第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

調査研究 ポスター2

神経理学療法

2015年6月5日(金) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0087] 半側空間無視が脳卒中後の麻痺側肩関節に与える影響

―パス解析を用いた予備的検討―

湯田智久, 生野公貴, 徳久謙太郎, 尾川達也 (西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:脳卒中, 肩関節の痛み, 半側空間無視

【目的】
脳卒中後の麻痺側肩関節の痛み(PSSP)の原因として侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛が考えられているが,成因は明らかでなく,多くの要因が関連している。Pompa(2011)は半側空間無視(USN)を関連要因として挙げているが,USNがどのようにPSSPに影響を与えるかは不明である。そこで本研究では,身体空間の無視(PN)は身体周辺空間の無視(PPN)に比べてPSSPに影響するという仮説,USNが肩関節他動運動時の痛み(組織損傷)を介してPSSPにつながるという仮説をパス解析にてモデル化し,USNがPSSPに与える影響について予備的に検討することを目的とした。
【方法】
脳卒中により片麻痺の症状を呈した16名を対象(年齢67.1±14.2歳,男性5名,女性11名,脳梗塞6名,脳出血6名,左麻痺9名,右麻痺3名)とした。発症後平均日数は135.3±113.2日であった。PSSPは安静時,夜間時,自動運動時,他動外旋時の痛みをNumeral Rating Scale(NRS)にて測定し,他動外旋時の最終域以外で生じる,最も強度の低い値とした。PNの指標はThe Fluff Testの所要時間(TFT)とし,PPNの指標は線分二等分線(高値である程無視が軽度)とした。統計解析は他動外旋時の痛み,PSSP,TFT,線分二等分線の4変数にてパス解析を行い,その標準化偏回帰係数(パス係数)から関連性を検討した。有意水準は5%とした。
【結果と考察】
PSSPに対して二等分線のパス係数はβ=0.454(p<.01),TFTのパス係数はβ=0.169(p<.31)であった。外旋時の痛みに対して二等分線のパス係数はβ=-0.264(p<.25),TFTのパス係数はβ=0.343(p<.14)であった。PSSPに対する外旋時の痛みのパス係数はβ=0.692(p<.01)であり,TFT・二等分線から外旋時の痛みを介したPSSPへの間接効果はβ=0.237・β=-0.183であった。
PPNは直接PSSPには関連がなく,外旋時の痛みへの関与もわずかであった。PNは他動外旋時への関連が強く,肩関節の組織損傷を介してPSSPにつながることが示唆された。