第50回日本理学療法学術大会

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ポスター1

スポーツ1

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0162] 片脚着地時における後足部および前足部の運動と膝関節外反角度の関係

木下恵美1, 浦辺幸夫2, 前田慶明2, 笹代純平2, 藤井絵里2, 岩田昌2, 河原大陸2, 沼野崇平1 (1.広島大学医学部保健学科, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究科)

キーワード:片脚着地, 膝関節外反, ACL損傷予防

【目的】

膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament,以下,ACL)損傷はスポーツ動作中に多く発生し,そのときの受傷肢位は膝関節外反位であることが多い(Hewettら,2009)。膝関節外反が生じる要因はさまざまであるが,秋本ら(2009)は,片脚着地時に内側縦足弓(Medial Longitudinal Arch,以下,アーチ)の低下に伴い,脛骨の内側傾斜角度が大きくなることで,膝関節外反角度が増加するとしている。この内側傾斜(膝外反)の最大角度とアーチの低下の間には中等度の相関があるとしている。

一般に,アーチが低下する際には後足部が外反し前足部は回内するとされているが,片脚着地動作時に,後足部および前足部の運動が,膝関節外反とどのように関係しているかについては確かではない。本研究の目的は,膝関節外反角度と片脚着地時の後足部および前足部の運動の関係を明らかにすることとした。仮説は,膝関節最大外反角度変化量と後足部外反角度変化量,および前足部回内角度変化量には正の相関がみられるとした。
【方法】

対象は,下肢に整形外科的疾患の既往がない健康な女性7名であった。平均年齢(±SD)は22.0±0.7歳,平均身長(±SD)は154.6±7.8cm,平均体重(±SD)は53.5±10.4kg,平均BMI(±SD)は22.1±2.6kg/m2であった。本研究では,支持脚をボールを蹴る脚とは反対側の脚とした。全ての対象の支持脚は左脚であった。課題動作は高さ30 cmの台から,30 cm前方の床反力計(AMTI社)への片脚着地動作とした。両脚で踏み切った後,支持脚で着地し片脚立位の保持を行った。成功試行3回を行った時点で終了とした。

動作中の運動学的データの記録には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作分析装置VICON-MX system(VICON MOTION ANALYSIS社)と床反力計1基を使用した。赤外線カメラはサンプリング周波数100 Hz,床反力計はサンプリング周波数1,000 Hzにて動作を記録した。対象には足部・足関節の運動を分析するため,Oxford foot modelを用い,支持脚に反射マーカーを18箇所に貼付した。膝関節外反角度の分析には,下肢plug-in-gait modelを用い,両側下肢に反射マーカーを16箇所貼付した。

データ解析にはVICON NEXUS 1.8(VICON MOTION ANALYSIS社)を用いた。解析区間は接地時から膝関節最大外反位となる時点までとし,膝関節最大外反角度,そのときの後足部外反角度,前足部回内角度の変化量を算出した。なお,接地は床反力が10 Nを超えた時点と規定した。3回の試行で得られたデータの平均値を代表値とした。膝関節外反角度,後足部外反角度,前足部回内角度をそれぞれ+とした。

統計学的解析にはエクセルアドインソフト(Statcel 3,オーエムエス出版社)を使用した。最大膝関節外反角度の変化量と後足部および前足部角度の変化量の関係を調べるために,Pearsonの積率相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】

接地時の最大膝関節外反角度は-6.9±6.4°,後足部外反角度は-6.3±10.7°,前足部回内角度は-0.3±7.3°であった。膝最大関節外反時の角度はそれぞれ0.0±9.3°,-3.3±14.2°,2.4±7.3°となった。解析区間内での角度変化量は膝関節は外反方向に8.2±9.5°,後足部は外反方向に3.4±7.4°,前足部は回内方向に3.2±8.5°となった。膝関節最大外反角度変化量と後足部外反角度変化量の間には,有意な正の相関が認められた(r=0.8,p=0.01)。膝関節最大外反角度変化量と前足部回内角度変化量の間には,有意な相関は認められなかった(r=-0.2,p=0.5)。
【考察】

本研究により,着地後,膝関節が外反運動を行う間に後足部外反角度が大きくなることが分かった。運動連鎖の観点から考えると,足部は足関節,膝関節,股関節を介して体幹部につながり,協調して運動を行っている。したがってこれは足部が回外すると下腿は外旋,膝関節は内反し,逆に足部が回内すると下腿は内旋し,膝関節は外反することを示しており(横江ら,1997),本研究の結果は先行研究と同様の見解を示した。このときの足部の回外,回内はそれぞれ,後足部の内反,外反を指していることから,後足部の外反角度の増大が,下肢の運動連鎖によって膝関節を外反方向へ導くことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】

今回,片脚着地動作での膝関節外反には後足部の外反運動が関係していることが分かった。さまざまな動作の中で,膝関節外反が前足部・後足部のどちらの動きによって影響されているのかを明らかにしていくことは重要であると考える。