[P1-C-0169] 足関節サポート用装具の固定力の違いが静的・動的姿勢制御に与える効果
キーワード:足関節サポート用装具, 姿勢制御, Dynamic Postural Stability Index
【はじめに,目的】足関節捻挫に対する装具(足関節装具)の効果はこれまで数多く報告されている。足関節装具の効果には,内反方向制限や足関節の支持性,固有感覚の改善に加えて,姿勢制御への効果がいわれている。しかし,足関節装具の固定力の違いが姿勢制御に与える即時効果を述べた研究結果は一致した見解が示されていない。そこで本研究の目的は,足関節装具の固定力の違いが静的・動的姿勢制御に与える即時効果を明らかにすることである。仮説は,足関節装具の違いにより静的・動的姿勢制御の効果が異なるとした。
【方法】対象は足関節に整形外科疾患のない,健常男性8名8脚(年齢26.1±5.1歳,身長172.9±4.5 cm,体重67.8±6.2 kg)とした。非利き足はボールを蹴らない側の下肢を非利き足とし,非利き足に足関節装具を装着して測定した。足関節装具はソフトサポート装具(FA-1,日本シグマックス社)(以下;SS)とミドルサポート装具(A-1,日本シグマックス社)(以下;MS)を用いた。足関節装具を非装着した状態をControlとし,対象ごとに測定順は無作為とした。静的姿勢制御の測定は,平衡機能計(UM-BAR,ユニメック社)を使用した。課題は開眼と閉眼で片脚立位保持を行わせた。片脚立位にて10秒経過した後の10秒間で得られたデータから,単位軌跡長と外周面積を算出し,3回の平均値を求めた。サンプリング周波数は200 Hzとした。動的姿勢制御には,Dynamic Postural Stability Index(DPSI)とGRFmaxを測定した。DPSIは床反力計(AccuGait,AMTI社)を用いて,Sellら(2012)の方法に従って実施した。測定環境は床反力計の端から対象の身長40%の距離をとり,その距離の50%の位置に高さ30cmのポールを設置した。課題動作として両側下肢でジャンプし,床反力計の中心位置に非利き足で着地した後に前方注視し,10秒間保持するよう指示した。各条件で練習を3回行い,その後に測定した。DPSIは,前後成分(Anterior-Posterior Stability Index;APSI),内外成分(Medial-Lateral Stability Index;MLSI),および垂直成分(Vertical Stability Index;VSI),そして3方向合成床反力(DPSI)を示すものである。DPSIは床反力に足底が接地し,垂直床反力が体重の5%を超えた地点から3秒間のデータを解析値とした。解析データは,サンプリング周波数200Hzで保存した。その後,周波数20HzのカットオフでButterworthフィルタをかけた。各条件の測定は3日以上の間隔をあけて行った。統計学的手法として,ControlとSS,MS間の静的立位時の単位軌跡長,外周面積,MLSI,APSI,VSI,DPSIの差の検定に一元配置分散分析を用い,その後,多重比較検定にLSD検定を行った。統計ソフトSPSS20.0 J for Windowsを使用し,危険率は5%未満を有意とした。
【結果】静的立位時の単位軌跡長(mm/s)は,開眼でControl,SS,MSでそれぞれ44.7±5.3,44.3±2.9,44.6±4.8であり,閉眼で79.0±13.7,79.5±16.2,79.7±14.9であった。外周面積(mm2)は,開眼で764±206,745±186,912±317であり,閉眼で2867±775,2662±744,2755±900であった。開眼と閉眼ともに各条件間で有意な差は認めなかった。DPSIでは,VSIはControl,SS,MSでそれぞれ0.30±0.01,0.30±0.03,0.28±0.03であり,SSとMSの間に有意差を認めた(p<0.05)。MLSIとAPSI,DPSI,GRFmaxは,各群で有意な差は認めなかった。しかし,DPSIはControl,SS,MSでそれぞれ0.33±0.01,0.33±0.02,0.32±0.03であり,MSが他の条件に比べて低い傾向を示した。
【考察】本研究では,静的姿勢制御では開眼,閉眼ともに3群間で有意な差は認めなかった。しかし,動的姿勢制御の指標では,VSIでMSがSSに比べて有意に低値となり,DPSIも低い傾向を示した。足関節装具は動的バランスを低下させないとうい報告がある(Hardy 2008)。今回,MSでジャンプ着地後の姿勢制御に効果があり,足関節装具の種類で効果に違いがあることが示された。MSは内反制限やスターアップストラップによってSSに比べて固定力が高い構造である。これによりジャンプ着地後の姿勢制御が安定したと考える。今後は動作解析を組み合わせて,装具の違いが動的姿勢制御に与える影響を明らかにしていきたい。
