[P1-C-0208] 頸椎椎弓形成術後における軸性疼痛と頸部伸筋群断面積の関連性
Keywords:頸椎椎弓形成術, 軸性疼痛, 筋断面積
【はじめに,目的】
頸椎術後に生じる軸性疼痛には,第2および第7頸椎(以下C2,C7)棘突起への手術侵襲が関与しているとの報告が多い。当院整形外科では頸髄症に対し平林法による片開き式頸椎椎弓形成術が行われ,全例ともopen sideは左側・hinge sideは右側とし,椎弓形成範囲は概ね第3-6頸椎である。しかし,椎弓形成範囲を限局していても術後項頸部痛を訴える患者も存在する。軸性疼痛は筋由来の痛みとする意見もあるが,その機序は解明されていない。
そこで今回,軸性疼痛と頸部伸筋群の関係を把握することを目的とし,術前・術後におけるCT画像上の頸部伸筋群断面積変化と軸性疼痛の関連性を検討した。
【方法】
対象は,2007年11月から2013年5月に当院整形外科において片開き式頸椎椎弓形成術(平林法)を受けた者とした。取込基準は1年以上の経過観察が可能であった者とし,除外基準は外傷により受傷した者およびC2,C7棘突起が温存されていない者とした。
データ収集は,カルテより後方視的調査を行った。術後1年における項頸部痛をVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価し,疼痛の有無により疼痛群(以下P群)と非疼痛群(以下N群)の2群に分けた。
検討項目は,年齢,Body Mass Index(以下BMI),離床開始時期(端座位および立位開始までの期間),術前および退院時Barthel Index(以下BI),在院日数,術前・術後の頸部伸筋群断面積増加率(以下 断面積増加率)およびCT値増加率とした。
なお,頸部伸筋群断面積およびCT値の測定には,術前・術後(2~3ヵ月)で撮影されたCT画像を用い,頸部横断像は第4・5頸椎椎間板レベルとした。得られた画像からHOPE DrABLE-GX(富士通製)を用いて頸部伸筋群をトレースし,筋断面積および関心領域内平均CT値を求めた。同一横断像にて3回計測して平均値を求めたのち,術前・術後の断面積増加率およびCT値増加率を算出した。
当院での標準的な術後理学療法は術翌日より介入,術後2日で端座位,3~4日程度で立位・歩行を開始し,頸椎カラーは装着していない。
各検討項目の2群間での比較には,対応のないt-検定を用いた。さらにP群におけるVASと断面積増加率,CT値増加率の各項目間では,Spearmanの順位相関を用いて検討した。統計解析についてはSPSS(ver22)を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
対象は18例(男性15例,女性3例,平均年齢64.9±12.9歳)で,P群:8例,N群:10例であった。診断名の内訳は,頸椎症性脊髄症14例,後縦靭帯骨化症4例であった。
断面積増加率は,P群10.9±8.0%,N群-0.6±1.8%であり,P群がN群よりも有意な増加を認めた(P<0.01)。CT値増加率は,P群-6.7±6.8%,N群2.4±6.2%であり,P群において有意な減少を認めた(P<0.01)。P群とN群を比較した結果,年齢,BMI,離床開始時期,BI,在院日数では,2群間に有意差を認めなかった。
P群におけるVASと断面積増加率(r=0.833,P<0.05)には有意な正の相関を認め,VASとCT値増加率(r=-0.762,P<0.05)および断面積増加率とCT値増加率(r=-0.714,P<0.05)には,有意な負の相関を認めた。
【考察】
断面積増加率はP群がN群よりも有意に増加した一方,CT値増加率はP群において有意な低下がみられた。野村らの検討では,後方法術後平均8週における頸部浅背筋群の面積増大とCT値減少を報告しており,本研究も同様の結果を示唆した。また本研究ではVASと断面積増加率に有意な正の相関を認め,VASとCT値増加率との間,および断面積増加率とCT値増加率の間には有意な負の相関を認めた。一般的に結合組織増殖や脂肪浸潤などによりCT値は低下すると言われており,今回の結果から筋断面積の増加には,結合組織増殖や脂肪浸潤など非収縮組織増大が関与していると考えられた。さらに,疼痛が強いほど断面積増加とCT値低下の傾向が強いことが示唆された。
今回の研究では,軸性疼痛には頸部伸筋群の器質的変化が一要因として影響している可能性は示唆された。しかし軸性疼痛や筋機能がADLに与える影響は明らかでなく,今後の検討課題である。
【理学療法学研究としての意義】
今回,軸性疼痛の程度と頸部伸筋群の器質的変化が関連している可能性を示唆したことから,筋機能回復に着目した軸性疼痛への理学療法を考える上で,CTを活用した評価法と器質的変化に対応するプログラムの必要性が認識できたと考える。
