[P1-C-0286] 訪問リハビリテーションの長期効果および実施内容に関する予備的研究
Keywords:訪問リハビリテーション, 高齢者, 生活空間
【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,関節可動域運動,筋力増強運動,歩行練習といった身体機能への介入が多く,福祉用具の選定や住環境調整といった環境因子への介入は少ないとの報告がある。しかし,訪問リハの長期的な介入効果と実施内容の関連については,未だ十分には検証されていない。そこで本研究は,訪問リハの長期効果および実施内容を横断的に調査し,縦断研究に向けた予備的検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は,訪問看護ステーションの介護保険でのリハビリテーションを利用する65歳以上の高齢者とした。平成26年4月から7月に新規で利用を開始した「新規群」9名と,性別と年齢をマッチングさせた1年以上利用を継続している「1年以上群」9名,計18名を分析対象とした。性別は男性1名,女性8名で,年齢の平均値は新規群が84.4±5.4歳,1年以上群が84.9±4.8歳であった。調査項目は,基本属性として主疾患名,住居形態,同居家族の有無,訪問回数,心身機能として要介護度,障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,立ち座り動作能力,生活機能として機能的自立度評価法(FIM),生活空間(Life Space Assessment:LSA)を,新規群は利用開始時点,1年以上群は平成26年9月時点で調査した。訪問リハの実施内容は,関節可動域運動,筋力増強運動・自動運動,日常生活動作練習,日常生活動作指導,生活環境の確認,生活環境調整の提案,生活環境の調整,福祉用具の導入,住宅改修の依頼,装具の依頼,その他の11項目に分類し,訪問時に使用する記録用紙に選択式で記入できるようにした。担当者は実施した全ての項目に○,最も優先的に行った項目1つに◎を記入することとした。新規群は開始時から1ヶ月間,1年以上群は平成26年9月から1ヶ月間で,各項目が選択された総数を総訪問回数で除し,実施率および優先実施率を算出した。統計解析は,基本属性,心身機能の比較にはχ2検定またはFisherの正確確率検定,その他はMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
基本属性および心身機能は,新規群と1年以上群で有意差を認めた項目はなかった。生活機能は,FIMの平均値は新規群が101.8±12.8点,1年以上群が98.7±21.2点で,有意差は認められなかった。LSAの平均値は新規群が13.6±11.4点,1年以上群が22.8±9.4点で,1年以上群が有意に高かった。訪問リハの実施率の平均値は,関節可動域運動が新規群93.3±20.0%,1年以上群が100%,筋力増強運動・自動運動は新規群が100%,1年以上群が98.6±4.2%,日常生活動作練習は新規群が100%,1年以上群が97.2±8.3%で,いずれも両群間に有意差は認められなかった。優先実施率の平均値は,関節可動域運動は新規群が4.4±8.8%,1年以上群が1.4±4.2%,筋力増強運動・自動運動は新規群が10.1±17.3%,1年以上群が2.8±8.3%で,いずれも両群間に有意差は認められなかった。日常生活動作練習は新規群で30.2±21.4%,1年以上群で68.1±35.2%で,1年以上群が有意に高い割合を示した。環境に関する項目では,生活環境調整の提案の実施率が新規群で30.0±36.2%,1年以上群で1.2±3.7%と有意傾向を示した。その他の項目には有意差は認められなかった。
【考察】
年齢,性別,疾患名,訪問回数,住居形態,家族構成,身体機能,日常生活動作能力に関わらず,訪問リハを1年以上利用している者は生活空間が拡大していることが示唆された。また,訪問リハの実施内容は,1年以上利用している者に対しては日常生活動作練習が重視されていることが示唆された。訪問リハの開始初期は,生活空間拡大に向けて生活環境調整の提案が多く実施されており,1年以上経つと環境は安定し,日常生活動作練習が重視される可能性が考えられた。今後は新規群を追跡して縦断研究を行い,生活機能の変化と訪問リハの実施内容の関連を検証していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
高齢化の進行に伴い,生活期リハビリテーションへの期待が高まっている。訪問リハの長期効果および実施内容を明らかにすることは,地域在住高齢者の生活機能維持・向上に寄与する有益な知見となる。
