第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

地域理学療法1

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0282] 訪問リハビリテーションにおける行動変容を目的とした外出活動について

宮下康史, 高橋悠, 田島亮典, 斉藤みどり, 柳川有希, 七五三木好晴 (前橋協立病院)

キーワード:訪問リハビリテーション, 外出活動, 行動変容

【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)は「その人らしい生活の再建やQOLの向上」の援助を目的としており,地域包括ケアシステムにおいては,日常生活の活動を高め,家庭や社会への参加を促すことが重要であるとされている。そこで今回,外出意欲はあるが閉じこもり傾向の利用者に対し,意欲に沿った外出活動を行い,身体的評価,心理的評価,および生活活動範囲や趣味の実施頻度などを調査し,外出活動の効果の検証を目的とした。
【方法】
対象者は当院訪問リハを利用しており,外出意欲があり,外出活動に興味がある17名とした。事前に興味のある外出活動に関してのアンケート調査を行い,希望があった4名ずつで,食事会と公園散策の二回の外出活動を行った。外出活動の参加者の8名を参加群,不参加の9名を対照群とした。調査内容は基本情報として,性別・年齢・歩行自立度(Functional Ambulation Category,以下FAC)・外出頻度,身体的評価としてCS-30,基本動作能力としてBedside Mobility Scale(以下BMS),心理的評価として参加群に対する外出活動後のアンケート調査(7段階評価)を行った。その他,自宅内における活動空間評価(Hb-LSA),趣味の実施頻度,また訪問リハ担当者が立案した短期目標と照らし合わせ行動変容ステージモデルを測定した。調査日は,外出活動一か月前(以下活動前),外出活動一か月後(以下活動後)に行った。統計学的分析として,Willcoxonの符号順位和検定を使用した。統計学的解析には,SPSS Statistics22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
基本属性として,参加群の性別は男性5名,女性3名,平均年齢は76.0±9.6歳,FACは0:1名,1:1名,2:1名,3:0名,4:4名,5:1名,外出頻度は週一回未満:4名・週一回程度:2名・週二回以上:2名であった。対照群の性別は男性4名,女性5名,平均年齢は69.0±6.5歳,FACは0:2名,1:2名,2:0名,3:1名,4:2名,5:2名,外出頻度は週一回未満:5名・週一回程度:0名・週二回以上:4名であった。CS-30では参加群の活動前:6.3±2.1・活動後:6.3±2.9,対照群の活動前:6.7±5.1・活動後:6.2±4.2でともに有意な改善はみられなかった。BMSでは参加群の活動前:31.3±6.5・活動後:32.3±6.5,対照群の活動前:32.2±8.8・活動後:32.6±8.7でともに有意な改善がみられなかった。参加群に対する活動後のアンケート調査において,運動意欲では改善:62%・維持:25%・悪化:13%,前向きな気持ちの変化では改善:25%・維持:50%・悪化:25%であった。Hb-LSAは参加群の活動前:58.9±25.0・活動後:62.9±24.3,対照群の活動前:54.3±28.7・活動後:54.6±26.5でともに有意な改善がみられなかった。活動後の趣味の実施頻度において,参加群では改善:37%・維持:50%・悪化:13%,対照群では維持:67%・悪化:33%であった。活動後の行動変容ステージモデルにおいて,参加群は改善:50%・維持50%,対照群の改善:0%・維持100%であった。参加群8名のうち行動変容ステージモデルの改善が見られた4名において,運動意欲の改善が見られたものは4名(100%),前向きな気持ちの変化があったものは2名(50%),趣味の実施頻度に改善が見られたものは2名(50%)であった。
【考察】
参加群の外出活動一か月後において,運動意欲の向上や前向きな気持ちの変化がみられ,行動変容に繋がったものが一定数いた。これは,事前に調査した本人の興味のある外出活動を行ったことが要因の一つと考える。加えて,外出することの楽しみを実体験したことや現状の問題点を認識したことで,目標に対しての意欲が高まり,行動変容が起きたと思われる。また,実際の行動として,趣味の実施頻度が増えていたことから,外出活動が,よりその人らしい生活を送るきっかけの一つになったのではないかと考える。これらのことから,現在,訪問リハは自宅内での提供のみとなっているが,今後,自宅外での訪問リハの提供を取り入れていく必要があるのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアシステムに向けて,今後さらに“活動”や“参加”に焦点が当てられていくと考えられる。今回,利用者の意欲に沿った外出活動を行うによって,心理的要因や趣味の実施頻度に改善する傾向が見られた。そして行動変容となるきっかけともなり,外出活動の有効性を示唆し,訪問リハに取り入れる一助になると考える。