頸椎術後に生じる軸性疼痛には,第2および第7頸椎(以下C2,C7)棘突起への手術侵襲が関与しているとの報告が多い。当院整形外科では頸髄症に対し平林法による片開き式頸椎椎弓形成術が行われ,全例ともopen sideは左側・hinge sideは右側とし,椎弓形成範囲は概ね第3-6頸椎である。しかし,椎弓形成範囲を限局していても術後項頸部痛を訴える患者も存在する。軸性疼痛は筋由来の痛みとする意見もあるが,その機序は解明されていない。
そこで今回,軸性疼痛と頸部伸筋群の関係を把握することを目的とし,術前・術後におけるCT画像上の頸部伸筋群断面積変化と軸性疼痛の関連性を検討した。
【方法】
対象は,2007年11月から2013年5月に当院整形外科において片開き式頸椎椎弓形成術(平林法)を受けた者とした。取込基準は1年以上の経過観察が可能であった者とし,除外基準は外傷により受傷した者およびC2,C7棘突起が温存されていない者とした。
データ収集は,カルテより後方視的調査を行った。術後1年における項頸部痛をVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価し,疼痛の有無により疼痛群(以下P群)と非疼痛群(以下N群)の2群に分けた。
検討項目は,年齢,Body Mass Index(以下BMI),離床開始時期(端座位および立位開始までの期間),術前および退院時Barthel Index(以下BI),在院日数,術前・術後の頸部伸筋群断面積増加率(以下 断面積増加率)およびCT値増加率とした。
なお,頸部伸筋群断面積およびCT値の測定には,術前・術後(2~3ヵ月)で撮影されたCT画像を用い,頸部横断像は第4・5頸椎椎間板レベルとした。得られた画像からHOPE DrABLE-GX(富士通製)を用いて頸部伸筋群をトレースし,筋断面積および関心領域内平均CT値を求めた。同一横断像にて3回計測して平均値を求めたのち,術前・術後の断面積増加率およびCT値増加率を算出した。
当院での標準的な術後理学療法は術翌日より介入,術後2日で端座位,3~4日程度で立位・歩行を開始し,頸椎カラーは装着していない。
各検討項目の2群間での比較には,対応のないt-検定を用いた。さらにP群におけるVASと断面積増加率,CT値増加率の各項目間では,Spearmanの順位相関を用いて検討した。統計解析についてはSPSS(ver22)を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
対象は18例(男性15例,女性3例,平均年齢64.9±12.9歳)で,P群:8例,N群:10例であった。診断名の内訳は,頸椎症性脊髄症14例,後縦靭帯骨化症4例であった。
断面積増加率は,P群10.9±8.0%,N群-0.6±1.8%であり,P群がN群よりも有意な増加を認めた(P<0.01)。CT値増加率は,P群-6.7±6.8%,N群2.4±6.2%であり,P群において有意な減少を認めた(P<0.01)。P群とN群を比較した結果,年齢,BMI,離床開始時期,BI,在院日数では,2群間に有意差を認めなかった。
P群におけるVASと断面積増加率(r=0.833,P<0.05)には有意な正の相関を認め,VASとCT値増加率(r=-0.762,P<0.05)および断面積増加率とCT値増加率(r=-0.714,P<0.05)には,有意な負の相関を認めた。
【考察】
断面積増加率はP群がN群よりも有意に増加した一方,CT値増加率はP群において有意な低下がみられた。野村らの検討では,後方法術後平均8週における頸部浅背筋群の面積増大とCT値減少を報告しており,本研究も同様の結果を示唆した。また本研究ではVASと断面積増加率に有意な正の相関を認め,VASとCT値増加率との間,および断面積増加率とCT値増加率の間には有意な負の相関を認めた。一般的に結合組織増殖や脂肪浸潤などによりCT値は低下すると言われており,今回の結果から筋断面積の増加には,結合組織増殖や脂肪浸潤など非収縮組織増大が関与していると考えられた。さらに,疼痛が強いほど断面積増加とCT値低下の傾向が強いことが示唆された。
今回の研究では,軸性疼痛には頸部伸筋群の器質的変化が一要因として影響している可能性は示唆された。しかし軸性疼痛や筋機能がADLに与える影響は明らかでなく,今後の検討課題である。
【理学療法学研究としての意義】
今回,軸性疼痛の程度と頸部伸筋群の器質的変化が関連している可能性を示唆したことから,筋機能回復に着目した軸性疼痛への理学療法を考える上で,CTを活用した評価法と器質的変化に対応するプログラムの必要性が認識できたと考える。