[P1-B-0333] 医療・介護関連肺炎(NHCAP)の発症要因の検討
活動と栄養の視点から
Keywords:医療・介護関連肺炎, 活動・離床, 栄養
【目的】平成23年度の人口動態統計の死因別死亡数において「肺炎」が脳血管疾患を抜き,第3位となった。一方で2011年に日本呼吸器学会より医療・介護関連肺炎(以下,NHCAP)診療ガイドラインが提唱された。しかし,ガイドラインの内容ではリハビリテーションや呼吸ケア,栄養面からの肺炎予防や介入に関する内容は十分ではない。また,活動と栄養の視点から肺炎発症要因を示すデータが国内では少なく,それに伴う理学療法介入の在り方を検証しているものも少ない。今回,NHCAPの対象である長期療養病床での肺炎罹患群と未罹患群との特徴ならびに活動や栄養面から理学療法の介入について検討した。
【方法】対象は2012年4月~2013年9月の間に新規入院した患者233例(81.6±10.1歳)。調査項目は診療録より収集し,原疾患,年齢,性別,肺炎の有無。栄養指標として血清アルブミン値(以下,Alb),Body mass index(以下,BMI),Geriatric nutritional risk index(GNRI),栄養摂取方法(経口・経管)を調査し,活動指標としてFunctional independence measure(FIM),離床時間(一日平均)を「まったく離床していない」「3時間未満」「3~6時間未満」「6~10時間未満」「10時間以上」に分類して調査した。各項目でShapiro-Wilk検定により正規性を確認した上で,2群間の各項目でX(2)検定,Unpaired t-test,Mann-WhitneyのU検定を行い,さらにロジスティック回帰分析にて肺炎発症要因を検討した。合わせて肺炎群で活動指標を従属変数として栄養指標との影響について単回帰分析ならびに重回帰分析を行った。また,抽出された項目をROC曲線にてカットオフ値を算出した(有意水準は5%未満)。
【結果】肺炎罹患者は233例中88例(37.8%)であった。原疾患別では脳梗塞が最多であった。FIM総点では(罹患群vs未罹患群)31.8±19.3点vs48.1±26.8点(P<0.0001),運動項目では19.8±13.6点vs30.4±20.0点(P<0.0001),認知項目では12.0±8.0点vs 17.7±9.2点であった(P<0.0001)。さらに罹患群・未罹患群において1日平均離床時間を「6時間未満」と「6時間以上」とに分類し比較検討した結果,罹患群において「6時間未満」が有意に多かった(P<0.0001)。AlbとBMIを組み入れて算出するGNRIでは(罹患群vs未罹患群)81.3±11.1vs86.2±9.5であった(P<0.0001)。栄養摂取方法では罹患群において経管栄養,未罹患群では経口摂取が有意に多い結果であった(罹患群P=0.019 未罹患群P<0.0001)。肺炎の有無に対するロジスティック回帰分析では,「年齢」が選択された。罹患群において「FIM」を従属変数として栄養指標を独立変数とした単回帰分析では「BMI」「GNRI」「栄養摂取方法」が選択され(P<0.05,P<0.05,P<0.0001),「離床時間」を従属変数とした栄養指標との影響については「栄養摂取方法」が選択された(P<0.0001)。重回帰分析でも「栄養摂取方法」が選択された(P<0.0001)。栄養摂取方法の経口摂取とFIMとの影響についてはcut off値はFIMが27.5点(感度0.87,特異度0.81,AUC=0.91)であった。肺炎発症と離床時間とのROC曲線ではcut off値は3~6時間未満(感度0.49,特異度0.78,AUC=0.692)であった。また,肺炎発症とFIM・GNRIとのROC曲線ではcut off値はFIMが26.5点(感度0.724,特異度0.625,AUC=0.648),GNRIは80.1(感度0.73,特異度0.523,AUC=0.649)であった。
【考察】今回の研究では罹患群において活動量,栄養面ともに有意に低い結果であった。低栄養は感染症の発症,難治化,重症化に関連する因子の一つであることは従来から述べられていた。また,高齢者では活動度が低下すると換気機能の低下が見られるという報告もある。このことから今回のNHCAP研究において日常生活活動や離床時間と栄養摂取方法も含めた栄養指標との影響について関係性が示されたことは理学療法士として栄養面も考慮しながら,主として関わる日常生活活動や離床への介入において今後の高齢者肺炎の一つの予防的指標になるものと思われた。
