第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

呼吸3

2015年6月5日(金) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0339] 6分間歩行距離が350m以上のCOPD患者に対する身体活動量の高低による違い

動けるCOPD患者の身体・心理の違いによって身体活動量に差が生じるか

白仁田秀一1,5, 金子秀雄2,5, 江越正次朗3,5, 堀江淳4,5, 今泉潤紀5, 小柳泰亮1,5, 平川史央里1,5, 林真一郎5, 渡辺尚1,5 (1.長生堂渡辺医院, 2.国際医療福祉大学, 3.医療福祉専門学校緑生館, 4.京都橘大学, 5.NPOはがくれ呼吸ケアネット)

キーワード:慢性閉塞性肺疾患, 身体活動量, 胸郭可動性

【はじめに,目的】
近年,COPD患者に対する身体活動量の管理は,生命予後や増悪予後の観点から重要であることが報告され,エビデンスも得られている。一方,身体活動と運動耐容能といった運動能力との関係はエビデンスが低く,運動耐容能が高い症例が必ずしも身体活動量が高くなるとは限らない。今回,本研究は6分間歩行距離(6MWD)が350m以上の動けるCOPD患者において,身体活動量の高低で諸項目を比較し,COPD患者の身体活動量が低くなる原因を考えることを目的とした。

【方法】
身体活動量の評価として国際身体活動量質問票(IPAQ)を用いて調査した。身体活動量の高低差をIPAQカテゴリー2の基準値の600MET分-週で分け,IPAQ600 MET分-週以上(30分/日歩行を週6日以上する程度の活動量)を高活動群,未満を低活動群とした。
対象は6MWDが350m以上の外来COPD患者34例(年齢は71.3±8.2歳,性別は男性31例女性3例,BMIは23.1±3.7,1秒量予測比(%FEV1.0)53.7±18.7%)で,比較する評価項目は,呼吸機能検査(肺活量予測比(%VC),%FEV1.0),在宅酸素療法(HOT)の有無,栄養検査(Mini Nutritional Assessment short(MNA-s)),症状検査(modified Medical Research Council scale(mMRCスケール)),呼吸運動評価スケール(上部胸郭可動性,下部胸郭可動性,腹部可動性),筋力検査(呼気筋力(MEP),吸気筋力(MIP),膝伸展筋力/体重比(%膝伸展筋力)),バランス検査(Timed Up and Go test(TUG)),精神・心理検査(Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)不安,欝),健康統制感検査(日本版Health Locus of Control(JHLC)自然現象(JHLC-n),JHLC自分自身(JHLC-i),JHLC家族(JHLC-f),JHLC医療専門家(JHLC-p),JHLC運・偶然(JHLC-c))とした。
統計解析方法は,2群間の比較は,Leveneの等分散性の検定後,Studentのt検定,Welchのt検定を用いて,HOTの有無はχ2の独立性の検定を用いて分析した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし,解析にはSPSS ver21.0を用いた。

【結果】
高活動群(n=20)と低活動群(n=14)の比較は,%VCは87.8±12.6%vs74.5±13.3%(p<0.01),%FEV1.0は55.6±19.7%vs53.3±17.7%(p=ns),HOT有りは20%vs21%(p=ns),MNA-sは12.8±1.5vs11.9±1.6(p=ns),mMRCスケールは1.3±0.6vs1.5±0.5(p=ns),上部胸郭可動性は2.7±0.9vs2.3±0.8(p=ns),下部胸郭可動性は3.0±1.0vs2.3±0.8(p<0.05),腹部可動性は4.0±1.6vs2.4±0.7(p<0.001),MEPは131.6±41.3 cmH2O vs86.3±42.0 cmH2O(p<0.01),MIPは73.9±24.1 cmH2O vs54.6±30.5cmH2O(p<0.05),%膝伸展筋力は67.4±12.0%vs62.0±12.1%(p=ns),TUGは5.4±0.7秒vs6.0±0.9秒(p=ns),HADS不安は4.1±3.1点vs6.1±2.3点(p=ns),HADS鬱は5.3±2.6点vs6.9±2.7(p=ns),JHLC-nは15.8±5.0点vs17.6±4.9点(p=ns),JHLC-iは24.4±2.4点vs21.4±3.8点(p<0.05),JHLC-fは21.9±3.4点vs19.8±4.1点(p=ns),JHLC-pは20.5±3.4点vs19.3±4.5点(p=ns),JHLC-cは15.6±4.3点vs19.6±4.4点(p<0.05)であった。

【考察】
動けるCOPD患者の低活動群は,%VC,下部胸郭と腹部の可動性,呼吸筋力が高活動群と比較して有意に低値を示した。低活動群は横隔膜を含めた呼吸筋の機能低下が予測される結果であった。また,心理面において,病気管理に対して自分自身でするものと考えている方が低活動群で有意に低値であり,一方,病気管理は運次第であるという考え方が有意に高値あった。病気に対する考え方の違いによって,身体活動量に差が生じていた。その他のmMRCスケール,栄養面,下肢筋力,バランス,HADSなどに有意差は認められず,両群共に比較的に良好な結果であった。
6MWDが350m以上歩行可能であったCOPD患者において,呼吸筋力のデコンディショニングは高活動を困難とさせることが示唆された。また,病気管理に対する違いで身体活動に差が生じており,病気管理に対し,患者個人にあった教育指導が重要であると考えられた。

【理学療法学研究としての意義】
本研究は,動けるCOPD患者の高活動群と低活動群の差をみた検討であり,低活動群のCOPD患者を客観的に示した研究である。本研究結果は身体活動量の向上に向けたプログラム立案のアセスメントとなる研究である。