[P1-C-0140] 足関節底屈角度の違いが膝関節の動揺に及ぼす影響
―3軸加速度計を用いた分析―
Keywords:ヒール靴, 歩行, 加速度
【はじめに,目的】ハイヒールは若い女性を中心に人気を集めており,これまでにハイヒールを用いた研究は種々報告されている。しかし,ヒール靴での歩行が膝関節の動揺にどのような影響を及ぼしているかはこれまで検討されておらず,不明な点が多い。そこで本研究では,膝関節部に3軸加速度センサを取り付け,ヒール靴での歩行が膝関節の動揺にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的に実験を行った。
【方法】対象は下肢に整形外科学的な既往のない健常者女性10名とした(年齢21±1.1歳,身長159.7±4.6cm,体重47.7±4.3kg)。すべての被験者は,日常生活にてヒール靴を愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。本研究で用いたヒール靴は踵部分が楔状にできており,1枚が1cmの楔状板をベルクロで強固に固定された靴を採用した。ヒール高の設定に関しては,被験者により足長が異なるため,補高を一定にすると足関節の底屈角度に差異が生じることが懸念された。そのため,靴を装着した状態での足関節底屈角度が20°および40°となるようにヒール高を算出し,楔状板の枚数を調節した。これにより足関節の底屈角度が一定となるように設定した。足関節の前面のベルクロは,歩行中の足関節の動きを妨げることのないように装着位置を調整した。加速度の測定には,3軸加速度センサ(マイクロストーン社製,MA-3-04c)を用いた。センサは右下肢の腓骨頭部に取り付けた。センサの出力方向は,垂直方向がX軸,前後方向がY軸,側方方向がZ軸となるように設置し,非収縮性のテープで強固に固定した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(LS150/C,NEC社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。サンプリング周波数は先行研究に準じて100Hzと設定した。被験者は測定に使用する靴およびセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。測定の手順は足関節底屈角度0°,20°,40°の順に行った。歩行距離は10mとし,歩行開始から最初の1~3歩行周期を除いて4~6歩行周期の右下肢立脚期のデータを抽出した。被験者により1歩行周期の時間が異なるため,立脚期時間で正規化した。歩行中に被験者がバランスを崩した際は,再度測定した。各角度にて3回の測定を行い,立脚相のデータを平均化した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用い各角度における膝関節の動揺について一元配置分散分析を行い,有意水準5%にて有意差と判断した。
【結果】各角度における立脚期中の動揺は,足関節底屈0°と20°の波形に対して足関節底屈40°の波形では立脚期を通してびまん性の動揺を示し,他の波形に比して動揺が少ない傾向を示していた。足関節0°と20°の波形は類似した波形となり,LRでは動揺が減少,Mstでは増加したのちに1次ピークをむかえ,その後Tstでは減少した。また,Pswでは,動揺が増加し2次ピークをむかえる結果となった。一方で足関節底屈40°ではMstとPswにて動揺する結果は類似しているが,立脚初期ではびまん性に動揺している点と,立脚後期での動揺の程度が低い点が,足関節底屈0°と20°とは異なっていた。しかし,いずれの足関節底屈角度においても各時期における群間の比較に有意差は認められなかった。
【考察】ヒール靴での歩行は,裸足歩行に比して立脚初期では動揺が増加するが,立脚後期では動揺が減少する傾向が得られた。これについてはヒール靴による不安定さを,筋出力を増加して担保している可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については議論されておらず不明な点が多い。今回,膝関節の動揺について加速度計を用いて検討し,ヒール靴が立脚期のどの時期に不安定さをもたらすのかを明らかにした。これは履物が身体に及ぼす影響を明らかにした研究として意義がある。
【方法】対象は下肢に整形外科学的な既往のない健常者女性10名とした(年齢21±1.1歳,身長159.7±4.6cm,体重47.7±4.3kg)。すべての被験者は,日常生活にてヒール靴を愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。本研究で用いたヒール靴は踵部分が楔状にできており,1枚が1cmの楔状板をベルクロで強固に固定された靴を採用した。ヒール高の設定に関しては,被験者により足長が異なるため,補高を一定にすると足関節の底屈角度に差異が生じることが懸念された。そのため,靴を装着した状態での足関節底屈角度が20°および40°となるようにヒール高を算出し,楔状板の枚数を調節した。これにより足関節の底屈角度が一定となるように設定した。足関節の前面のベルクロは,歩行中の足関節の動きを妨げることのないように装着位置を調整した。加速度の測定には,3軸加速度センサ(マイクロストーン社製,MA-3-04c)を用いた。センサは右下肢の腓骨頭部に取り付けた。センサの出力方向は,垂直方向がX軸,前後方向がY軸,側方方向がZ軸となるように設置し,非収縮性のテープで強固に固定した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(LS150/C,NEC社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。サンプリング周波数は先行研究に準じて100Hzと設定した。被験者は測定に使用する靴およびセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。測定の手順は足関節底屈角度0°,20°,40°の順に行った。歩行距離は10mとし,歩行開始から最初の1~3歩行周期を除いて4~6歩行周期の右下肢立脚期のデータを抽出した。被験者により1歩行周期の時間が異なるため,立脚期時間で正規化した。歩行中に被験者がバランスを崩した際は,再度測定した。各角度にて3回の測定を行い,立脚相のデータを平均化した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用い各角度における膝関節の動揺について一元配置分散分析を行い,有意水準5%にて有意差と判断した。
【結果】各角度における立脚期中の動揺は,足関節底屈0°と20°の波形に対して足関節底屈40°の波形では立脚期を通してびまん性の動揺を示し,他の波形に比して動揺が少ない傾向を示していた。足関節0°と20°の波形は類似した波形となり,LRでは動揺が減少,Mstでは増加したのちに1次ピークをむかえ,その後Tstでは減少した。また,Pswでは,動揺が増加し2次ピークをむかえる結果となった。一方で足関節底屈40°ではMstとPswにて動揺する結果は類似しているが,立脚初期ではびまん性に動揺している点と,立脚後期での動揺の程度が低い点が,足関節底屈0°と20°とは異なっていた。しかし,いずれの足関節底屈角度においても各時期における群間の比較に有意差は認められなかった。
【考察】ヒール靴での歩行は,裸足歩行に比して立脚初期では動揺が増加するが,立脚後期では動揺が減少する傾向が得られた。これについてはヒール靴による不安定さを,筋出力を増加して担保している可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については議論されておらず不明な点が多い。今回,膝関節の動揺について加速度計を用いて検討し,ヒール靴が立脚期のどの時期に不安定さをもたらすのかを明らかにした。これは履物が身体に及ぼす影響を明らかにした研究として意義がある。