[P1-C-0283] 訪問リハビリテーション介入中の要介護度の変化に関する実態調査
キーワード:訪問リハビリテーション, 要介護度, 地域包括ケアシステム
【はじめに,目的】
今後10年において後期高齢者の人口割合が著しく増加することを踏まえ,地域包括ケアシステムの構築が進められている。要介護状態の高齢者が在宅で生活をしていくことを促進する動きの中で,リハビリテーション分野では自立を支援する効果的な訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)の介入が求められる。そこには,単なる身体機能練習にとどまらず,在宅生活における問題点に目を向け,生活機能を改善させる取組みが必要とされる。その中で,生活機能を反映する要介護度を維持・軽減していくことは,介護給付費の増加に歯止めをかけることにもつながる。本研究の目的は,訪問リハビリの利用者の要介護度の変化とその要因について実態調査を行うことで,訪問リハビリが生活機能の維持や改善に関わっていけるか検討することである。
【方法】
2011年10月から2014年9月までの3年間の間に,当事業所において訪問リハビリの利用があった225名のうち要介護度の更新があった151名(男性66名,女性85名)を対象とした。訪問リハビリ開始1ヶ月後(以下,開始時)から最終時(まだ終了していない利用者は2014年9月時点)の期間における要介護度の変化を後方視的に調査した。要介護度が重度化,軽度化した利用者については,担当者およびカルテからその要因について情報を得た。
【結果】
開始時の要介護度は,要支援1が6名,要支援2が13名,要介護1が21名,要介護2が39名,要介護3が24名,要介護4が27名,要介護5が21名だった。要介護度の変化様式は,軽度化,維持,重度化の他に,軽くなったり重くなったりが定まらない様式(以下,変動)が認められた。開始時の要介護度別に,各々の要介護度内での変化様式の割合(軽度化/維持/重度化/変動の順で%表示)は,要支援1が0.0/17.0/50.0/33.0,要支援2が0.0/7.7/61.5/30.8,要介護1が14.0/34.0/33.0/19.0,要介護2は10.3/33.3/33.3/23.1,要介護3は16.7/37.5/25.0/20.8,要介護4は29.6/25.9/33.3/11.1だった。要介護5は5よりも大きな要介護度がないこともあり47.6/47.6/0. 0/4.8だった。なお,要支援から自立となった利用者はおらず,要支援1および2において改善したものは0名だった。要介護度4および5では軽度化する割合が多い傾向が認められた。重度化した利用者46名(全体の30.5%)で担当者およびカルテからその要因の情報を調べたところ,転倒があったこと(8名),精神面や認知機能の低下(9名),病状の悪化や新たな疾病の発症(23名)が多く認められた(重複あり)。軽度化した利用者29名(全体の19.2%)については,担当者も生活機能の向上を実感しており,生活範囲の拡大,転倒回数の軽減,退院後すぐに介入し次第に機能が向上した,数年かけて少しずつ改善した,といった事が聞かれた。
【考察】
全体の約19%の利用者に要介護度の軽度化が認められた。このことは,訪問リハビリによって生活機能が改善する可能性を示唆する。ただし,訪問リハビリのみの利用者もいれば他サービスとの併用もあるため,今後さらに分析が必要である。また,要介護度の重度化に,転倒や認知・精神面の機能低下といった要因が挙がっており,これらはリハビリによって予防できる可能性も考えられる。今後は,要介護度の変化に影響を及ぼす因子について客観的評価をすすめ,それらのデータを分析することで,要介護度の軽減や維持を図るためにはどのような訪問リハビリ介入が効果的か検討を深める必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究結果で,訪問リハビリテーション介入中の要介護度の軽減が確認された。また重度化した要因の中に,理学療法として予防していける要因も見出された。これらは地域包括ケアシステムの動向の中で在宅でのリハビリテーションの質を高める一助となるため,理学療法研究として意義があるといえる。
今後10年において後期高齢者の人口割合が著しく増加することを踏まえ,地域包括ケアシステムの構築が進められている。要介護状態の高齢者が在宅で生活をしていくことを促進する動きの中で,リハビリテーション分野では自立を支援する効果的な訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)の介入が求められる。そこには,単なる身体機能練習にとどまらず,在宅生活における問題点に目を向け,生活機能を改善させる取組みが必要とされる。その中で,生活機能を反映する要介護度を維持・軽減していくことは,介護給付費の増加に歯止めをかけることにもつながる。本研究の目的は,訪問リハビリの利用者の要介護度の変化とその要因について実態調査を行うことで,訪問リハビリが生活機能の維持や改善に関わっていけるか検討することである。
【方法】
2011年10月から2014年9月までの3年間の間に,当事業所において訪問リハビリの利用があった225名のうち要介護度の更新があった151名(男性66名,女性85名)を対象とした。訪問リハビリ開始1ヶ月後(以下,開始時)から最終時(まだ終了していない利用者は2014年9月時点)の期間における要介護度の変化を後方視的に調査した。要介護度が重度化,軽度化した利用者については,担当者およびカルテからその要因について情報を得た。
【結果】
開始時の要介護度は,要支援1が6名,要支援2が13名,要介護1が21名,要介護2が39名,要介護3が24名,要介護4が27名,要介護5が21名だった。要介護度の変化様式は,軽度化,維持,重度化の他に,軽くなったり重くなったりが定まらない様式(以下,変動)が認められた。開始時の要介護度別に,各々の要介護度内での変化様式の割合(軽度化/維持/重度化/変動の順で%表示)は,要支援1が0.0/17.0/50.0/33.0,要支援2が0.0/7.7/61.5/30.8,要介護1が14.0/34.0/33.0/19.0,要介護2は10.3/33.3/33.3/23.1,要介護3は16.7/37.5/25.0/20.8,要介護4は29.6/25.9/33.3/11.1だった。要介護5は5よりも大きな要介護度がないこともあり47.6/47.6/0. 0/4.8だった。なお,要支援から自立となった利用者はおらず,要支援1および2において改善したものは0名だった。要介護度4および5では軽度化する割合が多い傾向が認められた。重度化した利用者46名(全体の30.5%)で担当者およびカルテからその要因の情報を調べたところ,転倒があったこと(8名),精神面や認知機能の低下(9名),病状の悪化や新たな疾病の発症(23名)が多く認められた(重複あり)。軽度化した利用者29名(全体の19.2%)については,担当者も生活機能の向上を実感しており,生活範囲の拡大,転倒回数の軽減,退院後すぐに介入し次第に機能が向上した,数年かけて少しずつ改善した,といった事が聞かれた。
【考察】
全体の約19%の利用者に要介護度の軽度化が認められた。このことは,訪問リハビリによって生活機能が改善する可能性を示唆する。ただし,訪問リハビリのみの利用者もいれば他サービスとの併用もあるため,今後さらに分析が必要である。また,要介護度の重度化に,転倒や認知・精神面の機能低下といった要因が挙がっており,これらはリハビリによって予防できる可能性も考えられる。今後は,要介護度の変化に影響を及ぼす因子について客観的評価をすすめ,それらのデータを分析することで,要介護度の軽減や維持を図るためにはどのような訪問リハビリ介入が効果的か検討を深める必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究結果で,訪問リハビリテーション介入中の要介護度の軽減が確認された。また重度化した要因の中に,理学療法として予防していける要因も見出された。これらは地域包括ケアシステムの動向の中で在宅でのリハビリテーションの質を高める一助となるため,理学療法研究として意義があるといえる。