[P1-B-0121] 足部内側縦アーチの衝撃緩衝作用
Keywords:片脚ジャンプ, アーチ高, 3次元動作解析
【目的】
足のアーチには,一般に衝撃緩衝作用,不整地への適合作用,荷重分散作用があるとされ,山崎らは3つの足アーチのうち,衝撃緩衝作用が最も高いのは内側縦アーチとしている。内側縦アーチの衝撃緩衝作用について,歩行および走行時の検討は複数あるが,ジャンプ着地後の衝撃緩衝作用については少なく,深野の検討と内田らの検討がある。深野と内田らは,ともにジャンプ後片脚着地時の内側縦アーチの低下を確認している。しかし,深野は10 cm台からのドロップジャンプを採用しており,十分な衝撃が足部に加わったと言いがたい。また,内田らは床を基準として舟状骨結節と床の距離をアーチ高としており,誤差が生じやすく科学性が高いとは言いがたい。本研究の目的は,足部内に基準をおきアーチ高を求め,片脚ジャンプ着地後の衝撃緩衝作用を確認すること,また,片脚ジャンプの高さとアーチ高の変化率の関係を検討することである。
【方法】
対象は,下肢に重篤な既往がなく,医師から運動を制限されていない健常な高校生男子15名(平均年齢15.9±0.8歳,平均身長168.8±5.1cm,平均体重60.5±6.3kg)とした。また,各対象においてジャンプ時や着地時に痛みのないことを確認した。測定は,超音波方式3次元動作解析システム(zeburis社製)を用いて行い,マーカーは第1中足骨頭,舟状骨粗面,踵部内側中央,内果中央に貼付した。ランニングジャンプ時の踏み切り足を測定側とし,測定側を支持側とした片脚立位をとらせた上で,片脚ジャンプを最大努力で行わせ,同側で片脚着地させた。超音波受信機は,足部内側が受信できるよう設置した。また,着地後にその場でバランスをとって静止したものを成功試技とした。アーチ高は,第1中足骨頭と踵部内側中央を結ぶ線を底辺,舟状骨粗面を頂点とする三角形を想定し,頂点から底辺までの垂直距離を算出し求めた。また,安静片脚立位時のアーチ高を100として着地後のアーチ高の割合を算出し,変化率とした。片脚ジャンプの高さは,内果中央が示した最高値から安静時の値の差を求めた。統計処理は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて,安静片脚立位時と片脚ジャンプ着地後のアーチ高を比較した。さらに,Pearsonの相関係数を算出し,ジャンプの高さとアーチ高変化率の関係を検討した。
【結果】
安静片脚立位時アーチ高の50%タイル値は7.9mm,片脚ジャンプ着地後アーチ高の50%タイル値は2.7mmで,片脚ジャンプ着地後は安静片脚立位より有意にアーチ高が低下した(p<0.05)。また,片脚ジャンプの高さは平均187.1±44.9mm,アーチ高変化率は平均36.8±21.4%でピアソンの相関係数はr=0.183となり,片脚ジャンプの高さとアーチ高変化率に有意な相関は認められなかった。
【考察】
内側縦アーチの衝撃緩衝作用はTruss mechanismとして説明され,内側縦アーチは三角形とみなされる。上辺の2辺は,足根骨とそれらを結ぶ関節と強力な靭帯で作られ,底辺は足底腱膜で作られる。足アーチの2つの上辺が骨性構造で伸縮できない構造であるのに対し,底辺が腱あるいは腱膜といった伸縮性に富む軟部組織であることから,衝撃によって三角形の頂点が下降することで,衝撃を緩衝するとされている。今回,我々はこの三角構造にならってマーカーを設置することで,足部に起こる骨の変化を忠実に測定し,片脚ジャンプ後の内側縦アーチによる衝撃緩衝作用を確認した。一方,我々はジャンプの高さを衝撃の強さに見立て,アーチ高変化率との関係を検討したが,ばらつきが大きく両者に有意な相関はなかった。高嶋らは歩行中のアーチ変形量に個人差があるとし,アーチの変形量はアーチを支持する靱帯など足部生体内組織の強度に依存するとしている。また,苅山らはジャンプにおける下肢関節の貢献度を検討し,足関節,膝関節,股関節の順に大きいことを明らかにしている。したがって,ジャンプ着地の衝撃緩衝にも股関節や膝関節も作用していると考えられ,これらの要因により明瞭な関係性が示されなかったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,ジャンプ着地において内側縦アーチには衝撃緩衝作用あるが,その作用の大きさには個人差があり,足部生体内組織の強度や下肢関節の使い方などによって異なる可能性があることを示している。衝撃緩衝作用は,疲労骨折や足部障害の予防に大きく関わるとされており,それらの予防の際には個々人の特性を考慮して行う必要があると考える。
