第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

スポーツ2

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0178] 成長区分の変化の違いが運動能力に及ぼす影響

田村靖明1, 加藤達也1, 石川みづき1, 鵜飼逸矢1, 出口憲市2 (1.鴨島病院リハビリテーション部, 2.徳島大学病院リハビリテーション部)

Keywords:成長曲線, 成長区分, 運動能力

【目的】運動能力は年齢や身長の成長とともに向上し,小学生から中学生にかけてその変化が特に激しいが,多くのスポーツ現場では,身長成長速度曲線(成長曲線)などにより成長段階を考慮せずに過度の運動を要求されることがある。また,成長曲線のtake off age(TOA)からage of peak height velocity(PHA)に達する以前のPhaseIIは成長期障害の発症時期との関連性が報告されており,関節に負担がかかる運動を避ける必要性がある。そこで本研究では個々の児童に適切な負荷となるトレーニング指導をするために,まず成長区分の変化が運動能力に与える影響を検討した。

【方法】徳島県にある某サッカークラブに所属している男子児童を対象とした。小学校1年生から現在までの学校定期健康診断時の身長計測値を調査し,年間毎の身長増加量を求め,3次スプライン曲線から成長曲線を作成した。TOA,PHAをプロットし,村田の分類に準じて昨年と現在の成長区分の確定を行い,成長区分に変化のあった群(変化あり群)と変化のなかった群(変化なし群)に分けた。また。フィールドテストの内容はJFA(Japan football association)フィジカル測定ガイドライン2006年版に準拠して50m走,10m×5シャトルラン,アジリティテスト1・2,バウンディングおよびホッピング右・左の6項目を測定した。なお,すべてのデータは平均値±標準偏差で示し,SPSSver19.0を用いて解析した。各群の昨年と現在の身長とフィールドテストの比較については対応のあるt検定,また変化あり群と変化なし群の昨年から現在までの測定項目毎の変化量の比較には対応のないt検定を用いて検討した。なお危険率は5%未満を有意水準として採用した。

【結果】成長区分がPhaseIからPhaseIIへ変化した児童(平均年齢12.6±0.49歳,)とPhaseIIから変化の認められなかった児童(平均年齢12.6±0.66歳)はそれぞれ10名であった。各群の昨年と現在の身長,フィールドテストの各測定項目については,両群のアジリティテスト1と変化なし群のホッピング,バウンディング以外のすべての項目で高値であり有意な差が認められた。50m走,10m×5シャトルラン,アジリティテスト1・2,バウンディングおよびホッピング右・左の変化量は,変化あり群で-0.27±0.34秒,-0.28±0.46秒,0.73±1.00秒,-0.51±0.59秒,22.5±29.3cm,29.0±27.2cm,13.6±34.5cm,変化なし群では-0.64±0.36秒,-0.62±0.41秒,-0.36±1.14秒,-0.54±0.58秒,46.0±33.8cm,63.0±55.01cm,66.6±34.08cmであり50m走およびホッピングで有意な差が認められ(p<0.05),その他の項目においては有意な差は認められなかったが,アジリティ以外の項目で変化なし群の変化量が大きくなる傾向がみられた。

【考察】1年間の身長,運動能力は両群ともに向上しているが,スピード,ジャンプについての項目は変化なし群の変化量が大きく,動きの巧みさをみるアジリティ能力の変化量に有意差は認められなかった。PhaseIからIIへ変化している段階に比べPhaseIIにある段階で基本的な運動能力が伸びやすいことが示唆された。またPHAまでに起こる成長区分の変化は年齢から判断できないために,今後のトレーニング指導に応用することで障害発生の予防につながる可能性が示唆された。

【理学療法研究の意義】成長期は早熟,晩熟の児童がいるが,個々の成長段階は年齢,身長だけでは判断できない。しかし,指導者の多くは成長段階を把握しないまま身体能力を判断し年齢別に同一のトレーニング指導を行っている現状がある。本研究の意義は,児童の成長区分と身体能力を1年毎に調査することで,成長区分毎に向上しやすい特異的な運動能力があるか,また運動能力全体として向上しやすい時期にあるかなどについて個々の成長区分から推測できるようになる可能性がある。そのことにより個々に最適な効率の良いトレーニング指導が行うことができることや過負荷を避け障害を予防できるようになる可能性がある。