第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習2

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0362] 臨床実習に対する学生の不安と実習指導者会議の効果について

高橋玲子, 長沼誠, 武田貴好, 舩山貴子, 田中基隆, 福田守, 杉原敏道 (山形医療技術専門学校)

Keywords:実習指導者会議, 臨床実習, 不安

【はじめに,目的】
臨床実習において,学生は「消極的」と捉えられることが多い。これは,学生が環境の変化に戸惑い本来の能力を発揮できていないことに起因すると考えられる。そのため,本校では,実習の導入が円滑に進むよう実習指導者会議(以下SV会議)における実習指導者(以下SV)と学生の面談を重要視している。今回のSV会議では,動作分析をテーマにSVと学生のコミュニケーションを図った。これにより学生の臨床実習に対する不安がどのように変化したのかを調査した。
【方法】
対象は,本校理学療法学科4年生40名とし,SV会議前後と臨床実習直前にアンケートを実施した。アンケートの内容は(1)SV会議へのSV参加の有無,(2)SV会議前の臨床実習に対する不安強度,(3)SV会議前の不安内容,(4)SV会議前の不安内容の順位,(5)SV会議直後の臨床実習に対する不安強度,(6)SV会議直後の不安内容,(7)SV会議直後の不安内容の順位,(8)実習開始直前の臨床実習に対する不安強度,(9)実習開始直前の不安内容,(10)実習開始直前の不安内容の順位の10項目とし,Numeric Rating Scale(NRS)および多項選択回答形式,無制限式複数回答形式,完全順位回答形式を用い回答を得た。得られたデータはSV会議へのSV参加の有無により参加群と不参加群の2群に分類し,不安強度および不安内容の順位を比較検討した。今回,SV以外の出席があった者は比較検討の対象から除外した。統計学的処理にはマンホイットニーのU検定およびX2独立性検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
アンケートの回収率は100%であった。参加群21名,不参加群12名の計33名であった。各群内で実習に対する不安強度は,SV会議前,SV会議直後,実習開始直前で有意な変化は認めなかった。しかし,SV会議直後の不安強度は不参加群と比較し参加群で有意に低値を示した(p<0.05)。学生の不安の傾向として,知識・技術に関して不安をもつ者が多く,次いで,実習中の課題,SVとの人間関係,スタッフとの人間関係,患者様との人間関係に不安をもつ者が多い傾向であった。不安内容の順位では,SVとのコミュニケーションに対する不安に関して参加群のみがSV会議前と比較し,SV会議直後と実習開始直前に変化を認めた。(SV会議直後p<0.01,実習開始直前p<0.05)。
【考察】
今回実施したSV会議は,学生の知識・技術面をSVに把握してもらうことやSVの指導を学生に経験させることを目的に,面談時に学生がSVに対して事前に準備した動作分析をプレゼンテーションするという内容で行った。結果より,各群内でSV会議前後,および実習開始直前の不安強度に変化はみられなかった。しかし,SV参加の有無で比較すると,SV会議直後の不安強度は,参加群で有意に低値を示していた。そのため,今回のSV会議により何らかの不安軽減効果がはたらいたのではないかと考えられる。不安内容の順位をみてみると,参加群におけるSVとのコミュニケーションに対する不安は,SV会議前とSV会議直後,実習開始直前で変化がみられ,SV会議前と比べSV会議以降では順位の低下が認められた。このことから,SV会議による不安の軽減は,SVとコミュニケーションを図ることでSVの人物像に対する理解が深まったことに由来すると考えられる。しかし,各群内での不安強度はSV会議前後で有意差はみられなかった。これは,今回のSV会議のテーマが動作分析だったためと考えられる。学生の臨床実習に対する不安は,知識や技術に対するものが強い傾向にあり,SV会議でSVから動作分析に対し多くのフィードバックを受けたことで,自分の未熟さを改めて実感し不安を強めてしまったのではないかと考える。今後は,学生の知識・技術面への不安に対応するようなSV会議のテーマや,学内教育をさらに検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
昨今,臨床業務の激化などを理由にSV会議そのものの開催を検討する養成校も見受けられる。しかし,本研究の結果より,SV会議でSVとコミュニケーションを図り,事前に相互理解を深めることは学生の過度な不安を軽減させる一助となり得ると考えられる。また,多くの学生が知識・技術に対し不安を抱えていることが明らかになったことから,今後の臨床実習対策に繋がると考えられる。