第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

地域理学療法2

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0298] デイケア・デイサービスにおけるリハビリテーションに関する実態調査

―プログラムとその決定要因および効果―

矢野秀典 (目白大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:個別リハビリテーション, デイケア, デイサービス

【はじめに,目的】介護保険における在宅サービスの中でも通所リハビリテーション(デイケア)および通所介護(デイサービス)は,最も利用者が多いサービスの一つであり,施設数は,介護予防サービス事業所,居宅サービス事業所を併せると実に全国で88,000箇所を超え,年間の延べ利用者数は,5,700万人以上に上る。これらの施設のほとんどにおいてリハビリテーションが実施されているはずである。ところが,そのリハビリテーションプログラムや目標がどのように設定されているのか,それらの効果はどうであるのか等は明らかにされていない。本研究の目的は,デイケア・デイサービス施設で実施されているリハビリテーションプログラムの決定因子,効果に関する実態を明らかにすることである。
【方法】厚生労働省ホームページ介護保険施設リストを使用し,無作為にデイケア・デイサービス事業所をそれぞれ150か所抽出して,郵送法による無記名質問紙調査を実施した。調査内容は,主に算定しているデイケア費・デイサービス費,個別リハビリテーション(個別リハ)内容,利用者把握のための評価内容とその頻度,個別リハプログラムの決定要因とその効果とした。
【結果】回収率は,デイケア施設が40%,デイサービスが35.3%であった。主に算定しているデイケア費は,6~8時間が83%と最も多かった。一方,デイサービス費に関しては,7~9時間が51%,5~7時間が43%であった。個別リハ内容は,デイケアでは,屋内歩行練習(100%),関節可動域練習(94.9%),筋力強化練習(94.9%)の順に多かった。デイサービスでは,個別リハ加算Iが,屋内歩行練習(100%),筋力強化練習(90.9%),姿勢バランス運動(72.7%),個別加算IIが,屋内歩行練習(88.9%),筋力強化練習(88.9%),階段昇降練習(77.8%)の順に多く大きな差異は認められなかった。評価に関しては,3カ月以内毎に運動機能評価をしている割合は,デイケアで72.4%,デイサービスでは80.0%,同様に精神機能評価は,デイケア14.0%,デイサービス19.0%,生活機能・QOL評価が,デイケア70.2%,デイサービスでは93.4%であった。個別リハプログラム決定の際に最も影響のある因子として回答のあったものは,デイケアでは,本人の要望(38.2%),運動機能(34.6%)であったのに対し,デイサービスでは,個別リハ加算Iが日常生活動作能力(27.3%),運動機能(22.2%),個別リハ加算IIは本人の要望(55.6%),家族の要望(22.2%)であった。対象者の7割以上に個別リハ効果ありと回答した割合は,デイケアの短期集中が37.8%,通常個別リハが34.0%,デイサービスでは,短期効果が22.2%,長期効果が27.8%であった。
【考察】リハビリテーションプログラムでは,デイケア・デイサービスともに歩行練習の実施頻度が高く,リハビリテーション担当者が虚弱高齢者の移動能力に対するアプローチの必要性を感じていることが窺われた。また,デイサービスの個別加算IIは生活機能向上を目的として策定されたものであり,この加算のプログラムに階段昇降が多かったことは,実際の臨床場面でも本来の策定目的どおりのリハビリテーションが実施されていることを示すものと考えられた。デイケア・デイサービスともに多くの施設において,定期的に運動機能や生活機能の評価がなされている一方で,精神機能の評価実施施設は少なく今後の普及の必要性が示唆された。個別リハプログラム決定要因としては,本人の要望が最も大きかった。デイサービスの個別加算IIでは,本人に次ぎ家族の要望も大きく,家庭内生活への要求が反映されたものと考えられた。リハビリテーション効果では,7割以上のものに効果ありと回答したものは,デイケアで3分の1程度,デイサービスでは4分の1程度であるが,これらは,あくまでも回答であり,実際の効果とは乖離している可能性も考えられ,さらなる精査の必要性が感じられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,デイケア・デイサービスのリハビリテーションプログラムの決定因子,効果に関する実態が明らかになった。この結果をリハビリテーション・サービスへ反映させることにより,より対象者主体の個別リハプログラム作成への示唆が得られると考えられる。