第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

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スポーツ3

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0189] 高校サッカーチームにおける傷害発生状況の時期別の検討

田中佑一, 生駒成亨, 西原しょうた, 福島遼太郎 (社会医療法人緑泉会米盛病院)

Keywords:傷害発生, サッカー, メディカルサポート

【はじめに,目的】

当院では,高校サッカー部に対するフィジカルチェックを含めたメディカルサポートを実施してきた。サッカーは身体接触を伴う運動強度の高い競技であり,傷害発生リスクが高く,特に高校生は中学生からカテゴリーが上がり練習量,運動強度の増加に対応できず怪我が発生すること,成長段階で傷害の発生しやすい年代であると考える。メディカルサポートを実施する上で,スポーツ傷害発生の頻度,好発部位を把握することは,その原因を探ること,効果的なサポートを行う為に重要であると考える。今回の研究は,高校サッカー選手におけるスポーツ傷害発生の発生頻度及び部位別の発生数において,時期別に調査することである。
【方法】

2012年4月に入学し2014年9月までサッカー部に在籍した選手計27名を対象とした。高校入学後の2年半のサポート期間で発生したスポーツ外傷及び障害の発生数,受傷部位について調査し,受傷時の時期を入学から6ヶ月毎で分類し比較した。種類は一度の外力で発生したものを外傷,多数回の外力や受傷機転の明らかでないものを障害として分類した。統計学的の有意差検定にはχ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】

2012年4月~2014年9月の期間で発生した外傷は17名24件で1年後期4名4件,2年前期4名4件,2年後期10名10件3年前期6名6件で,障害は11名14件で1年前期1名1件,1年後期1名1件,2年前期5名5件,2年後期5名5件,3年前期2名2件であった。部位別の結果は,上肢4名5件で2年前期に1件,2年後期に1件,3年前期に3件発生し,内訳は小指PIP関節捻挫1件,手関節捻挫2件,鎖骨骨折1件,肘関節内側側副靭帯損傷1件。体幹5名5件で1年後期1件,2年前期2件,3年前期2件発生し,内訳は腰痛症3件,腰椎捻挫1件,腰椎椎間板症1件。股関節・大腿部7名7件で1年後期1件,2年前期2件,2年後期3件,3年前期1件発生し,内訳はGroin pain3件,恥骨疲労骨折1件,大腿四頭筋筋挫傷3件。膝関節・下腿部9名10件で1年前期1件,1年後期1件,年前期2件,2年後期5件,3年前期1件発生し,内訳は膝内側側副靭帯損傷3件,後十時靭帯損傷1件,脛骨疲労骨折1件,滑膜ひだ障害1件,オスグッド・シュラッター病1件,下腿部筋挫傷3件。足部11名11件で1年後期2件,2年前期2件,2年後期6件,3年前期1件発生し,内訳は足関節捻挫9件,中足骨疲労骨折2件であった。傷害発生と受傷時の時期においては,2年後期に有意に外傷発生数が多く,部位別は足部において2年後期に有意に多く発生していることを認めた。
【考察】

高校生の年代を対象にした報告では,戸祭らによると足関節の傷害発生が多く,岩崎らは,外傷,障害とも高校入学後約6カ月以内に多く発生し,特に障害では殆どがこの時期に集中していたとしている。今回,時期別によるスポーツ傷害の発生数と部位別で検討した結果,部位別では先行研究と同様に,足部の発生率が有意に高かったが,発症時期においては2年後期に傷害発生数が高い結果となった。中学生からカテゴリーが上がり練習量,運動強度が増加するが,80名を超える部員数の中で,1年時より2年時に練習量,運動強度が増加したことが要因ではないかと考える。特に2年後期は外傷数が有意に多く,足関節捻挫や膝靭帯損傷が多くを占め,3年時には転倒による上肢の怪我もみられた。サッカーは接触競技であり,年齢が高くなるにつれ対人プレーの頻度が多くなること,体格・筋力が発達し運動強度が増す中でコンタクトプレーに起因する外傷に繋がったのではないかと考える。また,Poulsenらは技術レベルが最高の選手の傷害発生率が最低となり,技術レベルが最低の選手は傷害発生率・重症度とも最高となったと述べており,練習量や運動強度が増す中で,技術レベルが達しなければ,傷害発生に繋がると考える。国際サッカー連盟(FIFA)の医学評価研究センター(F-MARC)はサッカー傷害の減少を目的に傷害予防プログラム「FIFA11+」を考案している。佐保らによると11+は成長期サッカー選手に対して傷害予防のみならずフィジカル面でも有益であると述べており,この時期における急性外傷を減少させる為には,フィジカルチェックに即した筋の柔軟性の向上や体幹強化のみならず,ウォーミングアップに11+を取り入れること,フィジカルチェック項目の見直しや入学時から神経筋トレーニングや敏捷性の強化を実施していくことが重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】

チームにおける傷害発生状況を把握・分析することは,効果的なメディカルサポートを実施する上で有用である。傷害予防に取り組む中で一助となる。