足のアーチには,一般に衝撃緩衝作用,不整地への適合作用,荷重分散作用があるとされ,山崎らは3つの足アーチのうち,衝撃緩衝作用が最も高いのは内側縦アーチとしている。内側縦アーチの衝撃緩衝作用について,歩行および走行時の検討は複数あるが,ジャンプ着地後の衝撃緩衝作用については少なく,深野の検討と内田らの検討がある。深野と内田らは,ともにジャンプ後片脚着地時の内側縦アーチの低下を確認している。しかし,深野は10 cm台からのドロップジャンプを採用しており,十分な衝撃が足部に加わったと言いがたい。また,内田らは床を基準として舟状骨結節と床の距離をアーチ高としており,誤差が生じやすく科学性が高いとは言いがたい。本研究の目的は,足部内に基準をおきアーチ高を求め,片脚ジャンプ着地後の衝撃緩衝作用を確認すること,また,片脚ジャンプの高さとアーチ高の変化率の関係を検討することである。
【方法】
対象は,下肢に重篤な既往がなく,医師から運動を制限されていない健常な高校生男子15名(平均年齢15.9±0.8歳,平均身長168.8±5.1cm,平均体重60.5±6.3kg)とした。また,各対象においてジャンプ時や着地時に痛みのないことを確認した。測定は,超音波方式3次元動作解析システム(zeburis社製)を用いて行い,マーカーは第1中足骨頭,舟状骨粗面,踵部内側中央,内果中央に貼付した。ランニングジャンプ時の踏み切り足を測定側とし,測定側を支持側とした片脚立位をとらせた上で,片脚ジャンプを最大努力で行わせ,同側で片脚着地させた。超音波受信機は,足部内側が受信できるよう設置した。また,着地後にその場でバランスをとって静止したものを成功試技とした。アーチ高は,第1中足骨頭と踵部内側中央を結ぶ線を底辺,舟状骨粗面を頂点とする三角形を想定し,頂点から底辺までの垂直距離を算出し求めた。また,安静片脚立位時のアーチ高を100として着地後のアーチ高の割合を算出し,変化率とした。片脚ジャンプの高さは,内果中央が示した最高値から安静時の値の差を求めた。統計処理は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて,安静片脚立位時と片脚ジャンプ着地後のアーチ高を比較した。さらに,Pearsonの相関係数を算出し,ジャンプの高さとアーチ高変化率の関係を検討した。
【結果】
安静片脚立位時アーチ高の50%タイル値は7.9mm,片脚ジャンプ着地後アーチ高の50%タイル値は2.7mmで,片脚ジャンプ着地後は安静片脚立位より有意にアーチ高が低下した(p<0.05)。また,片脚ジャンプの高さは平均187.1±44.9mm,アーチ高変化率は平均36.8±21.4%でピアソンの相関係数はr=0.183となり,片脚ジャンプの高さとアーチ高変化率に有意な相関は認められなかった。
【考察】
内側縦アーチの衝撃緩衝作用はTruss mechanismとして説明され,内側縦アーチは三角形とみなされる。上辺の2辺は,足根骨とそれらを結ぶ関節と強力な靭帯で作られ,底辺は足底腱膜で作られる。足アーチの2つの上辺が骨性構造で伸縮できない構造であるのに対し,底辺が腱あるいは腱膜といった伸縮性に富む軟部組織であることから,衝撃によって三角形の頂点が下降することで,衝撃を緩衝するとされている。今回,我々はこの三角構造にならってマーカーを設置することで,足部に起こる骨の変化を忠実に測定し,片脚ジャンプ後の内側縦アーチによる衝撃緩衝作用を確認した。一方,我々はジャンプの高さを衝撃の強さに見立て,アーチ高変化率との関係を検討したが,ばらつきが大きく両者に有意な相関はなかった。高嶋らは歩行中のアーチ変形量に個人差があるとし,アーチの変形量はアーチを支持する靱帯など足部生体内組織の強度に依存するとしている。また,苅山らはジャンプにおける下肢関節の貢献度を検討し,足関節,膝関節,股関節の順に大きいことを明らかにしている。したがって,ジャンプ着地の衝撃緩衝にも股関節や膝関節も作用していると考えられ,これらの要因により明瞭な関係性が示されなかったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,ジャンプ着地において内側縦アーチには衝撃緩衝作用あるが,その作用の大きさには個人差があり,足部生体内組織の強度や下肢関節の使い方などによって異なる可能性があることを示している。衝撃緩衝作用は,疲労骨折や足部障害の予防に大きく関わるとされており,それらの予防の際には個々人の特性を考慮して行う必要があると考える。