[P1-C-0046] 重度半側空間無視を呈した脳卒中患者における回復過程と機能代償の関連性
新たなPCベースの評価システムを用いた検討
Keywords:半側空間無視, 脳卒中, 評価
【目的】
半側空間無視(USN)は脳卒中後機能的予後の低下の一因となることから,その改善はリハビリテーションにおいて重要な課題である。USNの評価として行動性無視検査(BIT)があるが,無視症状の病態を詳細に評価するには不十分である。今回,新たなPCベースの評価システムを使用し,重度USNを呈した脳卒中患者の回復過程を追跡した。
【症例提示】
右皮質下出血と診断された60歳代の女性である。発症時意識レベルJCSII-20で,同日開頭血腫除去術を施行された。術後の経過は良好で,発症60日後にA病院回復期リハビリテーション病棟に転院となった。
【経過と考察】
入院時,BITにて通常検査75点,行動検査40点と重度のUSNを認め,食事は皿の左側を残す,車椅子自走では左側がぶつかる等の行動を認めた。FIMは52点であったため,USNに対しては機能的アプローチを実施した。入院1ヶ月でBITにおける通常項目の改善を認めたが,4か月後も行動項目や描画項目は低下していた。Catherine Bergego scaleでは,入院1か月で主観10点,客観13点と解離を認めたが,4か月後には主観3点,客観4点となった。タッチパネルPCのディスプレイ上に配置した円形オブジェクトの選択反応課題を用いて反応時間を分析した結果,当初左空間の反応時間が低下していたが,入院2か月後には左右の空間で反応時間が改善した。入院4か月後には左空間の反応時間の更なる改善を認めたが,同時に右空間の反応時間の低下を認めた。行動では,常に頚部を左回旋させる代償的注意が認められたが,課題を負荷するとUSNが顕在化した。本症例は機能的アプローチにて病識の向上とADLの改善を認めたが,認知負荷によりUSNが顕在化したことから,左空間への注意向上は代償によるものであり,さらなる症状改善のためのアプローチが必要であると考えられた。本症例の経過観察と選択反応課題の成績分析により,USNの回復過程と機能代償の関連性を把握することが可能であった。
半側空間無視(USN)は脳卒中後機能的予後の低下の一因となることから,その改善はリハビリテーションにおいて重要な課題である。USNの評価として行動性無視検査(BIT)があるが,無視症状の病態を詳細に評価するには不十分である。今回,新たなPCベースの評価システムを使用し,重度USNを呈した脳卒中患者の回復過程を追跡した。
【症例提示】
右皮質下出血と診断された60歳代の女性である。発症時意識レベルJCSII-20で,同日開頭血腫除去術を施行された。術後の経過は良好で,発症60日後にA病院回復期リハビリテーション病棟に転院となった。
【経過と考察】
入院時,BITにて通常検査75点,行動検査40点と重度のUSNを認め,食事は皿の左側を残す,車椅子自走では左側がぶつかる等の行動を認めた。FIMは52点であったため,USNに対しては機能的アプローチを実施した。入院1ヶ月でBITにおける通常項目の改善を認めたが,4か月後も行動項目や描画項目は低下していた。Catherine Bergego scaleでは,入院1か月で主観10点,客観13点と解離を認めたが,4か月後には主観3点,客観4点となった。タッチパネルPCのディスプレイ上に配置した円形オブジェクトの選択反応課題を用いて反応時間を分析した結果,当初左空間の反応時間が低下していたが,入院2か月後には左右の空間で反応時間が改善した。入院4か月後には左空間の反応時間の更なる改善を認めたが,同時に右空間の反応時間の低下を認めた。行動では,常に頚部を左回旋させる代償的注意が認められたが,課題を負荷するとUSNが顕在化した。本症例は機能的アプローチにて病識の向上とADLの改善を認めたが,認知負荷によりUSNが顕在化したことから,左空間への注意向上は代償によるものであり,さらなる症状改善のためのアプローチが必要であると考えられた。本症例の経過観察と選択反応課題の成績分析により,USNの回復過程と機能代償の関連性を把握することが可能であった。