第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習3

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-B-0364] 臨床実習開始前後における学生のストレス自覚とその対応変化について

―アパシーとの関係,ストレスピーク時期とその内容と対応から―

濱田輝一1, 二宮省悟1, 吉村修2, 楠本正順2 (1.九州看護福祉大学看護福祉学部, 2.医療法人社団慶仁会川﨑病院)

Keywords:臨床実習, ストレス, 対応

【はじめに,目的】
我々は,より良い臨床実習指導体制の構築の為に,H23年度から臨床実習指導の現状把握を目的に,まず指導者を対象に調査を行い,第48回及び第49回本学術大会にて発表した。今回,対象を学生に置き,実習遂行での障壁の1つと考えられる「ストレス」に着目し実習開始前と終了後で比較検討することを目的とした。
【方法】
本学3年次生83名を対象とし,調査期間を3つ設定。アパシーは平成25年4月3日から6か日間。実習前調査は平成25年7月17日から翌日まで。実習(8週間)後調査は,平成26年3月12日から翌日まで。方法は,質問紙無記名回答で,選択肢と自由記載の2種。質問紙事前処理として,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適切と判断したものは除外した。その結果,有効回答54名。(男31名,女23名。20.6±0.68歳。)課題は,以下の点とし処理・検討した。1.アパシーとの関係(散布図,スピアマンの積率相関係数)と実習前後での比較:1)自覚ストレス耐性強度(VAS選択肢:0~10),2)ストレス解消の手段個数。2.ストレスピーク時期とその原因,及び対処方法(数と内容をカテゴリーで分析)。
【結果】
課題1.アパシー総得点との関係では,以下の2項目とも実習前後で関係は見られなかった。1)自覚ストレス耐性強度:実習前(以降,前)r=0.067,実習後(以降,後)r=0.028。前後比較では,ストレス耐性強度:前4.03±2.32,後4.41±2.37。t=0.843,P<0.05。2)ストレス解消の手段個数:前r=0.0670 r=0.35578,後r=0.028。前後比較では,前2.89±1.65,後2.26±1.37,t=2.029,P>0.05。アパシーと自覚ストレス強度の増減:前 r=0.3558,後r=0.054。
課題2.ストレスピーク時期と原因(後のみ):1)時期(VAS:max~min,mean・SD);1~8週目,3.98±2.48週目。2)ピーク時のストレスの原因:最頻値順でその因をみると,「感情」要因:18件,23%(内訳:進行・終了の目途,できないこと,焦り・不安,失敗,現場での緊張,メンタルの弱さ,未熟の認識など)。「環境」要因:14件,19%(内訳:生活や施設に慣れない,施設遠い,他)。「課題・レポート」要因:14件,19%(内訳:課題多い,完成の苦労など)。「知識・技術不足」要因:12件,17%(内訳:行動力ない,下手など)。「対人関係」要因:11件,15%(内訳:SV・CVとの関係:8,職員:2,患者:1)。「体力」要因:4件,6%(内訳:睡眠不足,疲労)。3)(1)ストレスの解消方法の個数(max~min,mean・SD):<前>1~8個,2.71±1.51個。<後>0~7個,2.25±1.39個,前後で比較(t検定)すると,t=2.029,P<0.05で,実習前(以降,前)より実習後(以降,後)の方が少ないと言えた。(2)解消方法(実習前は第1位が複数回答から1位のみ74件,後は第1~3位の112件を採用):方法を4つに区分。まず「運動系」解消法(含,発散系)は,スポーツ,飲食,泣くが該当し,その計は前:24件(38.7%),後:36件(32.1%)。「休息系」解消法(含,非効率)系は,睡眠,音楽鑑賞,入浴などの計,前:12件(19.4%),後:38件(33.9%)。「気分転換系」解消法では,該当の歌う・カラオケ,外出・買物などの計,前:16件(16.1%),後:21件(15.2%)。「交流系」解消法は,友人と話す,携帯で長電話などの計,前:10件(16.3%)に対し後:17件(15.2%)であった。
【考察】
8週間の実習でストレスが最大になるのは,概ね中間期・4週目(mean±SD:1.5~6週)であり,その原因は,学生自身の知識技術不足もさることながら,普段と違った生活・学習環境も学習活動に影響し,実習における焦りや不安など感情的なものが主体となっていることが伺えた。また,その解消方法が心身疲労を発散させる活発な行動から,実習後には心身を休ませる睡眠,入浴などの静的行動に移行したと考えられ,その結果として,実習前より実後の方が解消の方法数が減じたと推測できる。今後も充実した臨床実習教育のあり方について,引き続き検討が必要であろう。
【理学療法学研究としての意義】
今回の調査より,実習を養成校,実習施設へ繋ぎ,また学習課題に偏らず,円滑で精神的サポートにも配慮した実習が遂行できる様に生活環境も含めた総合的支援の必要性がわかったことから,より良い臨床実習教育システムの構築に結びつける為のstepとして,大変意義がある。