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,関節可動域運動,筋力増強運動,歩行練習といった身体機能への介入が多く,福祉用具の選定や住環境調整といった環境因子への介入は少ないとの報告がある。しかし,訪問リハの長期的な介入効果と実施内容の関連については,未だ十分には検証されていない。そこで本研究は,訪問リハの長期効果および実施内容を横断的に調査し,縦断研究に向けた予備的検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は,訪問看護ステーションの介護保険でのリハビリテーションを利用する65歳以上の高齢者とした。平成26年4月から7月に新規で利用を開始した「新規群」9名と,性別と年齢をマッチングさせた1年以上利用を継続している「1年以上群」9名,計18名を分析対象とした。性別は男性1名,女性8名で,年齢の平均値は新規群が84.4±5.4歳,1年以上群が84.9±4.8歳であった。調査項目は,基本属性として主疾患名,住居形態,同居家族の有無,訪問回数,心身機能として要介護度,障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,立ち座り動作能力,生活機能として機能的自立度評価法(FIM),生活空間(Life Space Assessment:LSA)を,新規群は利用開始時点,1年以上群は平成26年9月時点で調査した。訪問リハの実施内容は,関節可動域運動,筋力増強運動・自動運動,日常生活動作練習,日常生活動作指導,生活環境の確認,生活環境調整の提案,生活環境の調整,福祉用具の導入,住宅改修の依頼,装具の依頼,その他の11項目に分類し,訪問時に使用する記録用紙に選択式で記入できるようにした。担当者は実施した全ての項目に○,最も優先的に行った項目1つに◎を記入することとした。新規群は開始時から1ヶ月間,1年以上群は平成26年9月から1ヶ月間で,各項目が選択された総数を総訪問回数で除し,実施率および優先実施率を算出した。統計解析は,基本属性,心身機能の比較にはχ2検定またはFisherの正確確率検定,その他はMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
基本属性および心身機能は,新規群と1年以上群で有意差を認めた項目はなかった。生活機能は,FIMの平均値は新規群が101.8±12.8点,1年以上群が98.7±21.2点で,有意差は認められなかった。LSAの平均値は新規群が13.6±11.4点,1年以上群が22.8±9.4点で,1年以上群が有意に高かった。訪問リハの実施率の平均値は,関節可動域運動が新規群93.3±20.0%,1年以上群が100%,筋力増強運動・自動運動は新規群が100%,1年以上群が98.6±4.2%,日常生活動作練習は新規群が100%,1年以上群が97.2±8.3%で,いずれも両群間に有意差は認められなかった。優先実施率の平均値は,関節可動域運動は新規群が4.4±8.8%,1年以上群が1.4±4.2%,筋力増強運動・自動運動は新規群が10.1±17.3%,1年以上群が2.8±8.3%で,いずれも両群間に有意差は認められなかった。日常生活動作練習は新規群で30.2±21.4%,1年以上群で68.1±35.2%で,1年以上群が有意に高い割合を示した。環境に関する項目では,生活環境調整の提案の実施率が新規群で30.0±36.2%,1年以上群で1.2±3.7%と有意傾向を示した。その他の項目には有意差は認められなかった。
【考察】
年齢,性別,疾患名,訪問回数,住居形態,家族構成,身体機能,日常生活動作能力に関わらず,訪問リハを1年以上利用している者は生活空間が拡大していることが示唆された。また,訪問リハの実施内容は,1年以上利用している者に対しては日常生活動作練習が重視されていることが示唆された。訪問リハの開始初期は,生活空間拡大に向けて生活環境調整の提案が多く実施されており,1年以上経つと環境は安定し,日常生活動作練習が重視される可能性が考えられた。今後は新規群を追跡して縦断研究を行い,生活機能の変化と訪問リハの実施内容の関連を検証していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
高齢化の進行に伴い,生活期リハビリテーションへの期待が高まっている。訪問リハの長期効果および実施内容を明らかにすることは,地域在住高齢者の生活機能維持・向上に寄与する有益な知見となる。