[P1-C-0128] 膝関節伸展筋筋力と肺活量・胸腰部側屈・回旋可動性の関係
キーワード:膝伸展筋力, 肺活量, 胸腰部可動域
【はじめに・目的】
膝関節伸展筋力は下肢筋力の中で起居・移動動作に最も関与するとされており,多くの先行研究がある。黄川らはスポーツ活動時の体重支持における大腿四頭筋の重要性から,体重当たりの膝関節伸展筋力を体重支持指数(weight bearing index:以下WBI)として表すことを提唱し以後,WBIは人が重力に対しどれだけの運動機能を持っているかを示す指数であり,また体力を表す指数として,臨床で多く活用されている。また山本らはWBIと立ち上がり動作に高い相関があると報告している。また脇元らは,WBIには脊柱の柔軟性機能が重要であるとし,中でも胸椎の柔軟性機能の関与が大きいと報告している。さらに,健常人と慢性疼痛者の胸椎および腰椎弯曲角度の違いについて検討しており,慢性疼痛者と健常人の腰椎弯曲角度には差はなく,胸椎弯曲角度では有意に小さくなったと報告している。そこで今回,膝関節伸展筋力と胸郭機能評価として,肺活量・胸腰部可動域の測定を行い検討した。比較項目は,膝伸展筋力・肺活量と胸椎回旋および側屈可動域とした。胸郭機能評価として肺活量を選択した理由として,簡易的かつ再現性があるため採用した。
【対象者・方法】
対象は体幹・下肢機能に問題なく喫煙歴を持たない男女13名(男性7名,女性6名 平均年齢24.54歳,平均身長166.77cm,平均体重58.15kg)とした。
膝伸展筋力は両側股関節屈曲90°中間位,両側膝関節90°の端座位,体幹垂直位で利き足(ボールを蹴る足)の最大等尺性収縮筋力を2回測定し,最高値を採用した。収縮時間は5秒間とした。測定にはハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製,等尺筋力測定装置μ-TasF-1)を使用し,最大値を体重比百分率(%)に換算して行った。測定に際し,代償を防ぐため上肢は腕組み,対側足底は床面接地させた状態で測定した。肺活量は端座位,体幹垂直位,両足底非接地にて測定した。測定にはオートスパイロAS-507(MINATO社製)を用いた。測定に際し,鼻腔をグリップで塞ぎ,安静呼吸後,1回換気量を安定させたのち測定を行った。胸腰部側屈・回旋可動域測定はゴニオメーターを用い,日本整形外科学会身体障害委員会が提示する方法に準じて端座位にて,1度単位で測定した。代償を防ぐために骨盤を固定させた状態で測定した。それぞれ左右測定し,合計した数値を使用した。統計処理にはSPSSを用い,膝伸展筋力と胸腰部可動域,肺活量と胸腰部可動域,肺活量と膝伸展筋力の関係にはそれぞれPearsonの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。
【結果】
膝関節伸展筋力(0.79±0.25)と側屈合計(43.54±11.13)で中等度の相関(r=0.63 p<0.05)を示した。膝関節伸展筋力と回旋合計(71.08±13.21)で相関はみられなかった(r=0.472 p<0.15)を示した。肺活量(89.08±10.27)と側屈合計で高い相関(r=0.738 p<0.01)を示した。肺活量と回旋合計では相関はみられなかった(r=0.542 p<0.15)を示した。肺活量と膝関節伸展筋力で中等度の相関(r=0.562 p<0.05)を示した。
【考察】
胸腰部側屈可動性が膝関節伸展筋力に影響を及ぼしていることが示唆された。これは膝関節伸展筋力の評価・トレーニングを行う際,胸腰部側屈の評価・柔軟性向上へのアプローチが必要であることを示す結果となった。また胸腰部側屈可動域が肺活量に影響を及ぼしていることが示唆された。胸腰部側屈へのアプローチが肺活量,膝関節伸展筋力の向上にも繋がることが示唆された。今後は,男女間での比較も含め,胸椎可動性と自律神経機能の関係について検討したい。
【理学療法学研究としての意義】
膝関節伸展筋力と胸腰部側屈に相関を示したことは,筋力だけでなく胸郭,胸腰部の評価の必要性を示すものである。また側屈の評価で,簡易的な肺活量の評価が可能であることが示され,膝関節伸展筋力と肺活量で相関を示したことから,胸郭アプローチの重要性が示された。筋力訓練を行うにあたり,個の筋への訓練法だけでなく,胸腰部側屈可動域の評価・アプローチも重要であると考える。
