[P1-C-0163] 偏平足を有する者の膝関節障害予防に対する足趾開閉運動の即時効果
キーワード:偏平足, 膝関節障害予防, 足趾開閉運動
【はじめに,目的】
リハビリテーションの領域では,足趾エクササイズとしてタオルギャザーや足趾開排運動等が神経筋協調性トレーニングの一環として行われている。また,競技復帰に向けたアスレティックリハビリテーションやトレーニングにおいても同様のエクササイズが行われている。足趾把持筋力は性別,年齢の影響を受け,姿勢制御,歩行速度との関連が強いと報告されている。そのため足趾エクササイズによって若年健常者では身体運動機能の向上,姿勢制御機能の改善が得られることが報告されている。しかし,スポーツ現場において,ウォーミングアップ時に足部のエクササイズを行っている様子をほとんど見たことがない。そこで,扁平足を有している者でも,足趾開閉運動の即時効果により膝の動揺が減少しニュートラルポジションに近づくと仮説をたて,検証したため報告する。
【方法】
対象者は偏平足を有する健常大学生女性:18名(年齢:19.4±0.8,身長:157.7±0.02,体重:49.3±1.90)とし,除外基準は整形外科疾患がないものとした。扁平足の基準となる足部縦アーチは(アーチ高率)武田らの簡易測定法に従い,舟状骨高mm/足長mmで算出し11%以上を健常足とし,11%未満を偏平足とした。動作中の関節座標位置の測定には,3次元解析装置(VICON-MX)と床反力計(ATMI)を用いて測定を行った。反射マーカーは合計36点(頭部4,胸郭5,肩甲骨1,骨盤4,上肢5×2,下肢6×2)のマーカーを貼り付けた。被験者は,運動あり(以下T群),運動なし(以下C群)に分け測定した。課題動作として,20cm台からの片脚着地動作を実施した。片脚着地動作に使用する脚は利き脚とし,本実験の利き脚の定義としては,ボールを蹴る側の下肢とした。20cm台の上に片脚で立ち,反対側の足の位置は立脚側よりも後ろになるようにした。いずれの着地動作も,台上にある身体の位置がそれ以上高くさせないために,天板より上方へ飛び上がらないように注意し,前方へ落下させた。また,両上肢は腰に当てた。測定回数は3回の練習を行った後に,3回の成功動作を測定した。上記の内容を足趾運動の前後で行った。足趾運動として,メトロノーム音に合わせて足趾開閉運動を10回×5セット行った。飛び降りた後,つま先が床に接地した時点をイニシャルコンタクト(以下IC),上前腸骨棘が最も下方に位置した時点をランディングポジション(以下LD),床反力が最も高値を示した時点(以下MGRF)を抜き出し,質量重心(以下COM)と股関節・膝関節・足関節の角度とモーメントを算出した(関節角度・モーメントともにX・Y・Z成分を分析した)。これらの項目に対して,運動前後の変化量を求め,T群とC群間にて比較検討した。統計処理は統計ソフトSPSSを用いて対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし,それ未満を優位とした。
【結果】
MGRF時点での介入前後のCOM変化量では左右方向(X成分)は,T群が5.1±13.1mm,C群が23.4±20.6mmに比べ右方向への動揺が大きかった(P<0.05)。その他の項目には有意差は認められなかった。
【考察】
結果より,MGRF時点での右方向への動揺がT群の方で少なかった。扁平足を有するものでは,足部の剛性が低いため,足趾開閉運動により,足部の剛性が高まり,右方向への動揺がC群に比べ少なくなったと考える。しかし,我々の仮説とは反して,膝角度外反角度減少の即時効果は認められず,また,その他の検査項目でも特に有意差は認められなかった。偏平足を有するものでは,足部の剛性が低いため,足部機能が低下している。そのため,足趾開閉運動の即時効果は少なく,上行性の運動連鎖を改善するには至らないと考える。よって,偏平足を有しているものでは,継続的に中・長期的な足趾開閉運動練習が必要なのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
