[P1-B-0239] 脳血管疾患後片麻痺者における屋外歩行自立判断のための2ステップテストのカットオフ値
Keywords:脳血管疾患, 屋外歩行自立度, カットオフ値
【はじめに,目的】
2ステップテストは,村永らによって考案された簡便な歩行能力の評価法であり障害のない高齢者を対象としたTimed Up and Go test(以下,TUG)との比較により,転倒リスクとの関連性も報告されている。脳血管疾患後片麻痺者においても歩行能力の評価や予後予測としての有用性は報告されているが,屋外歩行自立と判断するための具体的な2ステップ値の報告はない。脳血管疾患を発症した者では,実用的な移動手段が車椅子に留まる場合も多いが,2ステップテストを実施するためには,身体的な介助なしで歩行が可能でなければならない。そのような高い身体能力を持つ対象者において,屋外でも実用的な歩行が可能なのか明確な基準を持って判断することは重要と考える。そこで今回,脳血管疾患後片麻痺者を対象とし,屋外歩行自立を判断する2ステップテストのカットオフ値を得ることを目的とした。
【方法】
対象は当院に入院した,脳血管疾患により片麻痺を呈した38名(男性24名,女性14名,平均年齢68.5±12.6歳,下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下,下肢BRS)VI:16名,V:16名,IV:3名,III:3名)である。歩行自立度は各対象者の病棟での安静度をもとに判断した。屋外歩行において介助や監視を要さずに可能な場合を屋外歩行自立群(以下,自立群)とした。そして,少しでも介助や監視が必要である場合を屋外歩行非自立群(以下,非自立群)とした。2ステップテストはバランスを崩さずに実施可能な最大2歩幅を測定し,身長比で標準化した値を2ステップ値とした。補助具・装具は日常的に使用している物を用いて行った。安静度によって判断した自立群と非自立群における2ステップ値の比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いた。2ステップテストに関して屋外歩行自立の可否を判断するカットオフ値を検討するため,Receiver Operating Characteristic Curve(以下,ROC曲線)から曲線下面積(Area Under the Curve;以下,AUC)と感度・特異度を求め,屋外歩行自立を判断するカットオフ値を算出した。統計処理は統計解析ソフト,SPSS20 for windowsを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
全対象者の内,自立群は21例(男性15名,女性6名,平均年齢64±12.8歳,下肢BRSVI:9名,V:11名,IV:0名,III:1名),非自立群は17例(男性9名,女性8名,平均年齢73.9±9.9歳,下肢BRSVI:7名,V:5名,IV:3名,III:2名)であった。歩行自立度別にみた2ステップ値の平均値は自立群1.11±0.24,非自立群0.78±0.26であった。この2ステップ値における自立群・非自立群の間に,有意な差が認められた(p<0.01)。ROC曲線から求められた2ステップテストのカットオフ値は0.996(感度76.2%,特異度76.5%,AUC0.82)であった。
【考察】
結果より脳血管疾患後片麻痺者では,2ステップテストで得られる2ステップ値が0.996を上回ることが,屋外歩行自立の目安となると示された。村永らは2ステップテストと障害高齢者の日常生活自立度との関連性において,J2(隣近所なら外出する)では2ステップ値が0.9であると報告している。今回得られたカットオフ値はそれを上回る値であった。このことから,脳血管疾患後片麻痺者が屋外歩行自立となるためには,障害高齢者の日常生活自立度でJ2以上の身体能力を要求されることが考えられた。また,横断歩道を渡るなどの屋外活動を安全に行うためには,1.0m/秒の速度で歩くことが必要とされている。歩幅を測定する2ステップテストは歩行速度との関連性が強く,村永らは鈴木らの報告を参考に,通常歩行速度1.0m/秒を2ステップ値に換算すると0.83であると報告している。今回得られた2ステップテストのカットオフ値は0.83を上回っており,屋外歩行自立および安全に屋外活動が行えるかを判断する基準として有効な可能性が考えられた。脳血管疾患は多様な症状を呈するものであり,さらに,病前の歩行能力や呼吸器,循環器,整形外科疾患の既往など各症例の特性を把握することも重要となる。そのため,2ステップテストだけでなく複数の評価項目を用いることで,正確に屋外歩行自立の可否を判断することが出来ると考える。今後は,より多くの症例を用い,さらに信頼性の高いカットオフ値を求めていくべきと考える。
