[P1-C-0183] 学生野球競技者のHyper external rotation test陽性例における上腕二頭筋長頭腱の実態についての調査
~超音波検査の活用~
Keywords:Hyper external rotation test, 上腕二頭筋長頭腱, 超音波検査
【はじめに,目的】
上腕二頭筋長頭腱(以下:LHB)は上腕骨頭の安定化や上腕から肩甲骨へ力の伝達など様々な役割を担っており投球障害肩における病態や病変に関与していることは周知されている。山本らは,原テスト項目でも疼痛の再現性として有用とされているHyper External Rotation Test(肩関節2ndポジションでの過外旋テスト 以下:HERT)陽性例において結節間溝に圧痛を認める例が多いと報告している。しかしながら,メディカルチェック時のスクリーニングとしてHERT陽性例に対して挙げられる問題点は多く存在するのが通常であり解釈も様々である。理学療法を実施する上でも検査・評価に時間を要し,解釈によって治療方法の選択も多様化されているのが現状である。そのため,学生野球競技者においては時間的制約もあり,メディカルチェック時のより正確な病態把握とより的確な治療方法の選択は不可欠であると考えられる。
今回,簡易的,効率的,迅速的な評価が可能である超音波検査を併用しLHBの実態を把握することで,HERTにおける問題点のスクリーニングと理学療法プログラム立案の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は,本校に在学する野球部員。メディカルチェック項目としてHERTを実施しLHB圧痛の有無を確認。両項目とも陽性となった8名8肩(右肩8例)で平均年齢20.5±0.5歳であった。
LHBの実態としてHITACHI社製EUB-5500(9.0MHzリニア型プローブ)を用い超音波検査を施行。検者は,本校に在籍する診療放射線技術学科専任教員(経験年数27年目,超音波検査士7年目)の1名とした。測定肢位は,対象者を丸椅子に座らせ,肩関節軽度伸展位・前腕回外位となるようにし,椅子の縁を対象者自身の手で握らせて固定した。
両側上腕骨結節間溝部のLHB断面積を算出し健側と患側で比較した。統計処理は,対応の無いt検定を行った。有意水準は5%未満とした。また,ドプラ法によりLHB周囲の血流シグナル量をリウマチの超音波検査法に準じ,炎症の有無とグレード分類を行った。LHB周囲の炎症所見は,健側と患側で確認した。
【結果】
①LHBの平均断面積は,健側10.62±3.1mm2,患側9.75±2.6mm2で健側平均断面積と患側平均断面積に有意差は認めなかった。(p>0.05)
②LHB周囲の炎症所見は,健側0例,患側1例で分類はgrade1を確認することが出来た。
【考察】
今回,学生野球競技者のHERT陽性例における上腕二頭筋長頭腱の実態についての調査を超音波検査を用いて実施した。今回の調査結果から,LHBの平均断面積は,健側10.62±3.1mm2,患側9.75±2.6mm2で健側平均断面積と患側平均断面積に有意差は認められず,LHB周囲の炎症所見は,健側0例,患側1例で分類はgrade1を確認することが出来た。これは,臨床におけるメディカルチェックにおいてHERTを実施し解釈する上で有益な調査になったのではないかと思われる。
HERT陽性例において結節間溝に圧痛を認める例が多く,関節面断裂,腱板疎部損傷や上腕二頭筋長頭腱炎などの病態が疑われる。今泉らは,腱板断裂を認める症例において断裂を認めない肩よりLHBは幅広でより高いgradeの炎症が見られる傾向にあったと報告している。調査結果から,HERT陽性例でLHBに圧痛が見られても解剖学的視点として上腕二頭筋長頭腱炎や関節面断裂までは至っていないことが推察された。併せて,解剖学的,肩甲胸郭関節等の機能的な問題点により関節窩に対する上腕骨頭の求心位が保てず,internal impingementや上腕骨頭のdepressorやstabilizer機能としてLHBが過剰に活動している状況での結果ではないかと考えられる。
今回,超音波検査を併用しLHBの実態を把握することが有用な手掛かりとなり,治療方法の選択に重要な調査結果であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究では,メディカルチェックを行う上で超音波検査を併用することで簡易的,効率的,迅速的な評価が可能となり,HERT陽性例におけるLHBの実態を調査することできた。このことから,画像診断と徒手検査の結果からHERTの問題点解釈をより正確に行い,理学療法プログラム立案の一助となるのではないかと示唆される。
