[P1-C-0199] リウマチ短期リハビリテーション入院患者に対する運動介入が膝伸展筋力と歩行速度に与える効果
―疾患活動性に着目して―
Keywords:関節リウマチ, 短期入院, 疾患活動性
【目的】
関節リウマチ(以下RA)の治療において早期からリハビリテーションを開始することはRAの滑膜炎から引き起こされる関節疼痛,関節変形,筋力低下などを改善予防するうえで重要であると言われている。しかし,疾患活動性が高い患者は関節の炎症や疼痛のために,運動負荷をかけることで運動誘発性の炎症により疾患活動性を高める可能性があることが予測される。そこで本研究では,当院にリウマチ短期リハビリテーション入院(以下RA短期入院)した患者を対象に,運動介入による膝伸展筋力と歩行速度に対する効果について疾患活動性による比較検討を行った。
【方法】
対象者は2003年から2012年にRA短期入院をしたRA患者99名(男性8名,女性91名,年齢60.2±11.8歳)である。RA短期入院は当院ホームページと日本リウマチ友の会機関誌「流」にて患者を募集した。入院期間は4週間,目的は患者教育とリハビリテーションである。募集条件はADLが自立していることである。運動介入は週5回40分間の集団体操,週2回30分間の運動浴,週5回40分ずつの理学療法,作業療法個別プログラムである。入院期間中の薬物は変更されなかった。方法はRAの疾患活動性評価としてDisease Activity Score 28 CRP(以下DAS28CRP)を用い対象者を寛解群(11名,DAS28CRP<2.3),低疾患活動性群(23名,DAS28CRP<2.7),中等度疾患活動性群(53名,DAS28CRP2.7~4.1),高疾患活動性群(12名,4.1<DAS28CRP)の4群に分け,各々における右膝伸展筋力(竹井機器デジタル筋力計使用),10m最大歩行速度,DAS28CRPの値を入院時と退院時で変化を比較した。統計学的解析は入院時と退院時の比較に対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
各群における入院時と退院時の平均値を比較した。右膝伸展筋力において,寛解群は24.7±13.4kgから32.7±15.8kg,低疾患活動性群は19.1±8.3kgから26.5±11.9kg,中等度疾患活動性群は20.6±12.1kgから24.7±13.6kg,高疾患活動性群は18.6±10.0から26.5±10.5kgに変化し,すべての群において退院時で有意に増加した(p<0.05)。10m最大歩行速度において,寛解群は1.62±0.36m/秒から1.90±0.41m/秒,低疾患活動性群は1.56±0.38m/秒から1.75±0.40m/秒,中等度疾患活動性群は1.63±0.44m/秒から1.73±0.47m/秒,高疾患活動性群1.30±0.46m/秒から1.64±0.46m/秒に変化し,高疾患活動性群でのみ退院時で有意に増加した(p<0.05)。DAS28CRPの値において,寛解群は1.86±0.35から1.60±0.55,低疾患活動性群は2.56±0.16から2.47±0.34,中等度疾患活動性群は3.31±0.46から3.04±0.61,高疾患活動性群は4.63±0.35から3.96±0.62に変化し,中等度疾患活動性群と高疾患活動性群で有意に低下した(p<0.05)。
【考察】
van den Endeらは,入院中の疾患活動性の高いRA患者に対して,積極的な運動介入を行った結果,疾患活動性を上げずに筋力の改善度が大きかったと報告している。本研究の結果では,すべての群において筋力の有意な増加がみられ,10m最大歩行速度は高疾患活動性群でのみ有意に増加した。高疾患活動性群のみ歩行速度が増加した要因としては他群よりも入院前の身体活動量が低下しており,運動による筋力増強や歩行速度に与える影響が大きかった可能性が考えられるが,この検証のためには入院前の身体活動量を調査する必要がある。沖田らは運動療法の介入と炎症指標は負の相関があることを報告しており,中等度疾患活動性群と高疾患活動性群において,DAS28CRPの値が有意に低下したことは,運動による抗炎症効果が考えられる。RAは患者により疼痛部位や炎症部位が異なるため,身体機能向上のためには個別での運動方法や関節保護の指導などの患者教育も必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
