第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

地域理学療法2

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0297] 通所介護利用者の利用日・非利用日別にみた身体活動量の性差について

安藤卓1,2, 樋口由美1, 今岡真和1, 石原みさ子1, 平島賢一1, 藤堂恵美子1, 上田哲也1, 北川智美1, 水野稔基1, 安岡実佳子1 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.大阪リハビリテーション専門学校)

Keywords:高齢者, 身体活動量, 性差

【はじめに,目的】
通所介護サービス(以下:デイ)を利用する虚弱高齢者の身体活動量は,デイ利用日のそれは概ね把握されるものの,生活の大半を占めるデイ利用日以外(以下:非デイ日)の身体活動量を把握することは非常に困難である。さらに非デイ日の活動は,家事労働等に代表される屋内活動が大半を占めると予想されるため,性差が影響すると考えられる。利用日・時間帯別,また性別による活動量の違いを把握することは,利用日別や性別の違いを考慮した上で運動療法や指導を行うことができ,虚弱高齢者の活動量の向上に有益であると考える。そこで本研究では,1週間連続使用可能なリストバンド式身体活動量計を用い,デイを利用する虚弱高齢者の週間(時間帯別)の身体活動量を計測し,男女におけるその特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は屋内歩行が自立している65歳以上のデイ利用者45名(男性18名,女性27名,平均年齢80.2歳,65-94歳)とした。なお,対象の除外基準はMMSE20点以下とした。身体活動量計(UP,JAWBONE社製,生活防水)は日中夜間全て装着して生活を行い1週間の活動量データを計測した。統計学的検討は活動量データを男女別に分け,3時間ごとの時間別,デイ利用日とその他の日の比較を歩数にて分析した。それぞれの項目に併せMann-WhitneyのU検定,Wilcoxonの符号付き順位検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
年齢は男性76.9±7.9歳,女性82.3±6.5歳,身長は男性165.7±0.1cm,女性148.7±0.1cm,体重は男性62.4±8.1kg,女性47.3±8.7kg,BMIは男性22.7±2.1kg/m2,女性21.4±3.8kg/m2,MMSEは男性27.4±3.0点,女性26.9±2.5点であった。年齢については有意に女性が高齢であった。BMI,MMSEについては男女で差はなかった。対象者の1日あたりの歩数の中央値は,男性で1,670歩(118~6,456歩),女性で3,097歩(271~13,674歩)であり,有意に男性の歩数が少なかった。デイ利用日別の歩数は,男性でデイ利用日2,022歩,非デイ日1,577歩で有意にデイ利用日の歩数が多かった。女性ではデイ利用日3,106歩,非デイ日3,034歩と有意な差はなかった。時間帯によるデイ利用日別の歩数は,男性では,24-3時,6-9時,9-12時,12-15時,15-18時で有意にデイ利用日の歩数が多かった。女性では,12-15時,18-21時で有意にデイ利用日の歩数が減少していた。時間帯による男女の歩数の違いは,デイ利用日では有意な差を認めなかった。非デイ日では6-9時,9-12時,12-15時,15-18時,18-21時の時間帯で有意に男性の歩数が少なかった。
【考察】
今回の結果は,健康日本21(第二次)で示されている平成22年現在の65歳以上健常高齢者の平均歩数,男性5,628歩/日,女性4,584歩/日を男女ともに大幅に下回り,虚弱高齢者の歩数の少なさが認められた。さらに,本研究結果と先述の平均歩数とを比較した場合,本研究対象者の女性では約30%減に対し,男性は約70%減であった。女性の方が有意に高齢であったにも関わらず,虚弱高齢男性の歩数低下は著しいことが明らかになった。また,女性ではデイ利用日と非デイ日とでほとんど歩数が変わらないのに対し,男性はデイ利用日に歩数が増加していることが明らかになった。このことから,男性においては,デイ利用が日々の活動を上げる一つの要因になっていると考えられる。また,男性はデイ利用日の6時から18時のすべての時間帯で有意に歩数が増加しており,通所・帰宅にかける準備や通所中の歩行が活動量の向上に大きく寄与していることが示唆された。時間帯による男女の歩数比較では,非デイ日の6時から21時のすべての時間帯で有意に男性の歩数が少なく,女性に比べ日々の屋内活動に対して消極的であり,そのため歩数が減少したと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
デイ利用者の歩数による身体活動を男女で客観的に把握でき,デイ利用日,非デイ日,さらには時間帯による特徴から,活動量向上に対する運動療法・指導に利用できること。