膝関節伸展筋力は下肢筋力の中で起居・移動動作に最も関与するとされており,多くの先行研究がある。黄川らはスポーツ活動時の体重支持における大腿四頭筋の重要性から,体重当たりの膝関節伸展筋力を体重支持指数(weight bearing index:以下WBI)として表すことを提唱し以後,WBIは人が重力に対しどれだけの運動機能を持っているかを示す指数であり,また体力を表す指数として,臨床で多く活用されている。また山本らはWBIと立ち上がり動作に高い相関があると報告している。また脇元らは,WBIには脊柱の柔軟性機能が重要であるとし,中でも胸椎の柔軟性機能の関与が大きいと報告している。さらに,健常人と慢性疼痛者の胸椎および腰椎弯曲角度の違いについて検討しており,慢性疼痛者と健常人の腰椎弯曲角度には差はなく,胸椎弯曲角度では有意に小さくなったと報告している。そこで今回,膝関節伸展筋力と胸郭機能評価として,肺活量・胸腰部可動域の測定を行い検討した。比較項目は,膝伸展筋力・肺活量と胸椎回旋および側屈可動域とした。胸郭機能評価として肺活量を選択した理由として,簡易的かつ再現性があるため採用した。
【対象者・方法】
対象は体幹・下肢機能に問題なく喫煙歴を持たない男女13名(男性7名,女性6名 平均年齢24.54歳,平均身長166.77cm,平均体重58.15kg)とした。
膝伸展筋力は両側股関節屈曲90°中間位,両側膝関節90°の端座位,体幹垂直位で利き足(ボールを蹴る足)の最大等尺性収縮筋力を2回測定し,最高値を採用した。収縮時間は5秒間とした。測定にはハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製,等尺筋力測定装置μ-TasF-1)を使用し,最大値を体重比百分率(%)に換算して行った。測定に際し,代償を防ぐため上肢は腕組み,対側足底は床面接地させた状態で測定した。肺活量は端座位,体幹垂直位,両足底非接地にて測定した。測定にはオートスパイロAS-507(MINATO社製)を用いた。測定に際し,鼻腔をグリップで塞ぎ,安静呼吸後,1回換気量を安定させたのち測定を行った。胸腰部側屈・回旋可動域測定はゴニオメーターを用い,日本整形外科学会身体障害委員会が提示する方法に準じて端座位にて,1度単位で測定した。代償を防ぐために骨盤を固定させた状態で測定した。それぞれ左右測定し,合計した数値を使用した。統計処理にはSPSSを用い,膝伸展筋力と胸腰部可動域,肺活量と胸腰部可動域,肺活量と膝伸展筋力の関係にはそれぞれPearsonの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。
【結果】
膝関節伸展筋力(0.79±0.25)と側屈合計(43.54±11.13)で中等度の相関(r=0.63 p<0.05)を示した。膝関節伸展筋力と回旋合計(71.08±13.21)で相関はみられなかった(r=0.472 p<0.15)を示した。肺活量(89.08±10.27)と側屈合計で高い相関(r=0.738 p<0.01)を示した。肺活量と回旋合計では相関はみられなかった(r=0.542 p<0.15)を示した。肺活量と膝関節伸展筋力で中等度の相関(r=0.562 p<0.05)を示した。
【考察】
胸腰部側屈可動性が膝関節伸展筋力に影響を及ぼしていることが示唆された。これは膝関節伸展筋力の評価・トレーニングを行う際,胸腰部側屈の評価・柔軟性向上へのアプローチが必要であることを示す結果となった。また胸腰部側屈可動域が肺活量に影響を及ぼしていることが示唆された。胸腰部側屈へのアプローチが肺活量,膝関節伸展筋力の向上にも繋がることが示唆された。今後は,男女間での比較も含め,胸椎可動性と自律神経機能の関係について検討したい。
【理学療法学研究としての意義】
膝関節伸展筋力と胸腰部側屈に相関を示したことは,筋力だけでなく胸郭,胸腰部の評価の必要性を示すものである。また側屈の評価で,簡易的な肺活量の評価が可能であることが示され,膝関節伸展筋力と肺活量で相関を示したことから,胸郭アプローチの重要性が示された。筋力訓練を行うにあたり,個の筋への訓練法だけでなく,胸腰部側屈可動域の評価・アプローチも重要であると考える。