【理学療法学研究としての意義】本研究から,固定力が異なる足関節装具では動的姿勢制御に与える効果が違うことが明らかとなった。固定力の高い足関節装具を使用することで,ジャンプ着地後の安定性につながり,動的姿勢制御への効果も示された。
【方法】対象は足関節に整形外科疾患のない,健常男性8名8脚(年齢26.1±5.1歳,身長172.9±4.5 cm,体重67.8±6.2 kg)とした。非利き足はボールを蹴らない側の下肢を非利き足とし,非利き足に足関節装具を装着して測定した。足関節装具はソフトサポート装具(FA-1,日本シグマックス社)(以下;SS)とミドルサポート装具(A-1,日本シグマックス社)(以下;MS)を用いた。足関節装具を非装着した状態をControlとし,対象ごとに測定順は無作為とした。静的姿勢制御の測定は,平衡機能計(UM-BAR,ユニメック社)を使用した。課題は開眼と閉眼で片脚立位保持を行わせた。片脚立位にて10秒経過した後の10秒間で得られたデータから,単位軌跡長と外周面積を算出し,3回の平均値を求めた。サンプリング周波数は200 Hzとした。動的姿勢制御には,Dynamic Postural Stability Index(DPSI)とGRFmaxを測定した。DPSIは床反力計(AccuGait,AMTI社)を用いて,Sellら(2012)の方法に従って実施した。測定環境は床反力計の端から対象の身長40%の距離をとり,その距離の50%の位置に高さ30cmのポールを設置した。課題動作として両側下肢でジャンプし,床反力計の中心位置に非利き足で着地した後に前方注視し,10秒間保持するよう指示した。各条件で練習を3回行い,その後に測定した。DPSIは,前後成分(Anterior-Posterior Stability Index;APSI),内外成分(Medial-Lateral Stability Index;MLSI),および垂直成分(Vertical Stability Index;VSI),そして3方向合成床反力(DPSI)を示すものである。DPSIは床反力に足底が接地し,垂直床反力が体重の5%を超えた地点から3秒間のデータを解析値とした。解析データは,サンプリング周波数200Hzで保存した。その後,周波数20HzのカットオフでButterworthフィルタをかけた。各条件の測定は3日以上の間隔をあけて行った。統計学的手法として,ControlとSS,MS間の静的立位時の単位軌跡長,外周面積,MLSI,APSI,VSI,DPSIの差の検定に一元配置分散分析を用い,その後,多重比較検定にLSD検定を行った。統計ソフトSPSS20.0 J for Windowsを使用し,危険率は5%未満を有意とした。
【結果】静的立位時の単位軌跡長(mm/s)は,開眼でControl,SS,MSでそれぞれ44.7±5.3,44.3±2.9,44.6±4.8であり,閉眼で79.0±13.7,79.5±16.2,79.7±14.9であった。外周面積(mm2)は,開眼で764±206,745±186,912±317であり,閉眼で2867±775,2662±744,2755±900であった。開眼と閉眼ともに各条件間で有意な差は認めなかった。DPSIでは,VSIはControl,SS,MSでそれぞれ0.30±0.01,0.30±0.03,0.28±0.03であり,SSとMSの間に有意差を認めた(p<0.05)。MLSIとAPSI,DPSI,GRFmaxは,各群で有意な差は認めなかった。しかし,DPSIはControl,SS,MSでそれぞれ0.33±0.01,0.33±0.02,0.32±0.03であり,MSが他の条件に比べて低い傾向を示した。
【考察】本研究では,静的姿勢制御では開眼,閉眼ともに3群間で有意な差は認めなかった。しかし,動的姿勢制御の指標では,VSIでMSがSSに比べて有意に低値となり,DPSIも低い傾向を示した。足関節装具は動的バランスを低下させないとうい報告がある(Hardy 2008)。今回,MSでジャンプ着地後の姿勢制御に効果があり,足関節装具の種類で効果に違いがあることが示された。MSは内反制限やスターアップストラップによってSSに比べて固定力が高い構造である。これによりジャンプ着地後の姿勢制御が安定したと考える。今後は動作解析を組み合わせて,装具の違いが動的姿勢制御に与える影響を明らかにしていきたい。
【理学療法学研究としての意義】本研究から,固定力が異なる足関節装具では動的姿勢制御に与える効果が違うことが明らかとなった。固定力の高い足関節装具を使用することで,ジャンプ着地後の安定性につながり,動的姿勢制御への効果も示された。