第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

地域理学療法4

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0312] 在宅要介護高齢者の性差によるリスクの検討

青山満喜1, 熊谷旬一郎2, 山口倫直2 (1.名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学, 2.伊勢志摩リハビリテーション専門学校)

キーワード:要介護高齢者, 性差, リスク

【目的】近年,我が国の高齢化は更に進行し,特に75歳以上の後期高齢者数の増加が顕著である。それと同時に要介護高齢者の数も急増し,要介護認定者数は2012年12月時点で554万人に上る。今後の更なる要介護認定者数の増加に伴い,医療・介護保険料の増加が容易に予測される。これは看過できない社会問題の一つで,喫緊の課題と考えられる。また,要介護高齢者の多くは女性であり,高齢者人口や要介護者の集団においては性差が認められる。しかしながら,要介護高齢者の性別による背景ならびに介護環境の相違,性別による予後,リスクの相違などは明らかにされていない。したがって,在宅療養中の要介護者を対象とした前向き調査を基に,これらの項目を明らかにすることを目的として検討を行った。
【方法】名古屋市およびその近郊在住の高齢者で,虚弱高齢者の縦断調査登録時に65歳以上の1673名を対象とした。男女の内訳,男性:540名,平均年齢78.8±7.6歳。女性:1133名,平均年齢81.5±7.5歳であった。患者の属性,介護状態の把握,看護サービスの内容,疾患背景,身体機能と精神心理機能(基本的ADL,認知症の有無,うつの有無),慢性疾患,併存症,服薬数,転倒歴,骨折歴などの基本的な項目を調査した後,21ヶ月間の観察期間中に発生した事柄の性差を検討した。統計解析にはstudentのt検定,カイ二乗検定,Cox比例ハザード検定を用い,単変量解析で有意差(p<0.05)を認めた因子を多変量解析モデルに投入した。
【結果】要介護者の性別による登録時の背景と居宅サービス利用状況では,年齢,独居生活,主介護者あり,介護者の性別および年齢,主介護者の続柄,福祉用具のレンタルにおいて有意差を認めた。(<0.001)。男女別要介護者の背景と併存症においては,Charlson Comorbidity Index(CCI),服薬数,慢性疾患特に脳血管障害と悪性腫瘍の有無,過去5年間の骨折歴の有無において有意差を認めた。(<0.001)。統計解析にはSPSS ver.18.0を使用した。
【考察】今回の調査で,性別による疾病背景,介護環境,介護保険サービスの使用状況,健康障害(生命予後,入院など)に性別による相違があることが明らかとなった。今後,医療関係者および福祉関係者は,性別による相違を考慮する必要があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】高齢者が要介護状態にならないように,また要介護度をあげないようにするための予防は,医療経済学的観点からも看過できない重要な課題である。今回の結果で高齢者の性差を考慮することの必要性が示唆されたことは,リハビリテーションを含めた医療および福祉の現場において有益なヒントを与えるひとつになると考える。