[P1-C-0295] リハビリテーション専門職を機能訓練指導員とした通所介護事業における3ヶ月間のサービス利用による身体機能変化
Keywords:通所介護, 地域リハビリテーション, 理学療法士
【はじめに,目的】
地域リハビリテーション(以下リハ)を担う介護保険領域の在宅サービスのなかで,通所系サービスは利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることができるよう,孤立感の解消や心身機能の維持回復,家族の介護負担の軽減等の役割を担っている。通所系サービスは,通所介護,通所リハに大別される。その中で,通所介護事業所は急速に増加し,平成25年度時点で利用者全体の概ね3人に1人が利用しているとされている。在宅生活を継続するための基幹的なサービスとして,通所介護事業には心身機能,生活行為力の向上に対し総合的に取り組む機能が求められている。通所介護事業所におけるリハの担い手である機能訓練指導員は,7割が看護師であるとされている。リハ専門職である理学療法士は通所介護事業においてその役割を確立できていないのが現状といえよう。そこで本研究では,3ヶ月間のサービス利用における身体機能変化に着目し,通所介護事業所において機能訓練指導員として理学療法士が従事することによる効果を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,当事業所に通所し,サービス開始から3ヶ月が経過した利用者18名(男性11名,女性7名,平均年齢73.2±10.9歳)とした。対象の特性として,要介護度,基礎疾患,通所頻度(1週間あたりの利用日数)を調査した。当事業所は,7時間以上9時間未満のサービス提供時間を有する通常規模の通所介護事業所である。理学療法士が提供したサービスは身体機能評価の実施と個別のリハビリメニューの処方,生活場面でのできるADLの提供,集団体操,自宅での運動及び生活指導等であった。対象に対し,サービス開始前及び開始3ヶ月後に身体機能評価を行った。身体機能評価項目は,筋力評価(徒手筋力計を用いた等尺性膝伸展筋力評価),バランス能力評価(Functional Reach Test;FRT,Timed Up & Go Test;TUG),パフォーマンス評価(5回起立検査,5m歩行速度・歩数)とした。等尺性膝伸展筋力評価では,徒手筋力計モービィ(酒井医療社製)を用い,両肢にて3施行ずつ評価し,計6施行のうち最大値を採用した。パフォーマンス評価では,サービス開始前と同設定で開始3ヵ月後の評価を実施した。得られたそれぞれの評価結果について,サービス開始前と開始3ヵ月後の数値をWilcoxonの符号付順位和検定を用い比較検討した。統計的検討にはSPSS for windows10を用い,有意水準5%とした。
【結果】
対象の要介護度は,要支援1:1例,要支援2:3例,要介護1:4例,要介護2:4例,要介護3:3例,要介護4:1例,要介護5:0例であった。対象の基礎疾患は整形外科疾患6例,脳血管疾患12例であり,通所頻度は1週間あたり平均1.9±0.7日であった。身体機能評価結果について,中央値(第1四分位,第3四分位)を用いサービス開始前,開始後3ヶ月の順に以下に示す。等尺性膝伸展筋力は,17.8(14.4,21.6)N,21.6(15.3,24.8)Nであった。FRTは,17.0(13.5,18.4)cm,19.0(17.3,24.9)cmであった。TUGは,23.2(15.4,31.2)秒,19.3(14.9,27.8)秒であった。5回起立検査は,18.5(14.8,25.3)秒,15.0(13.3,20.6)秒であった。5m歩行速度は,10.1(6.7,14.6)秒,7.9(6.8,12.7)秒であった。5m歩行歩数は,15.0(12.0,19.8)歩,13.0(11.3,19.0)歩であった。全ての身体機能評価結果の比較検討において有意な改善を認めた。
【考察】
全ての身体機能評価結果の比較検討において有意な改善を認め,3ヶ月間の取り組みによる一定の効果が確認された。本研究では,他の事業所との比較を実施したわけではなく,直接的に機能訓練指導員として理学療法士が従事することによる効果について言及することはできないが,3ヶ月間のサービス提供で一定の効果を確認できた点は有意義な結果と考える。特に,一般的に身体機能改善が難しいとされる要介護3以上の重症例においても身体機能の向上が認められた点は,重症例に対しても歩行主体の生活を提供できるリハ専門職である理学療法士が携わることにより得られた効果と考える。今後も,通所介護事業における理学療法士の役割や意義を明確にし,通所介護事業が在宅生活を継続するための基幹的なサービスとしての役割を全うできるものとしていくために検討を継続していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