ADLが自立しているRA患者に対しては疾患活動性に関係無く積極的な運動介入が重要である。今後,RA患者の運動機能に影響を与える因子についてさらなる分析を行っていきたい。
関節リウマチ(以下RA)の治療において早期からリハビリテーションを開始することはRAの滑膜炎から引き起こされる関節疼痛,関節変形,筋力低下などを改善予防するうえで重要であると言われている。しかし,疾患活動性が高い患者は関節の炎症や疼痛のために,運動負荷をかけることで運動誘発性の炎症により疾患活動性を高める可能性があることが予測される。そこで本研究では,当院にリウマチ短期リハビリテーション入院(以下RA短期入院)した患者を対象に,運動介入による膝伸展筋力と歩行速度に対する効果について疾患活動性による比較検討を行った。
【方法】
対象者は2003年から2012年にRA短期入院をしたRA患者99名(男性8名,女性91名,年齢60.2±11.8歳)である。RA短期入院は当院ホームページと日本リウマチ友の会機関誌「流」にて患者を募集した。入院期間は4週間,目的は患者教育とリハビリテーションである。募集条件はADLが自立していることである。運動介入は週5回40分間の集団体操,週2回30分間の運動浴,週5回40分ずつの理学療法,作業療法個別プログラムである。入院期間中の薬物は変更されなかった。方法はRAの疾患活動性評価としてDisease Activity Score 28 CRP(以下DAS28CRP)を用い対象者を寛解群(11名,DAS28CRP<2.3),低疾患活動性群(23名,DAS28CRP<2.7),中等度疾患活動性群(53名,DAS28CRP2.7~4.1),高疾患活動性群(12名,4.1<DAS28CRP)の4群に分け,各々における右膝伸展筋力(竹井機器デジタル筋力計使用),10m最大歩行速度,DAS28CRPの値を入院時と退院時で変化を比較した。統計学的解析は入院時と退院時の比較に対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
各群における入院時と退院時の平均値を比較した。右膝伸展筋力において,寛解群は24.7±13.4kgから32.7±15.8kg,低疾患活動性群は19.1±8.3kgから26.5±11.9kg,中等度疾患活動性群は20.6±12.1kgから24.7±13.6kg,高疾患活動性群は18.6±10.0から26.5±10.5kgに変化し,すべての群において退院時で有意に増加した(p<0.05)。10m最大歩行速度において,寛解群は1.62±0.36m/秒から1.90±0.41m/秒,低疾患活動性群は1.56±0.38m/秒から1.75±0.40m/秒,中等度疾患活動性群は1.63±0.44m/秒から1.73±0.47m/秒,高疾患活動性群1.30±0.46m/秒から1.64±0.46m/秒に変化し,高疾患活動性群でのみ退院時で有意に増加した(p<0.05)。DAS28CRPの値において,寛解群は1.86±0.35から1.60±0.55,低疾患活動性群は2.56±0.16から2.47±0.34,中等度疾患活動性群は3.31±0.46から3.04±0.61,高疾患活動性群は4.63±0.35から3.96±0.62に変化し,中等度疾患活動性群と高疾患活動性群で有意に低下した(p<0.05)。
【考察】
van den Endeらは,入院中の疾患活動性の高いRA患者に対して,積極的な運動介入を行った結果,疾患活動性を上げずに筋力の改善度が大きかったと報告している。本研究の結果では,すべての群において筋力の有意な増加がみられ,10m最大歩行速度は高疾患活動性群でのみ有意に増加した。高疾患活動性群のみ歩行速度が増加した要因としては他群よりも入院前の身体活動量が低下しており,運動による筋力増強や歩行速度に与える影響が大きかった可能性が考えられるが,この検証のためには入院前の身体活動量を調査する必要がある。沖田らは運動療法の介入と炎症指標は負の相関があることを報告しており,中等度疾患活動性群と高疾患活動性群において,DAS28CRPの値が有意に低下したことは,運動による抗炎症効果が考えられる。RAは患者により疼痛部位や炎症部位が異なるため,身体機能向上のためには個別での運動方法や関節保護の指導などの患者教育も必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
ADLが自立しているRA患者に対しては疾患活動性に関係無く積極的な運動介入が重要である。今後,RA患者の運動機能に影響を与える因子についてさらなる分析を行っていきたい。