第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター3

神経/脳損傷3

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0051] HAL®福祉用を用いて立位での代償を制御した理学療法介入により歩行能が改善した維持期頸髄不全損傷者

柳澤和彦1, 荒木健1, 高田博史1, 佐久間恵1, 西田涼花1, 林雅弘2, 浅田啓嗣3 (1.奈良県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション科, 2.奈良県総合リハビリテーションセンター整形外科, 3.鈴鹿医療科学大学保健衛生学部理学療法学科)

Keywords:脊髄損傷, ロボット, 代償動作

【目的】
近年,ロボットスーツHAL®福祉用(以下HAL)の導入施設は増加し,様々な報告が行われている。しかし,研究報告が多く具体的介入内容について言及した報告は少ない。今回,我々は維持期不全脊髄損傷者に対して立位で代償を制御しながらHALを用いた介入で歩行能が改善した症例を経験したので報告する。

【症例提示】
70代男性,維持期頚髄不全損傷者(改良FrankelD1,ASIA-D)で,四肢麻痺(右>左)を呈し,院内杖歩行監視レベルであった。下肢MMT(Rt)は,股関節屈曲2 外転2+足関節底屈2,ROM(Rt)は,股関節伸展-5°膝関節伸展-10°足関節背屈(膝伸展)0°であった。歩行は,常時体幹前傾左側屈であった。右立脚期では,杖での支持量が多く不安定で股膝関節屈曲位で重心上昇がみられず,骨盤が外側動揺する代償動作がみられた。HALでの歩行では,立脚期の骨盤後外側動揺および体幹前傾左側屈が残存し体幹下肢に対する十分な介入効果が得られないと考えた。

【経過と考察】
入院にて4週間,週5日,通常の理学療法を20-30分/日,HAL装着下で30-40分/日を実施した。HALによるアシストおよび膝関節や股関節の可動域制動を活用し,股膝関節伸展(下肢後面筋の伸張を伴う収縮)や左上肢でのリーチ動作を通じて右下肢荷重,左体幹前面筋の伸張を促した。結果,体幹前傾左側屈の軽減および右下肢支持性が向上し,歩行速度(入院時/退院時)が,0.36/0.50m/s,TUGは30/20秒,3分間歩行距離は87.5/99mと向上した。症例は,残存した体幹下肢機能を十分に生かせない体幹アライメントを継続し,特定の筋を過剰に使用していたと考えた。HALを用いた立位での骨盤下肢の代償制御下での体幹下肢の筋活動向上介入は,適正な感覚入力および良好な重心制御を促し,効果的な運動学習に繋がったと考えた。本報告の限界は,HALを用いない期間を設定していないため,必ずしもHALの効果だとは言い難い点が上げられる。