在宅生活を継続するための基幹的なサービスとされる通所介護事業において,リハ専門職である理学療法士が携わることによる効果について示唆を得た点は意義のあるものと考える。
地域リハビリテーション(以下リハ)を担う介護保険領域の在宅サービスのなかで,通所系サービスは利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることができるよう,孤立感の解消や心身機能の維持回復,家族の介護負担の軽減等の役割を担っている。通所系サービスは,通所介護,通所リハに大別される。その中で,通所介護事業所は急速に増加し,平成25年度時点で利用者全体の概ね3人に1人が利用しているとされている。在宅生活を継続するための基幹的なサービスとして,通所介護事業には心身機能,生活行為力の向上に対し総合的に取り組む機能が求められている。通所介護事業所におけるリハの担い手である機能訓練指導員は,7割が看護師であるとされている。リハ専門職である理学療法士は通所介護事業においてその役割を確立できていないのが現状といえよう。そこで本研究では,3ヶ月間のサービス利用における身体機能変化に着目し,通所介護事業所において機能訓練指導員として理学療法士が従事することによる効果を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,当事業所に通所し,サービス開始から3ヶ月が経過した利用者18名(男性11名,女性7名,平均年齢73.2±10.9歳)とした。対象の特性として,要介護度,基礎疾患,通所頻度(1週間あたりの利用日数)を調査した。当事業所は,7時間以上9時間未満のサービス提供時間を有する通常規模の通所介護事業所である。理学療法士が提供したサービスは身体機能評価の実施と個別のリハビリメニューの処方,生活場面でのできるADLの提供,集団体操,自宅での運動及び生活指導等であった。対象に対し,サービス開始前及び開始3ヶ月後に身体機能評価を行った。身体機能評価項目は,筋力評価(徒手筋力計を用いた等尺性膝伸展筋力評価),バランス能力評価(Functional Reach Test;FRT,Timed Up & Go Test;TUG),パフォーマンス評価(5回起立検査,5m歩行速度・歩数)とした。等尺性膝伸展筋力評価では,徒手筋力計モービィ(酒井医療社製)を用い,両肢にて3施行ずつ評価し,計6施行のうち最大値を採用した。パフォーマンス評価では,サービス開始前と同設定で開始3ヵ月後の評価を実施した。得られたそれぞれの評価結果について,サービス開始前と開始3ヵ月後の数値をWilcoxonの符号付順位和検定を用い比較検討した。統計的検討にはSPSS for windows10を用い,有意水準5%とした。
【結果】
対象の要介護度は,要支援1:1例,要支援2:3例,要介護1:4例,要介護2:4例,要介護3:3例,要介護4:1例,要介護5:0例であった。対象の基礎疾患は整形外科疾患6例,脳血管疾患12例であり,通所頻度は1週間あたり平均1.9±0.7日であった。身体機能評価結果について,中央値(第1四分位,第3四分位)を用いサービス開始前,開始後3ヶ月の順に以下に示す。等尺性膝伸展筋力は,17.8(14.4,21.6)N,21.6(15.3,24.8)Nであった。FRTは,17.0(13.5,18.4)cm,19.0(17.3,24.9)cmであった。TUGは,23.2(15.4,31.2)秒,19.3(14.9,27.8)秒であった。5回起立検査は,18.5(14.8,25.3)秒,15.0(13.3,20.6)秒であった。5m歩行速度は,10.1(6.7,14.6)秒,7.9(6.8,12.7)秒であった。5m歩行歩数は,15.0(12.0,19.8)歩,13.0(11.3,19.0)歩であった。全ての身体機能評価結果の比較検討において有意な改善を認めた。
【考察】
全ての身体機能評価結果の比較検討において有意な改善を認め,3ヶ月間の取り組みによる一定の効果が確認された。本研究では,他の事業所との比較を実施したわけではなく,直接的に機能訓練指導員として理学療法士が従事することによる効果について言及することはできないが,3ヶ月間のサービス提供で一定の効果を確認できた点は有意義な結果と考える。特に,一般的に身体機能改善が難しいとされる要介護3以上の重症例においても身体機能の向上が認められた点は,重症例に対しても歩行主体の生活を提供できるリハ専門職である理学療法士が携わることにより得られた効果と考える。今後も,通所介護事業における理学療法士の役割や意義を明確にし,通所介護事業が在宅生活を継続するための基幹的なサービスとしての役割を全うできるものとしていくために検討を継続していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
在宅生活を継続するための基幹的なサービスとされる通所介護事業において,リハ専門職である理学療法士が携わることによる効果について示唆を得た点は意義のあるものと考える。