第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター2

神経/脳損傷2

2015年6月5日(金) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0043] 能動的注意を用いたアプローチにより移乗動作能力向上を認め
た片麻痺患者の理学療法

城内洋人 (医療法人大植会葛城病院)

キーワード:能動的注意, 弁別, 運動学習

【目的】
大植らは能動的注意という認知機能は,感覚情報を効率的に処理し,身体運動や運動学習を適切に行う上で重要な役割を果たすとしている。今回,臨床的に能動的注意を用いたアプローチによって移乗動作能力の向上を認めた右片麻痺症例を担当したので報告する。
【症例提示】
70歳代男性。左中大脳動脈閉塞による右片麻痺を呈していた。MRI所見では左視床に高信号を認めた。初期評価19病日目は,BRS上肢III手指IV下肢IV,中等度の感覚鈍麻,ROM制限なし,MAS 0,DTR++,TMT A508秒,B途中中断,移乗動作はFIM2点,体幹伸展,骨盤後傾,右回旋,両股・膝関節軽度屈曲位で臀部離床,立位における右下肢筋の収縮は乏しく,左上下肢の押し付けの為,臀部の回旋,足部の踏み換え困難が生じた。主訴は移乗時「右足消えて力入らん」であった。
【経過と考察】
触覚の形状識別を伴う課題においてHaradaらが,前頭-頭頂領域の賦活に関しては,能動的注意を伴う識別に必要な活動としていることから,2種類の形状のボールを足底に当て弁別する課題を実施。結果,右下肢への注意,筋出力,主訴が改善,その後動作反復した。33病日後の評価では軽度の感覚鈍麻,TMT A218秒,B326秒に改善し移乗動作はFIM6点となり体幹,骨盤の前傾出現,臀部の回旋や足部の踏み換えが可能となった。Luiらは能動的な触覚の弁別の際に小脳が働くとしており,山田らは弁別課題を組み込むことによって運動学習の際に賦活するとされている領域とほぼ一致していることから,身体機能の向上とも関連しているとある。本例はアプローチによって運動学習が進んだ可能性があり,これは臨床的に単純な運動の反復だけでなく,そこに弁別や注意などの課題を課すことで,学習効果が得られることを示唆するのではないかと考える。