【理学療法学研究としての意義】今後のさらなる高齢社会の進行に伴い,肺炎による死亡数は増加傾向にある。そのためにも理学療法として重要な離床などの「活動」や「栄養」についてより予防的観点から理学療法介入について検証し,臨床に応用させていくべきと考える。
【方法】対象は2012年4月~2013年9月の間に新規入院した患者233例(81.6±10.1歳)。調査項目は診療録より収集し,原疾患,年齢,性別,肺炎の有無。栄養指標として血清アルブミン値(以下,Alb),Body mass index(以下,BMI),Geriatric nutritional risk index(GNRI),栄養摂取方法(経口・経管)を調査し,活動指標としてFunctional independence measure(FIM),離床時間(一日平均)を「まったく離床していない」「3時間未満」「3~6時間未満」「6~10時間未満」「10時間以上」に分類して調査した。各項目でShapiro-Wilk検定により正規性を確認した上で,2群間の各項目でX(2)検定,Unpaired t-test,Mann-WhitneyのU検定を行い,さらにロジスティック回帰分析にて肺炎発症要因を検討した。合わせて肺炎群で活動指標を従属変数として栄養指標との影響について単回帰分析ならびに重回帰分析を行った。また,抽出された項目をROC曲線にてカットオフ値を算出した(有意水準は5%未満)。
【結果】肺炎罹患者は233例中88例(37.8%)であった。原疾患別では脳梗塞が最多であった。FIM総点では(罹患群vs未罹患群)31.8±19.3点vs48.1±26.8点(P<0.0001),運動項目では19.8±13.6点vs30.4±20.0点(P<0.0001),認知項目では12.0±8.0点vs 17.7±9.2点であった(P<0.0001)。さらに罹患群・未罹患群において1日平均離床時間を「6時間未満」と「6時間以上」とに分類し比較検討した結果,罹患群において「6時間未満」が有意に多かった(P<0.0001)。AlbとBMIを組み入れて算出するGNRIでは(罹患群vs未罹患群)81.3±11.1vs86.2±9.5であった(P<0.0001)。栄養摂取方法では罹患群において経管栄養,未罹患群では経口摂取が有意に多い結果であった(罹患群P=0.019 未罹患群P<0.0001)。肺炎の有無に対するロジスティック回帰分析では,「年齢」が選択された。罹患群において「FIM」を従属変数として栄養指標を独立変数とした単回帰分析では「BMI」「GNRI」「栄養摂取方法」が選択され(P<0.05,P<0.05,P<0.0001),「離床時間」を従属変数とした栄養指標との影響については「栄養摂取方法」が選択された(P<0.0001)。重回帰分析でも「栄養摂取方法」が選択された(P<0.0001)。栄養摂取方法の経口摂取とFIMとの影響についてはcut off値はFIMが27.5点(感度0.87,特異度0.81,AUC=0.91)であった。肺炎発症と離床時間とのROC曲線ではcut off値は3~6時間未満(感度0.49,特異度0.78,AUC=0.692)であった。また,肺炎発症とFIM・GNRIとのROC曲線ではcut off値はFIMが26.5点(感度0.724,特異度0.625,AUC=0.648),GNRIは80.1(感度0.73,特異度0.523,AUC=0.649)であった。
【考察】今回の研究では罹患群において活動量,栄養面ともに有意に低い結果であった。低栄養は感染症の発症,難治化,重症化に関連する因子の一つであることは従来から述べられていた。また,高齢者では活動度が低下すると換気機能の低下が見られるという報告もある。このことから今回のNHCAP研究において日常生活活動や離床時間と栄養摂取方法も含めた栄養指標との影響について関係性が示されたことは理学療法士として栄養面も考慮しながら,主として関わる日常生活活動や離床への介入において今後の高齢者肺炎の一つの予防的指標になるものと思われた。
【理学療法学研究としての意義】今後のさらなる高齢社会の進行に伴い,肺炎による死亡数は増加傾向にある。そのためにも理学療法として重要な離床などの「活動」や「栄養」についてより予防的観点から理学療法介入について検証し,臨床に応用させていくべきと考える。