上腕二頭筋長頭腱(以下:LHB)は上腕骨頭の安定化や上腕から肩甲骨へ力の伝達など様々な役割を担っており投球障害肩における病態や病変に関与していることは周知されている。山本らは,原テスト項目でも疼痛の再現性として有用とされているHyper External Rotation Test(肩関節2ndポジションでの過外旋テスト 以下:HERT)陽性例において結節間溝に圧痛を認める例が多いと報告している。しかしながら,メディカルチェック時のスクリーニングとしてHERT陽性例に対して挙げられる問題点は多く存在するのが通常であり解釈も様々である。理学療法を実施する上でも検査・評価に時間を要し,解釈によって治療方法の選択も多様化されているのが現状である。そのため,学生野球競技者においては時間的制約もあり,メディカルチェック時のより正確な病態把握とより的確な治療方法の選択は不可欠であると考えられる。
今回,簡易的,効率的,迅速的な評価が可能である超音波検査を併用しLHBの実態を把握することで,HERTにおける問題点のスクリーニングと理学療法プログラム立案の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は,本校に在学する野球部員。メディカルチェック項目としてHERTを実施しLHB圧痛の有無を確認。両項目とも陽性となった8名8肩(右肩8例)で平均年齢20.5±0.5歳であった。
LHBの実態としてHITACHI社製EUB-5500(9.0MHzリニア型プローブ)を用い超音波検査を施行。検者は,本校に在籍する診療放射線技術学科専任教員(経験年数27年目,超音波検査士7年目)の1名とした。測定肢位は,対象者を丸椅子に座らせ,肩関節軽度伸展位・前腕回外位となるようにし,椅子の縁を対象者自身の手で握らせて固定した。
両側上腕骨結節間溝部のLHB断面積を算出し健側と患側で比較した。統計処理は,対応の無いt検定を行った。有意水準は5%未満とした。また,ドプラ法によりLHB周囲の血流シグナル量をリウマチの超音波検査法に準じ,炎症の有無とグレード分類を行った。LHB周囲の炎症所見は,健側と患側で確認した。
【結果】
①LHBの平均断面積は,健側10.62±3.1mm2,患側9.75±2.6mm2で健側平均断面積と患側平均断面積に有意差は認めなかった。(p>0.05)
②LHB周囲の炎症所見は,健側0例,患側1例で分類はgrade1を確認することが出来た。
【考察】
今回,学生野球競技者のHERT陽性例における上腕二頭筋長頭腱の実態についての調査を超音波検査を用いて実施した。今回の調査結果から,LHBの平均断面積は,健側10.62±3.1mm2,患側9.75±2.6mm2で健側平均断面積と患側平均断面積に有意差は認められず,LHB周囲の炎症所見は,健側0例,患側1例で分類はgrade1を確認することが出来た。これは,臨床におけるメディカルチェックにおいてHERTを実施し解釈する上で有益な調査になったのではないかと思われる。
HERT陽性例において結節間溝に圧痛を認める例が多く,関節面断裂,腱板疎部損傷や上腕二頭筋長頭腱炎などの病態が疑われる。今泉らは,腱板断裂を認める症例において断裂を認めない肩よりLHBは幅広でより高いgradeの炎症が見られる傾向にあったと報告している。調査結果から,HERT陽性例でLHBに圧痛が見られても解剖学的視点として上腕二頭筋長頭腱炎や関節面断裂までは至っていないことが推察された。併せて,解剖学的,肩甲胸郭関節等の機能的な問題点により関節窩に対する上腕骨頭の求心位が保てず,internal impingementや上腕骨頭のdepressorやstabilizer機能としてLHBが過剰に活動している状況での結果ではないかと考えられる。
今回,超音波検査を併用しLHBの実態を把握することが有用な手掛かりとなり,治療方法の選択に重要な調査結果であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究では,メディカルチェックを行う上で超音波検査を併用することで簡易的,効率的,迅速的な評価が可能となり,HERT陽性例におけるLHBの実態を調査することできた。このことから,画像診断と徒手検査の結果からHERTの問題点解釈をより正確に行い,理学療法プログラム立案の一助となるのではないかと示唆される。