回,膝関節の角速度について検討し,履物が身体に与える影響を明らかにした点で意義がある。
ハイヒールを着用した歩行では足関節底屈位が強制されることから,下肢関節への悪影響が懸念される。この影響について,これまで重心動揺や姿勢との関連を検討した報告が散見される。しかし,裸足とハイヒール着用での歩行における角速度の相異については不明な点が多い。そこで今回,裸足とハイヒール着用での歩行について,膝関節の角速度の変化を明らかにすることを目的に本研究を実施した。
【方法】
対象は下肢に整形外科的な既往のない健常女性8名(平均年齢21±2.1歳,平均身長158.8±6.7cm,平均体重49.2±5.3kg)とした。すべての被験者は,日常生活にてハイヒールを愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。また,ハイヒールは被験者が履きなれたものとし,足長に対して40~45%のヒール高を本研究で用いた。角速度の測定は,3軸ジャイロセンサ(MP-G3-01B,MicroStone社製)を用いた。センサの装着部位は右下腿の脛骨粗面下1横指に貼付し,動作中の筋収縮によってセンサが動かないことを確認した。X軸上の運動は膝の屈曲(+)・伸展(-),Y軸上の運動は下腿の内旋(+)・外旋(-),Z軸上の運動は膝の内反(+)・外反(-)に一致するように設置した。センサは疼痛のない範囲でビニールテープを用いて強固に固定した。サンプリング周波数は10msにて導出した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(dynabook T350,TOSHIBA社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。歩行の測定は,初めに裸足歩行,次にハイヒール歩行を実施した。歩行速度は被験者の快適スピードとし,加速と減速の影響を排除するため最初の4歩行周期を除外した5,6,7歩行周期の立脚期を抽出してデータ解析に使用した。1歩行周期の時間が被験者により異なるため,各被験者の歩行周期を時間で正規化した。なお,被験者は測定中のセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。また,測定中にバランスを崩した際には再度測定を行った。各方向への角速度からピーク値を算出し,それぞれ裸足歩行と比較した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用いピーク値の群間比較に対応のあるt検定を行った。危険率5%未満で有意差の判定を行った。
【結果】
膝の屈曲・伸展および内反・外反における角速度の変化については,裸足歩行とハイヒール歩行は概ね同様の波形を示した。しかし膝の内旋・外旋角速度は裸足歩行に比してハイヒール歩行の方が内旋角速度が減少しピーク値は有意に低値であった(p<0.05)。その他については有意差は認められなかったものの,いずれにおいても裸足歩行に比してハイヒール歩行は低値を示す傾向が認められた。
【考察】
ハイヒールを着用した歩行では,動作中に足関節底屈位を強制されることから,膝関節の伸展可動域が減少すると考えられている。本研究の結果で得られた膝内旋角速度の減少は,膝関節の伸展可動域減少に追随する終末強制回旋運動の不足が生じ,結果として角速度が減少したものと考えられる。すなわち,ハイヒールによる不安定さを可動域を減少させることにより担保しているものと推察される。
【理学療法学研究としての意義】
履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については不明な点が多い。今回,膝関節の角速度について検討し,履物が身体に与える影響を明らかにした点で意義がある。