足部のトレーニング効果を把握することで今後のウォーミングアップ時の足部エクササイズが膝関節障害予防に役立てる。
リハビリテーションの領域では,足趾エクササイズとしてタオルギャザーや足趾開排運動等が神経筋協調性トレーニングの一環として行われている。また,競技復帰に向けたアスレティックリハビリテーションやトレーニングにおいても同様のエクササイズが行われている。足趾把持筋力は性別,年齢の影響を受け,姿勢制御,歩行速度との関連が強いと報告されている。そのため足趾エクササイズによって若年健常者では身体運動機能の向上,姿勢制御機能の改善が得られることが報告されている。しかし,スポーツ現場において,ウォーミングアップ時に足部のエクササイズを行っている様子をほとんど見たことがない。そこで,扁平足を有している者でも,足趾開閉運動の即時効果により膝の動揺が減少しニュートラルポジションに近づくと仮説をたて,検証したため報告する。
【方法】
対象者は偏平足を有する健常大学生女性:18名(年齢:19.4±0.8,身長:157.7±0.02,体重:49.3±1.90)とし,除外基準は整形外科疾患がないものとした。扁平足の基準となる足部縦アーチは(アーチ高率)武田らの簡易測定法に従い,舟状骨高mm/足長mmで算出し11%以上を健常足とし,11%未満を偏平足とした。動作中の関節座標位置の測定には,3次元解析装置(VICON-MX)と床反力計(ATMI)を用いて測定を行った。反射マーカーは合計36点(頭部4,胸郭5,肩甲骨1,骨盤4,上肢5×2,下肢6×2)のマーカーを貼り付けた。被験者は,運動あり(以下T群),運動なし(以下C群)に分け測定した。課題動作として,20cm台からの片脚着地動作を実施した。片脚着地動作に使用する脚は利き脚とし,本実験の利き脚の定義としては,ボールを蹴る側の下肢とした。20cm台の上に片脚で立ち,反対側の足の位置は立脚側よりも後ろになるようにした。いずれの着地動作も,台上にある身体の位置がそれ以上高くさせないために,天板より上方へ飛び上がらないように注意し,前方へ落下させた。また,両上肢は腰に当てた。測定回数は3回の練習を行った後に,3回の成功動作を測定した。上記の内容を足趾運動の前後で行った。足趾運動として,メトロノーム音に合わせて足趾開閉運動を10回×5セット行った。飛び降りた後,つま先が床に接地した時点をイニシャルコンタクト(以下IC),上前腸骨棘が最も下方に位置した時点をランディングポジション(以下LD),床反力が最も高値を示した時点(以下MGRF)を抜き出し,質量重心(以下COM)と股関節・膝関節・足関節の角度とモーメントを算出した(関節角度・モーメントともにX・Y・Z成分を分析した)。これらの項目に対して,運動前後の変化量を求め,T群とC群間にて比較検討した。統計処理は統計ソフトSPSSを用いて対応のないt検定を行った。有意水準は5%とし,それ未満を優位とした。
【結果】
MGRF時点での介入前後のCOM変化量では左右方向(X成分)は,T群が5.1±13.1mm,C群が23.4±20.6mmに比べ右方向への動揺が大きかった(P<0.05)。その他の項目には有意差は認められなかった。
【考察】
結果より,MGRF時点での右方向への動揺がT群の方で少なかった。扁平足を有するものでは,足部の剛性が低いため,足趾開閉運動により,足部の剛性が高まり,右方向への動揺がC群に比べ少なくなったと考える。しかし,我々の仮説とは反して,膝角度外反角度減少の即時効果は認められず,また,その他の検査項目でも特に有意差は認められなかった。偏平足を有するものでは,足部の剛性が低いため,足部機能が低下している。そのため,足趾開閉運動の即時効果は少なく,上行性の運動連鎖を改善するには至らないと考える。よって,偏平足を有しているものでは,継続的に中・長期的な足趾開閉運動練習が必要なのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
足部のトレーニング効果を把握することで今後のウォーミングアップ時の足部エクササイズが膝関節障害予防に役立てる。