第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0175] 2014車椅子バスケ世界選手権インチョン(韓国)大会参加報告

TOKYO2020に理学療法士が参加するための一考察

青木一平1, 金山永勲1, 青木佐知子2, 畠山利昭3, 常見浩4, 白土貴史5 (1.JCHO東京高輪病院リハビリテーション室, 2.大田ナーシングホーム翔裕園, 3.(株)フジプランニング, 4.さいたま県税事務所, 5.JCHO東京高輪病院整形外科)

キーワード:障がい者スポーツ, クラス分け委員, 国際大会

【はじめに,目的】
今回,車椅子バスケットボール(以下,車椅子バスケ)世界選手権インチョン(仁川・韓国)大会に,日本からクラス分け委員として参加することができた。今回の経験を報告させて頂くことで理学療法士の障がい者スポーツへの関わり方の一つとしてクラス分け委員というものがあるということを広く知って頂き,2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えた今,より多くの理学療法士の方々に障がい者スポーツをサポートして頂くためのきっかけとなれば幸いである。
【方法】
2014年7月11日から13日(大会期間7月3日から15日)の期間中,2014車椅子バスケ世界選手権インチョン大会において,日本を含む16か国の代表チームについて1日4試合,1試合につき両チーム合計最大24人の選手を,計2日間にわたり国際クラス分け委員と共にコートサイドから国際車椅子バスケ連盟(IWBF)で定められたルールに則ってクラス分けした。車椅子バスケのクラス分けでは,選手一人一人の状態に応じて1.0~4.5点まで0.5点刻みの8クラスに分けられた持ち点が与えられる。そしてコート上の5人の持ち点が合計14.0点を超えてはならない。
【結果】
今大会の出場国はイギリス・メキシコ・韓国・アルゼンチン(以上,グループA),オランダ・スペイン・イラン・日本(以上,グループB),トルコ・アルジェリア・コロンビア・アメリカ(以上,グループC),ドイツ・スウェーデン・オーストラリア・イタリア(以上,グループD)の16か国で,コーチやスタッフ合計96人,選手合計179人であった。選手のクラス分け持ち点の内訳は,状態の重い順に1.0点の選手が29人(16%),1.5点の選手が16人(9%),2.0点の選手が22人(12%),2.5点の選手が17人(10%),3.0点の選手が32人(18%),3.5点の選手が12人(7%),4.0点の選手が27人(15%),4.5点の選手が24人(13%)であった。
【考察】
筆者にとって今回が初めての国際大会への参加であった。対戦する両国それぞれの国歌演奏までの限られた時間内で,初めて見る選手をクラス分けすることは大変に労力を要するものであった。また各国代表選手の中には,他に比べて非常に特徴的な座位姿勢の競技用車椅子に乗る選手や上肢障害を合併している選手もいて,そのクラス分けの判断に難渋することもあった。
一方で現地において他国のクラス分け委員との交流など,文字通りスポーツを通じた国際交流の現場を経験できたことは大変有意義であったと考えている。また,特に親交を深められた韓国のクラス分け委員のうち,健常者は医師や理学療法士であった。今後,車椅子バスケに限らず,臨床的なつながりも得られればと考えている。
車椅子バスケに限らず障がい者スポーツには,競技性・公平性の確保や選手の出場機会の確保などを目的にクラス分けシステムが導入されている。また,車椅子バスケなどの一部の競技では脊髄損傷や下肢切断,先天性疾患などの障害が混在していても,競技ごとに統一の基準でクラス分けされることで多様な障害をもつ選手たちが同一ルールのもと同一コート上で熱戦を繰り広げている。
車椅子バスケのクラス分けは競技中の座位姿勢や駆動方法,ボールコントロールやシュート時の姿勢,接触時の強さなどをコート外から観察し評価するのが基本である。これらの評価を行う上で解剖学や運動学などの知識に加え疾患(病態)への理解や救急時の対応が可能である理学療法士は,クラス分け委員として適した存在であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えて,ひとりでも多くの理学療法士がその専門性を発揮しつつ大会に関わるにはどうすればよいかを考えた際に,オリンピックだけではなくパラリンピックも視野に入れた活動をすべきと考える。むしろ理学療法士はその生業として一般人に比べ障害者に接する機会が多く,障がい者スポーツの現場において即戦力となり得る存在と言える。しかし臨床場面などで「患者」に接しているだけでは,「患者」を脱した障害者の存在を身近にとらえることは容易ではない。まずは車椅子バスケに限らず足が運べる範囲で行われている障がい者スポーツの大会を観戦しに行くだけでも,障がい者スポーツにかかわる大きな一歩になるのではないだろうか。またそれが,日々の臨床場面にフィードバックされると考える。