【理学療法学研究としての意義】
脳血管疾患後片麻痺者の屋外歩行自立を判断する一つの指標となり,治療介入のゴール設定等に寄与すると考える。
2ステップテストは,村永らによって考案された簡便な歩行能力の評価法であり障害のない高齢者を対象としたTimed Up and Go test(以下,TUG)との比較により,転倒リスクとの関連性も報告されている。脳血管疾患後片麻痺者においても歩行能力の評価や予後予測としての有用性は報告されているが,屋外歩行自立と判断するための具体的な2ステップ値の報告はない。脳血管疾患を発症した者では,実用的な移動手段が車椅子に留まる場合も多いが,2ステップテストを実施するためには,身体的な介助なしで歩行が可能でなければならない。そのような高い身体能力を持つ対象者において,屋外でも実用的な歩行が可能なのか明確な基準を持って判断することは重要と考える。そこで今回,脳血管疾患後片麻痺者を対象とし,屋外歩行自立を判断する2ステップテストのカットオフ値を得ることを目的とした。
【方法】
対象は当院に入院した,脳血管疾患により片麻痺を呈した38名(男性24名,女性14名,平均年齢68.5±12.6歳,下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下,下肢BRS)VI:16名,V:16名,IV:3名,III:3名)である。歩行自立度は各対象者の病棟での安静度をもとに判断した。屋外歩行において介助や監視を要さずに可能な場合を屋外歩行自立群(以下,自立群)とした。そして,少しでも介助や監視が必要である場合を屋外歩行非自立群(以下,非自立群)とした。2ステップテストはバランスを崩さずに実施可能な最大2歩幅を測定し,身長比で標準化した値を2ステップ値とした。補助具・装具は日常的に使用している物を用いて行った。安静度によって判断した自立群と非自立群における2ステップ値の比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いた。2ステップテストに関して屋外歩行自立の可否を判断するカットオフ値を検討するため,Receiver Operating Characteristic Curve(以下,ROC曲線)から曲線下面積(Area Under the Curve;以下,AUC)と感度・特異度を求め,屋外歩行自立を判断するカットオフ値を算出した。統計処理は統計解析ソフト,SPSS20 for windowsを用い,有意水準は5%とした。
【結果】
全対象者の内,自立群は21例(男性15名,女性6名,平均年齢64±12.8歳,下肢BRSVI:9名,V:11名,IV:0名,III:1名),非自立群は17例(男性9名,女性8名,平均年齢73.9±9.9歳,下肢BRSVI:7名,V:5名,IV:3名,III:2名)であった。歩行自立度別にみた2ステップ値の平均値は自立群1.11±0.24,非自立群0.78±0.26であった。この2ステップ値における自立群・非自立群の間に,有意な差が認められた(p<0.01)。ROC曲線から求められた2ステップテストのカットオフ値は0.996(感度76.2%,特異度76.5%,AUC0.82)であった。
【考察】
結果より脳血管疾患後片麻痺者では,2ステップテストで得られる2ステップ値が0.996を上回ることが,屋外歩行自立の目安となると示された。村永らは2ステップテストと障害高齢者の日常生活自立度との関連性において,J2(隣近所なら外出する)では2ステップ値が0.9であると報告している。今回得られたカットオフ値はそれを上回る値であった。このことから,脳血管疾患後片麻痺者が屋外歩行自立となるためには,障害高齢者の日常生活自立度でJ2以上の身体能力を要求されることが考えられた。また,横断歩道を渡るなどの屋外活動を安全に行うためには,1.0m/秒の速度で歩くことが必要とされている。歩幅を測定する2ステップテストは歩行速度との関連性が強く,村永らは鈴木らの報告を参考に,通常歩行速度1.0m/秒を2ステップ値に換算すると0.83であると報告している。今回得られた2ステップテストのカットオフ値は0.83を上回っており,屋外歩行自立および安全に屋外活動が行えるかを判断する基準として有効な可能性が考えられた。脳血管疾患は多様な症状を呈するものであり,さらに,病前の歩行能力や呼吸器,循環器,整形外科疾患の既往など各症例の特性を把握することも重要となる。そのため,2ステップテストだけでなく複数の評価項目を用いることで,正確に屋外歩行自立の可否を判断することが出来ると考える。今後は,より多くの症例を用い,さらに信頼性の高いカットオフ値を求めていくべきと考える。
【理学療法学研究としての意義】
脳血管疾患後片麻痺者の屋外歩行自立を判断する一つの指標となり,治療介入のゴール設定等に寄与すると考える。