第50回日本理学療法学術大会

講演情報

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地域理学療法3

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0300] 回復期リハビリテーション病棟退院患者の自宅生活継続に関する追跡調査

梅木千鶴子, 山元久美子, 斎藤祐美子, 斎藤和夫 (渕野辺総合病院)

キーワード:回復期リハビリテーション病棟, 在宅生活, 介護指導

【はじめに,目的】
当院回復期リハビリテーション病棟の平成25年度自宅復帰率は86%であった。その内日常生活機能評価で10点以上となる重症者の退院時改善率は56%であり,重症者であっても自宅復帰が可能となった症例が散見され,その6か月自宅生活継続率は76%であった。入院中に介助指導や動作練習を行い自宅退院されるが,ADL自立度が低い重症者では介護負担が大きく,自宅生活継続困難が予想したが,結果は異なっていた。そこで今回,自宅退院後の生活について実態調査を行い,自宅生活を継続していくための入院中・退院後に必要な取り組みについて検討する事を目的とした。
【対象】
平成23年4月~25年3月までに当院回復期病棟に入院し,自宅退院となった7例
【方法】
自宅生活継続者のうち,同意の得られた患者宅を訪問し,ADL自立度(FIM運動項目),介護者の負担,心境変化等聞き取り調査を行った。そのうち日常生機能評価において10点以上のまま退院となった重症者2例と10点以下で退院となった5例について比較・検討した。
【結果】
退院後から調査日までの継続期間は平均555日で,女性4例,男性3例,平均年齢は73±8.4歳,主介護者は妻3例,夫1例,娘2例,息子1例。重症者は男女1例ずつ,介護者は配偶者であった。ADL自立度はFIM運動項目にて重症者平均24±5.6点に対し,非重症者平均63.8±6.8点であり,年齢およびFIM運動項目に有意差はみられなかった。
全例とも介護保険サービスを活用しており,重症かどうかに関わらず,介護者は仕事や家事への影響,自由時間の制約を感じていた。
重症者では,退院時より座位保持や立位保持といった身体機能向上を認める一方でADL自立度は向上せず介助を必要としていた。2例とも生活に慣れるまでには半年ほど時間を要したが,早朝に起きて家事の段取りをし,介護保険サービスを活用しながら仕事との時間調整を行う,また胃瘻の時間に合わせて家事や用事を済ませるなど,症例に合わせて介護者が生活を変化させていた。
非重症者では,退院後の自宅生活にて毎日歩行練習を行う例や,やれることはやってもらいたいという家族の意向もあり,身体機能向上に加えADL自立度の向上を認めた。その一方で転倒も4例報告された。入浴に関して,3例が退院時と設定が異なり,通所サービスのみを利用する予定が,サービスに加え自宅で入浴をされていた。
介護者の心境変化については「文句を言わなくなった」「つらい時もあったがいまは介護を楽しんでいる」「思っていたより大変じゃなかった」と,障害とその生活を受け入れられた発言が聞かれた。
【考察】
調査を行った7例の身体機能も生活環境も全く異なるが,退院時よりも笑顔が見られ,自宅での生活を継続されていた。入院中に家屋改修の提案を行い,移乗,更衣,排泄,清拭,また栄養注入やインスリン手技など症例に合わせた介護指導を行っており,退院生活の導入に関して,役立っていた。また退院後は,症例自身のためだけではなく,一緒に住んでいる家族の生活を考慮して,デイサービスや訪問介護を活用し,生活に合わせた介護保険サービスのプランニングが重要であることを実感した。
印象深かった点としては,非重症者の介護者から「介護されることに慣れてしまうので,自分でできることはやってもらう」,「繰り返し練習して更衣もトイレに行くのも一人でできるようになった」と発言が聞かれ,必要な介護は行うが,症例自身も受身ではなく積極的に活動を行えるような環境で生活されていたことである。転倒のリスクも向上したが,退院後の身体機能やADL能力向上に影響していると考えられた。
症例自身の変化だけではなく,生活時間や家庭内での役割の変化に対する介護者の適応能力も自宅生活を継続する為に必要であると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
回復期病棟退院後の自宅生活について調査を行った結果,機能訓練だけではなく,現在,看護師・介護士と一緒に行っている介護指導が有効であり,介護方法の習得が介護者の障害受容を進める可能性が示唆された。また身体機能やADL能力の変化を予測し,退院後の生活を見据えることにより,さらに内容が充実すると考える。今後は継続困難であった症例についても,検討していく必要がある。