[P1-C-0289] 早期訪問リハビリテーションの開始が要介護度変化に与える影響
キーワード:訪問リハビリテーション, 要介護度, 多施設間調査
【はじめに,目的】
これまで訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の効果に関する報告は,身体機能面や動作能力面の変化についての報告や一症例を対象とした症例報告などが多くみられる。訪問リハは介護保険サービスの一つであるが,利用者を総合的に評価する要介護度の変化を追跡した報告は少ない。また,何らかの理由で介護が必要となった際,早期に訪問リハを実施することが有効であるとされているが,その検証は不十分である。そこで本研究は,多施設間で大規模な調査を実施し,早期訪問リハ開始が要介護度変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成26年2月,全国19法人29事業所における訪問看護ステーションからの訪問リハ利用者に対し,要介護度(利用開始時,調査実施時)を調査した。対象は,調査票を回収できた1,856名のうち,利用開始から1年間以上訪問リハを継続している1,239名(77.5±11.0歳)とした。なお,訪問リハ開始から一度も要介護認定の更新を経ていないものは除外した。対象者の介護サービス利用を開始した時期を調査し,訪問リハ利用開始までの期間が介護サービス利用を開始してから0~6ヶ月以内の対象者を早期リハ群(n=859),7ヶ月以上経過してから訪問リハを開始した対象者を非早期リハ群(n=380)の2群に分類し,それぞれの訪問リハ利用開始時と調査実施時の要介護度変化についてWilcoxon符号付順位検定を用いて比較検討した。また,早期リハ開始が要介護度に与える影響を探るため,反復測定分散分析を行った。有意確率は5%未満とした。
【結果】
利用開始時と調査実施時の要介護度を調査した結果,全対象者1,239名のうち,要介護度が軽度化していた者は331名(26.7%),維持していた者は520名(42.0%),重度化していた者は388名(31.3名),利用開始から調査実施までの平均期間は32.2±27.4ヶ月であった。早期リハ群では,軽度化262名(30.5%),維持340名(39.6%),重度化257名(29.9%)であった。非早期リハ群では,軽度化69名(18.2%),維持180名(47.4%),重度化131名(34.5%)であった。要介護度変化を比較した結果,早期リハ群では,利用開始時の要介護度が中央値要介護2から調査実施時は要介護2と有意な変化は認められなかった(p=0.429)。一方,非早期リハ群では,利用開始時の要介護度が中央値要介護2から調査実施時は要介護3へと有意な重度化が認められた(p<0.001)。また,利用開始時と調査実施時の要介護度を被験者内要因,早期リハの有無を被験者間要因とした反復測定分散分析を行った結果,主効果および交互作用が認められた(p<0.001)。
【考察】
厚生労働省発表の介護給付費実態調査の報告によると,平成25年度年間継続受給者の要介護状態区分変化割合は,10%程度が軽度化,70%程度が維持,20%程度は重度化したと報告している。また先行研究において,訪問リハを利用していない要介護高齢者の要介護度経年変化を2年間から3年間追跡調査した研究によると,軽度化は約10%,維持は約50%,重度化は約40%であったと報告している。本研究における全対象者の軽度化率は26.7%で,それらの報告よりも軽度化率が高いことが確認された。
早期リハ群では利用開始時と調査実施時の要介護度変化に有意差が無く,非早期リハ群では要介護度が有意に重度化していた。また,分散分析で主効果および交互作用が認められた。このことは,退院直後や在宅において徐々に生活機能が低下し,何らかの介護サービスを利用開始した場合,いわゆる在宅混乱期に併せて訪問リハを導入することで要介護度重度化を予防できる可能性があることが示唆している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,要介護度に着目して,多施設間に渡り大規模な調査を行った。その結果,早期訪問リハの導入が要介護度重度化を予防できる可能性が示されたことから,早期に訪問リハを導入することで在宅要介護者が安定した在宅生活を継続するための一助となる可能性が示された。
これまで訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の効果に関する報告は,身体機能面や動作能力面の変化についての報告や一症例を対象とした症例報告などが多くみられる。訪問リハは介護保険サービスの一つであるが,利用者を総合的に評価する要介護度の変化を追跡した報告は少ない。また,何らかの理由で介護が必要となった際,早期に訪問リハを実施することが有効であるとされているが,その検証は不十分である。そこで本研究は,多施設間で大規模な調査を実施し,早期訪問リハ開始が要介護度変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成26年2月,全国19法人29事業所における訪問看護ステーションからの訪問リハ利用者に対し,要介護度(利用開始時,調査実施時)を調査した。対象は,調査票を回収できた1,856名のうち,利用開始から1年間以上訪問リハを継続している1,239名(77.5±11.0歳)とした。なお,訪問リハ開始から一度も要介護認定の更新を経ていないものは除外した。対象者の介護サービス利用を開始した時期を調査し,訪問リハ利用開始までの期間が介護サービス利用を開始してから0~6ヶ月以内の対象者を早期リハ群(n=859),7ヶ月以上経過してから訪問リハを開始した対象者を非早期リハ群(n=380)の2群に分類し,それぞれの訪問リハ利用開始時と調査実施時の要介護度変化についてWilcoxon符号付順位検定を用いて比較検討した。また,早期リハ開始が要介護度に与える影響を探るため,反復測定分散分析を行った。有意確率は5%未満とした。
【結果】
利用開始時と調査実施時の要介護度を調査した結果,全対象者1,239名のうち,要介護度が軽度化していた者は331名(26.7%),維持していた者は520名(42.0%),重度化していた者は388名(31.3名),利用開始から調査実施までの平均期間は32.2±27.4ヶ月であった。早期リハ群では,軽度化262名(30.5%),維持340名(39.6%),重度化257名(29.9%)であった。非早期リハ群では,軽度化69名(18.2%),維持180名(47.4%),重度化131名(34.5%)であった。要介護度変化を比較した結果,早期リハ群では,利用開始時の要介護度が中央値要介護2から調査実施時は要介護2と有意な変化は認められなかった(p=0.429)。一方,非早期リハ群では,利用開始時の要介護度が中央値要介護2から調査実施時は要介護3へと有意な重度化が認められた(p<0.001)。また,利用開始時と調査実施時の要介護度を被験者内要因,早期リハの有無を被験者間要因とした反復測定分散分析を行った結果,主効果および交互作用が認められた(p<0.001)。
【考察】
厚生労働省発表の介護給付費実態調査の報告によると,平成25年度年間継続受給者の要介護状態区分変化割合は,10%程度が軽度化,70%程度が維持,20%程度は重度化したと報告している。また先行研究において,訪問リハを利用していない要介護高齢者の要介護度経年変化を2年間から3年間追跡調査した研究によると,軽度化は約10%,維持は約50%,重度化は約40%であったと報告している。本研究における全対象者の軽度化率は26.7%で,それらの報告よりも軽度化率が高いことが確認された。
早期リハ群では利用開始時と調査実施時の要介護度変化に有意差が無く,非早期リハ群では要介護度が有意に重度化していた。また,分散分析で主効果および交互作用が認められた。このことは,退院直後や在宅において徐々に生活機能が低下し,何らかの介護サービスを利用開始した場合,いわゆる在宅混乱期に併せて訪問リハを導入することで要介護度重度化を予防できる可能性があることが示唆している。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,要介護度に着目して,多施設間に渡り大規模な調査を行った。その結果,早期訪問リハの導入が要介護度重度化を予防できる可能性が示されたことから,早期に訪問リハを導入することで在宅要介護者が安定した在宅生活を継続するための一助となる可能性が示された。